ヒューストン郊外で仕事を終えると、取引先の方に、一緒に夕食でもどうですか、とお誘い頂いたので、喜んでご一緒させていただくことにし、教えて頂いたレストランの住所をカーナビに入力して車をスタート。音声案内に従って快調に走っていましたが、突如、いままできちんと通りの名前を言っていたナビの音声案内が「That Wayを右折してください」と、あいまいなことを言い出します。「あの道を曲がれ?ナビらしからぬ雑な案内になったものだな…」と不思議に思いながらもその通りに進むと、今度は「This Way を右折してください」との案内が。「この道、って…」と、半ば呆れつつも、音声案内が壊れたのかと思い心配になりましたが、道路の看板を見て納得しました。This WayやThat Wayという名前の道であるということを。
ここは Lake Jackson という町で、ヒューストンから南に80㎞ほどのところにあります。妙な名前の道があるものだと興味が湧き、次の仕事でまたこちらのほうに来る機会があったときに、少し時間がとれたのでこの町で少し車を停め、おもしろい通りの看板を見に行ってみました。
自治体のウェブサイトによれば、レイクジャクソンは世界最大級の化学メーカー、ダウ・ケミカルが1940年、この近くのフリーポートという港町に海水からマグネシウムを製造する工場を建設したことを受け、その工場で働く人たちのベッドタウンとして1941年から開発された町だそうです。開発中に大雨に見舞われ水浸しになったことから、治水のためもともとあった木を計画的に残しながら開発したため緑が多く、City of Enchantment = 魅力的な町、と言われるようになったと言います。
町の道路は「xxx Drive」と「xxx Way」という呼び名があり、「Way」がつく道はダウンタウンにつながる道とのことなので一見わかりやすそうですが、そのWay には This Way や That Way という名前の道があるおかげで、せっかくのわかりやすさがわかりにくくなっているという、お茶目な町です。
なぜThis Way と That Way と言う名の通りが生まれたかというと、町をつくったダウ氏(ダウ・ケミカル創設者の息子)が通りの名前をつけるにあたって、ありきたりな名前にはしたくないけど、でもどんな名前にしようか、と思案していたところ、秘書が地図を見ながらまだ名のない通りをThis wayやThat Wayと言ったのを聞き、それを通りの名前にしてしまおう!と決めたのだとか。なんとも他愛のない話ですが、さぞかし深い理由があったのだろうなどとは微塵も思っていなかったので、そんなことだろうな、という感じです。
レイクジャクソンの町に車を停め、まずは高速道路の出口看板が見えるところに行きました。さりげなく一番下に書かれているThis Way の文字。This Way が通りの名前だと知らなければ、上に書かれている通りに行きたい人はこの道ですよ、的な意味に解釈してしまいそうですが、それはそれで間違ってはいないのも面白いところ。
そしてThis Way の交差点と、That Way の交差点へ。大きな通りの信号に、This Way とか That Way などと堂々と掲示されていて、初めて訪れた人は頭の中が「?」となるかもしれません。
町の中心部では、This Way と That Way が交わっています。
看板の設置位置の関係で、This Way と That Way が一直線につながっているようも思えますが、これらの道はほぼ直角に交わっており、ここはCenter Way も交えた三差路になっています。
This Way と That Way が交わるのはここだけなので、両方の道の名が一度に書かれているこの看板が、この町いちばんの記念写真スポットかもしれません。
市街地の北側にある住宅街には、Any Way と That Way の交差点。
道に迷って、あの道がthat way ですか?と聞いたら、Anyway, this way is that way, that way is this way! などと言われたら頭が混乱しそうですが、これらの特徴的な名前の道がレイクジャクソンの町の個性を際立たせ魅力を増していることは間違いないでしょう。
2015年10月