埼玉県北部を東西に走る秩父鉄道には、かつて国鉄の通勤輸送を担った国電車両101系が譲渡された1000系電車が2014年まで活躍していました。ところどころ改造はされていましたが、国鉄時代の雰囲気を色濃く残していた1000系は、3両編成が12本というまとまった数が走っていました。
秩父鉄道に譲渡されてから20年以上、製造されてからは50年近くという長きにわたって活躍した国鉄101系~秩父鉄道1000系も寄る年波には勝てず、2009年から引退が始まりましたが、引退が近づいた2007年からはさまざまな復刻塗装の編成が登場し、カラフルな列車たちが行き交っていました。そんなカラフルな秩父鉄道1000系が2012年12月、イベントで終点の三峰口駅に集いました。
- 秩父鉄道1000系のカラーバリエーション
- 秩父鉄道旧標準色編成の引退を記念したイベント
- まずは白とスカイブルーの並び
- オレンジ、そして黄色と列車が到着
- 4色の1000系が勢ぞろい
- 展示されていた車両が発車
- 最後に残った新標準色編成
秩父鉄道1000系のカラーバリエーション
国鉄101系が初めて秩父鉄道に譲渡されたのは1986年のこと。このときは黄色いボディに茶色の帯という標準塗装で新天地での活躍を始めました。その後、白地に濃淡の青と細い赤帯をあしらった塗装に変更され、この塗装が引退時の標準塗装となっていました。
一方、2007年から復刻された塗装は、まず国鉄時代の国電の色、オレンジ、スカイブルー、イエロー、グリーンの単色塗りが計4本登場し、その後、1000系導入前の秩父鉄道標準色であった茶色の濃淡塗装、そして1000系登場時の黄色に茶帯という塗装が計2本登場しました。これら復刻塗装が6種類、このときの標準塗装とあわせると、実に7種類の塗装の1000系が存在したことになります。
復刻塗装となった編成も2010年からだんだんと引退が始まり、2012年12月の時点では国電カラーが2本(オレンジ、スカイブルー)、秩父鉄道旧標準色(黄色地に茶帯)が1本の3種類の復刻塗装と、新標準色の4種類の塗装しか見ることができませんでしたが、それでも十分にカラフルさを感じさせるものでした。
秩父鉄道旧標準色編成の引退を記念したイベント
2012年12月に三峰口駅で開催されたイベントは、黄色地に茶帯の秩父鉄道旧標準色が引退することを記念して開催、その時残っていた1000系の全種類の塗装の編成が一堂に会して展示されるというものでした。
展示用の列車以外にも駅には通常の定期列車が発着するので、1000系以外の車両も見ることができ、バリエーションに富んだ車両たちの姿を楽しむことができました。
まずは白とスカイブルーの並び
定期列車に乗って三峰口駅に着くと、留置線には白い秩父鉄道標準色と、スカイブルーの国電復刻塗装の車両が並んでいました。
左のステンレス車両は、1000系に代わって登場した7500系。これは元東急の8090系車両で、東横線や大井町線などで活躍しました。
1000系には、さよなら1007Fというヘッドマークが取り付けられています。1007Fとは、今回引退する旧秩父鉄道標準色の編成のことです。
三峰口駅はホームが2面ありますが、駅舎のある1番線には元都営地下鉄三田線6000系の、5000系が停まっていました。
駅を出て踏切から三峰口駅構内を見ます。奥には山肌が迫っています。さきほど3番線に停まっていた7500系は発車して行ってしまいましたが、元都営三田線と元国鉄の車両が並んでいるという、面白い光景が展開されています。
今度は駅の反対側へ。先ほどの踏切から見たところでは左側のホームの奥にも留置線があり、ここには西武鉄道の4000系が停まっていました。この車両は池袋からの直通列車として乗り入れてきたもので、夕方にまた池袋に戻るまでの間、この三峰口駅で昼寝をしています。
この乗り入れ列車も、2024年12月現在では朝だけの運転となって、夕方の列車はなくなってしまいました。したがってこうして三峰口駅での昼寝姿も今では見ることができません。
三峰口駅の終端側にも踏切があり、それを渡って駅の反対側へ行くと、昔活躍した電車や貨車が展示されている鉄道車両公園があります。その公園から留置線に停まる今回のイベントの展示車両が良く見えます。
オレンジ、そして黄色と列車が到着
しばらくすると、オレンジの車両がやってくるのが見えました。
オレンジは2番線に入線。かつての都営三田線と国鉄中央線が並ぶという、これもまた面白い光景。
続いて、今回の主役、黄色い旧秩父鉄道標準色の車両が3番線に到着。
右が1000系が秩父鉄道に登場したときの標準色、そして左が途中で変更された新標準色。1000系が秩父鉄道でまとった標準色2種類が並びます。旧塗装から新塗装への塗装変更の途中では普通によく見られた光景なのだと思います。
4色の1000系が勢ぞろい
この時残っていた1000系の全塗装が勢ぞろいしました。
こうして並ぶと圧巻です。
茶色い帯こそ入っていますが、黄色とオレンジの並びは、中央線の快速と各駅停車を思わせ、懐かしさを感じます。
鉄道車両公園に展示されている100系電車は、1000系の導入により引退した車両。そして100系を置き換えた1000系が今引退の時を迎えています。
ふたたび駅舎側に戻ることにします。
留置線の線路上も、撮影会参加者の撮影会場とされていて、多くの人が撮影を楽しんでいました。
1000系は三峰口寄りの先頭車にパンタグラフが2基備えられています。国鉄~JR時代は運転台側のパンタグラフはありませんでしたが、秩父鉄道に入線後、冷房が取り付けられ電力の消費が増えたことを受け、パンタグラフが増設されました。
そういえば、秩父鉄道旧標準色では、乗務員室のドアは黄色一色だった気がします。いまここにある復刻版旧標準色では乗務員室ドアに茶色帯が塗られていますが、復刻したときに塗り間違えたのでしょうか。
4色そろい踏みがみられるのも最後のチャンス。
再び駅を見通せる踏切へ。こちらからも最後の4色そろい踏みの光景を見ておきたいと思います。
展示されていた車両が発車
そろそろ展示されていた車両が帰って行く時間です。三峰口駅から隣の白久駅へ向かって歩き、途中でその車両を見送りたいと思います。
三峰口行きの7500系が走り去り、それと入れ替わりに、旧標準色編成がやってきました。
続いて、先ほど見送った7500系が上り列車として戻って来ました。
白久駅に着くと、急行用の6000系が三峰口へ向かって走って行きました。6000系は西武鉄道の101系を改造したもの。
急行と入れ替わりに、オレンジ編成がやってきました。この列車は普通列車として運転されているので、1駅だけ乗車することにします。
白久から乗ったオレンジ編成を武州日野で降りました。
羽生へ向けて走り去るオレンジ編成。
次の下り列車に乗って再び三峰口駅へ。さきほどまで賑わっていたこの駅も、ずいぶんと落ち着いた雰囲気になっていて、残った2編成、スカイブルーと新標準色をじっくり眺めることができます。
西武鉄道直通の池袋行きが、留置線を出てホームに入って来ました。
スカイブルー編成のヘッドライトが点灯し、上り列車として出発します。
走り去るスカイブルー編成。
最後に残った新標準色編成
さて、最後に残ったのは新標準色編成です。秩父鉄道の1000系として最も一般的な姿。
この7000系は、もともと中間車だった車両に、秩父鉄道譲渡にあたって運転台を取り付けた車両。中央に貫通扉があるように見えますがこれは飾りで、実際にはドアはありません。
最後に鉄道車両公園から新標準色車両を見ます。さきほどは両隣に他の車両がいましたが、いまは側面まで良く見えるようになっています。
三峰口寄りの先頭車両。
中間車は冷房が取り付けられておらず、非冷房になっています。
羽生寄りの先頭車両。冷房がついています。
1番線には急行用6000系が停まっています。
カラフルな1000系をはじめ、元都営地下鉄、元東急電鉄、元西武鉄道に現西武鉄道と、色も種類もバリエーション豊富な秩父鉄道は、昔東京で乗っていた車両たちに会える、懐かしさを感じる鉄道会社です。あれから12年が経ちますが、この日出会った1000系以外の車両たちは2024年11月現在も健在であり、ひさびさに懐かしい車両に会いに行ってみたくなりました。
2012年12月