そこに線路があるかぎり

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【青森県】上野発の夜行列車を雪の中の青森駅で降り 冬景色の津軽海峡をフェリーで渡る 寝台特急「あけぼの」の旅 〔上野~青森/JR上越線・信越本線・羽越本線・奥羽本線他〕(2014年)

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誰からも愛される名曲「津軽海峡冬景色」は、旅の情緒を感じさせてくれる素晴らしい曲だと思いますが、ここに歌われる「上野発の夜行列車」は1990年代から2000年代にかけてどんどん数を減らしてゆき、東北方面に向かう毎日運転の定期夜行列車は、2013年末の時点で、札幌行きの「北斗星」と、青森行きの「あけぼの」の2本の寝台特急を残すのみとなっていました。この2本のうち、「北斗星」は青森駅で機関車を付け替えるため停車はするものの、ドアは開かず乗客の乗り降りはできなかったため、「上野発の夜行列車」に乗って青森駅に降り立てるのは「あけぼの」だけという状況、そしてその「あけぼの」も、2014年3月に定期運行を廃止(以降、臨時列車としては残る)されることが発表され、ついに「上野発の夜行列車」で青森駅に降りたつこともできなくなってしまうことに。
2014年1月、定期運転廃止があと2か月に迫った「あけぼの」に乗って、津軽海峡冬景色の世界を体験してきました。

寝台特急「あけぼの」について

寝台特急「あけぼの」は上野と青森を結ぶ寝台特急列車で、2014年3月14日発の運転を以って定期運行が終了しました。その後臨時列車となりましたが、車両の老朽化とともに2015年1月の運行を最後に運転されていません。
走行ルートは高崎線上越線信越本線を経由して新潟の少し手前の新津から羽越本線に入り、日本海沿いを走って秋田から奥羽本線に、そして弘前を経由して青森に向かうというものですが、もともとは東北本線を通って福島から奥羽本線に入り、山形や秋田を経由して青森に向かうルートを走っていました。しかしながら奥羽本線の福島~山形間が山形新幹線に変わり線路幅が新幹線と同じになることから、東北本線を仙台の先の小牛田まで走り、そこから陸羽東線という非電化のローカル線を通って奥羽本線に入るルートに変わり、さらに秋田新幹線の開業とともに、最終的な上越線羽越本線経由のルートとなりました。このように走るルートが2度も変わった珍しい列車ですが、ルート変わりながらも長く存続できたのは、東京と北東北を結ぶ夜行列車の需要が高かったものだと思われます。
なお、福島~秋田が奥羽本線経由だったころは1往復が上野~青森、もう1往復が上野~秋田の1日2往復が設定されていて、上野を早く出る青森行きは秋田あたりから先の利用を見込んだ時間設定に、上野を後にでる秋田行きは、山形あたり~秋田の利用をターゲットとした時間設定になっていました。スタジオジブリのアニメ映画「おもひでぽろぽろ」では、この秋田行きの「あけぼの」に乗って山形に行くところが描かれています。

予約困難な廃止前の「あけぼの」 乗車当日に寝台券を確保

「あけぼの」には陸羽東線経由だったころに1度、冬に個室B寝台「ソロ」に乗ったことがありました。目が覚めたときに一面の雪景色の中を走っていて感動したことや、車掌さんが話しかけて下さったとき、車内放送は標準語でされていたのに、雑談になるとすっかりお国言葉で半分以上聞き取れなかったことなど、思い出のある列車です。
また「あけぼの」に乗って雪国の寝台列車の旅がしたいと思っていたものの機会がなく、定期運行廃止の報を聞きあわててチケットを予約しようとしましたが、週末の便は発売後すぐに満席になってしまうようで、なかなか空きがありません。定期運行終了後も臨時列車として残るので、慌てて今乗ることもないか、という考えも頭をよぎりましたが、臨時列車は再混雑期に運転されるものと予想され、そうなると結局混んでいてチケットを取るのが難しそうなことと、臨時列車として残ったとしても、その後それほど長くは運転されないのではないかと予想されること(実際、臨時化して1年も経たず運転終了になってしまいました)から、やはり今乗っておくべき、と思い駅の窓口で発売中の週末発の便をすべて確認してもらうも全便満席でした。ちょうどその日は土曜日だったので、当日なら急にキャンセルが出たりする可能性もあるのでは、と、当日発の列車の空席を見てもらうも満席、あきらめかけたところでふと思い立ち、それまで青森までの空きを聞いていたところを、羽後本荘までで調べてもらうと見事に空席があり、発車3時間前にして「あけぼの」の寝台券を確保することができました。
羽後本荘までとした理由は、「あけぼの」は一部の車両が羽後本荘から「立席」扱いとなり、羽後本荘~青森の各停車駅間は「立席特急券」で乗車できるようになるためです。「立席」とはいっても別に立たされるわけではなく、実態は寝台車両を座席車扱いとして空いている座席に座ることができ、寝台券よりもはるかに安く、通常の特急券と同額の「立席特急券」で乗車できるようにするものです。この「立席」になる車両は羽後本荘までの寝台券しか発売されないことになります。つまり、羽後本荘まで寝台を利用、羽後本荘からは立席特急券で座席利用すれば、「あけぼの」に乗ったまま青森まで行くことができます。念のため駅員さんにそういう乗り方をしてもいいのかを聞いてみると、問題ないとのことだったので、上野~羽後本荘を寝台、羽後本荘~青森を立席としてきっぷを発行してもらいました。申し訳ないことになかなかやっかいなきっぷだったようで発券まで20分ほどかかり、出てきたきっぷはなんと手書きのものでした。
ともあれ、「あけぼの」に乗れることになったのは大変うれしいことで、大急ぎで家に帰り、旅支度をして上野駅に向かいました。

上野駅地平ホーム 13番線から出発

「あけぼの」が発車するのは上野駅の13番線です。13番線は地平と高架の2層式になっている上野駅の地平ホームのいちばん端で、夜行列車が発着する際の定番のホームとなっています。薄暗いホームにブルーの車体が佇んでいる風景は独特な旅情を感じます。
廃止が決まっているので、写真を撮っている人も多くいました。

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上野から出る青森行の列車は、「あけぼの」が最後の存在。それにしても青森行とは、なんと旅心をかきたてるものでしょう!

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発車ベルが鳴り、「うえの」の駅看板を見ながら、列車はゆっくりと動き出しました。

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折り畳み式の乗降ドア、片廊下のB寝台、JR柄の浴衣、これこそブルートレインという味です。

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予約できたのは上段寝台だったので、しばらく廊下の補助椅子に座って景色を眺めてから寝台に入り、眠りにつきました。
翌朝、目が覚めたのは羽後本荘の手前で、自分でかけてアラームで起きたのか、「まもなく羽後本荘です」という車掌さんの声で起きたのかは覚えていませんが、とにかく眠い目をこすりながらハシゴを降り、下段寝台に座ります。まわりの寝台を利用していた人たちも、私と同じようにこの先も立席特急券で乗り続けるようでした。
列車が停まるとまだ暗いホームに「うごほんじょう」の駅名標が見えます。羽後本荘発は6時01分です。

座席として座ってはいますが、暖房がよく効いて温かく、ほどよく薄暗い車内の環境では、壁によりかかってすぐにまどろみ、気が付くと秋田に到着、少し明るくなった外は期待通りの雪景色でした。
その後もうつらうつらしたり、ぼんやり雪景色を眺めたりしているうちにいくつもの停車駅を過ぎてゆきました。立席車両は意外と盛況で大きな停車駅ごとに乗り降りする人があって、1席というか1つの下段寝台に3人ずつ座り、通路の補助椅子もおおかた埋まっている状況でした。聞こえてくるお国言葉がまた良いものです。

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上野発の夜行列車から 雪の青森駅に降り立つ

9時52分、青森駅に到着。
上野発の夜行列車降りたときから、青森駅は雪の中でした。
そんな経験ができるのも「あけぼの」が最後というわけで、これは貴重な機会です。
雪の中を走ってきたブルーの車体にはたくさんの雪がこびりついていて、過酷な道中を走り切った車両にねぎらいの言葉をかけたくなります。

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最後尾は走行時に巻き上げた雪が付着して、なかなか迫力の形相に。

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青森駅を跨いで架かる「ベイブリッジ」を見上げて佇む「あけぼの」の隣に、函館とを結ぶ「スーパー白鳥」の車両が入って来ました。

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「あおもり」の駅名標と雪に覆われたホーム、そして青い車体。なんという旅情でしょうか。

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先頭に立っていた機関車が切り離され、ホーム横の引き上げ線を走って行きました。

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前の車両を見に行ってみます。

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機関車と連結されていた部分の車両の顔は雪の付着はほとんどなく、「あけぼの」のマークもはっきり見えます。

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やがて反対側に連結されたディーゼル機関車に牽かれて、「あけぼの」はゆっくりホームを去って行きました。

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降りしきる雪の中並ぶ普通列車用の701系、その隣に、先ほど切り離された「あけぼの」の機関車がまだ停まっていました。

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ヘッドマークは雪でほとんど見えなくなっています。

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しばらくすると機関車も車庫へと引き上げていきました。

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函館行きスーパー白鳥普通列車が並びます。

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フェリーに乗って 津軽海峡の冬景色を

車庫へ回送される「あけぼの」の客車と機関車を見送ったあとは、函館まで行ってみようと思います。函館へはスーパー白鳥に乗るのが便利ですが、せっかく「上野発の夜行列車降りたときから 青森駅は雪の中」を体験したわけですから、ここは「私はひとり 連絡船に乗り」たいところ。あいにく青森駅の岸壁から出る函館行きの国鉄~JRの青函連絡船青函トンネルの開業によりとっくの昔に廃止になっていますが、幸い青森と函館の間にはフェリーが現在も運航されています。

フェリーが出る青森港は青森駅からタクシーで10分ほど。
雪の降り方が少し穏やかになった青森港に到着すると、岸壁に停泊しているフェリーが見えました。

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ターミナルで乗船券を購入します。次に出る函館行きは11時35分発の「3号はやぶさ」。まさか東北新幹線の列車名と同じ船とは。この便の函館港の到着時刻は覚えていませんが、2022年1月現在の時刻表を見ると、2014年1月当時と同じ11時35分発の函館行きの便があり、この便の函館港着は15時25分になっているので、おそらく2014年当時もそのくらいの時刻の函館港着だったのだと思います。
函館までの2等旅客運賃は、基本運賃1500円に燃油調整費300円が加わり、合計1800円。この当時、JRの特急で青森から函館まで行った場合、運賃と特急券あわせて5000円ほどかかりましたので、フェリーの運賃は破格です。なお、2022年1月現在では、北海道新幹線新青森新函館北斗は運賃と特定特急券あわせて7190円ですが、フェリーの最も安い2等運賃は1800円のままで、その格差は大きく開いています。もっとも、所要時間は新幹線なら約1時間、フェリーだと約4時間と、こちらも大きな差があります。(この所要時間は、新幹線は新青森新函館北斗、フェリーは青森港~函館港のもの)

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乗船券を購入してから乗船までの間、少し岸壁に佇み海を眺めてみました。
凍えそうなカモメを探してみたものの見当たらず、代わりに凍えそうなカモを発見。風に舞う雪が目に入り涙が出てくるので、「凍えそうなカモ見つめ泣いていました」と言える状況で乗船前のひとときを過ごしました。

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乗船は舳先のランプから。岸壁と船体をつなぐランプウェイはトラックが真横を次々に走り歩行者が歩くスペースは細く、雪が積もっているので、転倒でもしようものなら極寒の海に転落しかねません。足もとをしっかり確かめながら、慎重に歩いて乗船します。

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船内はトラックがぎっしり。停車するトラックの横をすり抜け、細い階段を上がり船室へ。

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カーペット式の船室は私の他には誰もいませんでした。ドライバー専用室があったので、トラックドライバーの方はそちらにいるのかもしれません。
寝転んだときの枕として使うのか、壁際には長い棒状のビニールクッションがあります。男子学生の団体などが乗船したら、まちがいなくこれを振り回して遊び始めることでしょう。

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11時35分、青森港を出航。

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青森駅近くにある三角形の形が特徴の観光物産館アスパムのビルと、青森駅を跨ぐベイブリッジが見え、あのあたりが青森駅なのだとわかります。

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反対方向の船とすれ違い。

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船は右に下北半島、左に津軽半島を見ながら、陸奥湾を北に進んで行きます。陸に挟まれた湾内なので、海も穏やかです。
ふと見ればカモメが飛んでいて、凍えそうなカモメを見つめることができました。

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低く垂れこめた雲に灰色の海、黒と白の陸地と、モノトーンの景色が続きます。これが津軽海峡冬景色か、と感慨深く眺めていましたが、冷静に考えればこのあたりは陸奥湾か、陸奥湾から津軽海峡に出るところにある平舘(たいらだて)海峡で、まだ津軽海峡ではありません。

 

 

さて、乗船して1時間ほどが過ぎておなかもすいてきたので、このあたりで昼食とします。青森駅で買った駅弁は「津軽海峡 海の宝船」。まさに津軽海峡を通る船の上で食べるにふさわしいお弁当です。うにやイクラが散らされていて、見た目にも美しく、食べておいしく、最高のお弁当でした。船内の自販機で売っていた緑のたぬきはその場でお湯が入れられ、あたたかい汁物が欲しいと思っていたところに、良い巡りあわせでした。
冬の海を見ながら食べるお弁当と緑のたぬきは、最高の昼食となりました。
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このあとも船旅を楽しみ、少し暗くなりつつある函館港に到着後は、最寄りの五稜郭駅まで雪の積もった函館の町を30分ほど歩き、1駅列車に乗り函館駅へ向かいました。もう暗くなった函館駅から市電に乗り日帰り温泉で温まったのち、函館空港から空路で羽田へ。夜行日帰りの短い時間ながら、風情溢れる楽しい冬の旅を満喫できました。

上野発の夜行列車を雪の中の青森駅に降り、凍えそうなカモ見つめ船で北海道に渡る、歌の世界観そのままの旅情満点の冬の旅。もうこれを味わうことができないことは非常に残念ですが、また雪の降りしきる青森駅を訪れ、かつての旅を思い出しながら感傷にふけってみたくなる気もします。

 

2014年1月