そこに線路があるかぎり

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【長野県】おさるの湯浴みが大人気 かつての花形特急車両に乗って雪景色の温泉へ(2018年)

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誰もが一度は見たことがあるであろう、雪の中で露天風呂に浸かるサルの写真や映像は、気持ちよさそうに入浴するサルの姿に見ているこちらもほっこりするものがあります。寒い季節、温泉で温まりたいと思うのはサルも人間も同じこと、どこの温泉に行こうかと考えていたとき、ふとこの温泉に入るサルたちのことを思い出し、いままで実物を見たことのないこの温泉ザルたちの入浴姿を見つつ人間もゆっくり温泉を楽しもうと、長野県に行くことにしました。

このサルたちを見ることができるのは地獄谷温泉の野猿公苑というところ。長野駅から長野電鉄に乗って終点の湯田中へ、そこからバスに乗り継ぎ、最後は徒歩という、なかなか山深い立地です。

 8時ちょうどのスーパーあずさ5号で旅立ち

東京から長野へ行くには北陸新幹線を利用するのが便利ですが、今回は在来線特急で向かうことにしました。乗車するのは新宿を8時ちょうどに出発するスーパーあずさ5号松本行。

8時ちょうどのあずさ号と言えば歌で有名なあずさ2号が思い浮かびますが、歌が作られた頃の国鉄の特急列車は下り1号、2号…、上り1号、2号…と、上りも下りもそれぞれ1号から順に番号が振られており、「下りの」あずさ2号新宿駅を8時ちょうどに出発していました。ところが、1978年(昭和53年)10月から列車の号数の数字は下りが奇数、上りが偶数を振ることになったため、この時からあずさ2号は上り列車になり、かつての下り2便目だったあずさ2号はあずさ3号に変わったのでした。月日が経ち、7時30分発のあずさ号が増発され8時発はあずさ5号に、そしてスーパーあずさの登場でスーパーあずさが1号から、通常のあずさは51号からの番号振り分けとなったのち、スーパーも通常も関係なく1号から順番に通しで番号を振ることに変更された結果、2018年現在の定期列車のあずさ号は新宿発7時発スーパーあずさ1号、7時30分発あずさ3号、8時発スーパーあずさ5号…という順番になっています。なお、このときの上りのあずさ2号は、途中駅の大月を出るのがたまたま8時ちょうどだったため、大月駅に行けば今でも「8時ちょうどのあずさ2号」が見られる、として珍重されていました。(2019年よりあずさ2号は大月を通過することになり、8時ちょうどのあずさ2号は消滅、2020年には、あずさより短い区間を走るかいじ号とあずさ号の号数について、それまではそれぞれ単独に番号が振られていたものを、あずさ号、かいじ号の区別なく出発順に通番で振ることに改められた結果、2号はかいじ号の番号となり、現在ではあずさ2号という列車は存在していません)

スーパーあずさ号には、車体を傾け遠心力を相殺することで、カーブでもスピードを落とさずに走れる振り子機能がついたE351系車両が使われていましたが、E351系はこの旅行の2か月後、2018年3月に引退することが決まっていました。今回はスーパーあずさを利用して、最後のE351系の旅を楽しもうというわけです。

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新宿を出て立川、八王子と停車していくうちに車内は満席になり、高尾を通過すると景色は一気に山の中となってカーブも増えますが、E351系は振り子車両の本領発揮し、体を右に左に揺らしながら山の中を高速で駆け抜けていきます。
中央本線の車窓といえば美しい山の眺め。この日はよく晴れていて、富士山や南アルプス八ヶ岳などの山々がよく見えました。写真は甲府盆地の向こうにそびえる南アルプスと、小淵沢付近の高原から眺めた八ヶ岳です。

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新宿から2時間38分、10時38分にスーパーあずさ5号は終点の松本駅に到着しました。この車両は30分ほどの休息ののち、折り返しスーパーあずさ14号として新宿に戻るようです。

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 松本からは名古屋発の特急ワイドビューしなの5号長野行きに乗り換え、長野駅には11時59分に到着しました。

特急スノーモンキーは空港アクセスで活躍したあの車両

長野からは長野電鉄に乗り換えます。長野電鉄長野駅はJR長野駅前の地下にありますが乗り継ぎ時間はおよそ10分と短いので、大急ぎで長野電鉄のりばに向かいました。ここから乗車するのは12:10発の特急スノーモンキー。乗車券のほかに特急券が必要ですが、特急券は100円という安さです。このスノーモンキーの座席は基本的に自由席ですが、1室だけ個室があり、1000円の個室券を買えばここを利用することができます。個室は予約はできず、駅の窓口で早いもの勝ちで買うことができるので、まだ空いているとの案内を見て駅の窓口の列に並んでみましたが、あいにく順番が回ってきたときにはすでに売り切れになっており、買うことはできませんでした。残念。

改札口を入って階段を降りると、ホームには見覚えのある顔の電車たちが並んでいました。右側の信州中野行き普通列車は元東急田園都市線で活躍していた車両、左側が特急スノーモンキーでJRの成田エクスプレスとして活躍していた車両です。

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特急スノーモンキーは3両編成ですが、車内に入ってみるとほぼ満席という盛況。駅の階段に近い最後尾から乗って車内を進み、先頭車にようやく空席を見つけて座ることができました。ただ、他の2両が固定式の座席であるのに対し、この先頭車両だけはリクライニング機能がある座席なので、快適な座席の車両に座れたのはラッキーでした。
客層は外国の方が非常に多く、外国人に人気の観光地であることを感じます。
長野からおよそ45分で終点の湯田中に到着。車両にはスノーモンキーのイラストとロゴ、そして特大のサルの写真があしらわれていて、これからこれを見に行くという気分が高まります。

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雪の山道をたどり地獄谷を目指す

湯田中駅からは予約制のミニバスに乗ります。地獄谷へのアクセスは上林温泉から35分歩くルートと、地獄谷駐車場から15分歩くルートの2つがあります。歩く時間が少なくて済む地獄谷駐車場への道は細い山道で公共交通機関もないうえ冬季は道が閉鎖されてしまうので上林温泉から歩くルートしか使えなくなってしまうのですが、冬季の週末を中心に運転されている「スノーモンキーホリデー観にバス」を利用した場合に限り冬でも地獄谷駐車場に行くことができるのでした。ミニバスは予約制で前日から渋温泉にある窓口でチケット販売を開始しますが、電話での予約は利用当日のみの受付とのことだったので、スーパーあずさに乗車中に電話して予約することができました。小さい子供連れなので歩く時間を半分以下にできるのは大変ありがたいことですが、残念ながら2020年以降はこのミニバスは運行されていないようです。

スノーモンキー観にバスはミニバスと言ってもただの9人乗りのバンでした。往復運賃と野猿公苑の入園料が入って2000円ほどの料金だったかと思います。基本的に往路と復路の行程がセットになった往復利用のコースが1日に5往復半が設定されており、最後の便だけ復路の設定がないので、地獄谷の一軒宿である後楽館に宿泊するか、上林温泉まで歩いて降りるかするほかありません。
乗車したバンは湯田中駅を出て渋温泉駐車場を経由し、温泉街のはずれから通行止めチェーンを外して細い山道を進んで行きます。行き違いも難しそうな非常に狭い道なので、確かに雪のある冬季ではすれ違いも困難で危険も多いであろうことが容易に想像でき、通行止めになるのも納得です。いまはこの道はこのミニバスしか走らないので対向車の心配をする必要もなく快調に走り、湯田中から25分ほどで雪に覆われた地獄谷駐車場に到着しました。帰りの便の出発は1時間25分後、それまでに野猿公苑を往復してここに戻ってこなければなりません。

地獄谷駐車場から野猿公苑を目指し、横湯川に沿った登山道のような山道を歩き始めました。細く急だったり、ぬかるんだりしている部分もあり、子供を抱っこして足元に気をつけながら注意深くゆっくりと歩きます。
やがて地獄谷温泉にある一軒宿、後楽館が見えてきましたが、この旅館こそがサルが温泉に入るきっかけとなったところだそうで、ここで餌付けしていた餌のリンゴが露天風呂に落ちたのを追って子ザルが露天風呂に入ったことが始まりとなり、やがて多くのサルが露天風呂に入りに来るようになったとのこと。その後近くに野猿公苑が開設されサル用の露天風呂もつくられ、ここに多くのサルが入浴しに来ているわけですが、後楽館の露天風呂にやってくるサルも時々いるようで、そのときは人間がサルと一緒に入浴することができるようです。
後楽館の前の橋で対岸に渡ると上林温泉からの徒歩ルートと合流したようで、通行人の数が多くなりました。川を見下ろす緩やかな登り坂を進んで行くと山肌を登る急な坂が現れ、それを登ったところが野猿公苑の入口でした。

たくさんのギャラリーの視線を浴びて入浴するサルたち

野猿公苑に入ると、道の先の渓流沿いの一段高くなったところにたくさんの人が集まっているのが見えます。ここがサルの露天風呂に違いありません。

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湯舟のまわりを取り囲む観光客はやはり外国の方が多いです。決してアクセスが良いとは言えないここまでサルを見るためだけに訪れてくれるとは、スノーモンキーの世界規模の人気に驚きます。
ギャラリーに囲まれ、多くの視線を浴びながらも、サルたちは我関せずと風呂に入っています。この状況でも平常心で風呂に入れるとは、なかなか肝の据わったサルたちです。 飲泉の効能を知ってか知らずか、温泉を飲むサルもいました。

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一点を見つめ無心に風呂に浸かるサルは、いったい何を思っているのでしょうか。

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風呂に浸かるサルは群れのおよそ3割ほど、子供とメスのサルばかりだそうです。我が家では温泉に行くと大人のオスがいちばん長風呂ですが。

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いつまでも見ていても飽きないサルたちですが、帰りのミニバスの時間もあるのでほどほどで切り上げ、来た道を地獄谷駐車場まで戻ります。 サルの入浴を見て、こちらもはやく温泉に入りたくなってきました。

地獄谷野猿公苑|ようこそ、ニホンザルの世界へ (jigokudani-yaenkoen.co.jp)

湯田中温泉で素敵な温泉を堪能する一夜 

この日の宿は湯田中温泉よろづやさんを予約しました。湯田中温泉は1350年前の開湯と言われ大変歴史のある温泉場で多くのホテルや旅館がありますが、よろづやは重厚な湯屋の桃山風呂が魅力のお宿です。

湯田中温泉 よろづや【公式】 (yudanaka-yoroduya.com)

貸切風呂もあったので家族で利用させて頂きましたが、広い湯舟に浮き輪も備えられており、子供も大はしゃぎで楽しく入浴できました。
また、よろづやの隣には共同浴場の大湯があり、宿のフロントにお願いすると鍵を貸していただけるので、こちらも入りに行ってみました。小さいながらも歴史を感じる湯屋で、誰もいない湯舟の熱いお湯に浸かるのは幸せなひとときです。

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夜も更けてきたころ、待望の桃山風呂に入りに行きました。登録文化財の重厚な湯屋は充満する湯気でほとんど見えずでしたが、湯屋を出て露天風呂に入ると目の前には存在感のある湯屋が鎮座してたいへん風情があり、露天風呂と桃山風呂、そして併設されている蒸し風呂を行ったり来たりして、至福の入浴タイムを過ごさせて頂きました。

桃山風呂|湯田中温泉 よろづや【公式】|登録文化財 桃山風呂を堪能し松籟荘に泊まる老舗温泉旅館 (yudanaka-yoroduya.com)

温泉アクセスの役割はそのままに転身した小田急ロマンスカー

翌日の帰路、湯田中からから長野まで乗車したのは特急ゆけむり。温泉らしい名称のこの特急はかつての小田急ロマンスカーで、最大の特徴である前面展望席も健在です。
小田急時代は箱根への温泉の足として活躍していましたが、ここでもまた温泉アクセスの列車として第2の人生を過ごしています。

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この列車は展望席も含め全席自由席なので、改札が始まる前から並んで、展望席に座ることができました。

雪に覆われたリンゴ畑の間を縫って走ります。先頭部では正義の味方が安全を確認。

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途中の信濃竹原で対向列車との行き違いのため少々停車しました。小田急時代は11両編成でしたが、いまは4両に短縮されています。先頭部以外は床が少し高いハイデッカー構造になっているので見晴らしがいいですが、このハイデッカー構造が災いし、バリアフリー化が難しいことから小田急では比較的早く第一線を退きました。長野では小田急ほどの乗客数ではないためか、床が低い展望席部分をバリアフリー対応にしています。

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やってきた対向列車はスノーモンキー。昨日乗った編成とは少し塗装が違い、こちらのほうが成田エクスプレス時代の面影を色濃く残す塗装になっています。
なお、ゆけむりやスノーモンキーという呼び名は列車の名前ではなく車両の愛称で、元ロマンスカーのゆけむりが2本、元成田エクスプレススノーモンキーが2本、計4本の編成が特急の運用に就いています。

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湯田中からは下り勾配が続いていましたが信州中野を過ぎると比較的平坦になり、雪もだんだんとなくなっていきました。すれ違う列車は元地下鉄日比谷線の車両や元東急田園都市線の車両。東京で生まれ育った人にとっては懐かしの車両たちに会うことができるのも長野電鉄の魅力のひとつです。

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快適生活サポート事業グループ ながでんグループ (nagaden-net.co.jp)

懐かしの電車たちに出会いながら、野生のサルの入浴を見て、人間もしっかり温泉を堪能した冬の1泊2日温泉旅行は、大人も子供も楽しい、充実した旅になりました。


2018年1月