そこに線路があるかぎり

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【山梨県】車内にはソファや本棚も 富士登山電車の車両を使った臨時普通列車 富士山満喫号の旅 〔大月~河口湖/富士急行線〕(2022年)

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山梨県の大月から河口湖まで26.6㎞を走る富士急行線は、富士山をはじめ、富士五湖富士急ハイランドなどの観光地を沿線に抱え、観光客の利用が多い路線です。優等列車も運転されていて、JR中央本線から乗り入れてくる特急「富士回遊」や自社線内だけを走る「富士山ビュー特急」「フジサン特急」といった特急列車が花形ですが、それらに交じって活躍する「富士登山電車」という快速列車もあります。
この富士登山電車は観光用に改装された専用車両が使われているのですが、あいにく富士登山電車は2020年4月から運休が続いており、この専用車両も時々運転される団体列車や臨時列車で使われるだけとなっていて、乗ることができる機会もすっかり少なくなってしまっています。2022年11月、そんな富士登山電車車両に乗ることができる臨時列車、富士山満喫号に乗ってきました。

 

富士登山電車に使われる富士急行線1200形車両  2013年10月

富士急行線と富士山麓電気鉄道

富士急行線とは、富士山麓電気鉄道という会社が運営する、大月~富士山の大月線、富士山から河口湖の河口湖線の2路線を総称した呼び名です。大月線と河口湖線はすべての列車が直通運転されているので、これらの正式路線名を意識する機会は少なく、あわせて「富士急行線」と呼ぶのが一般的です。富士急行線はかつては富士急行株式会社が運営していましたが、2022年4月から富士急行株式会社の鉄道事業が分社化されることになり、その新会社の社名が富士山麓電気鉄道株式会社とされました。富士山麓電気鉄道とは1960年5月に富士急行という社名になる前の鉄道会社名であり、新しく発足する会社に昔の名前を復活させて名付けたということになります。余談ですが、幼いころ私の祖父が富士急行線のことを「富士山麓線」と言っているのを聞き、山麓という言葉を知らなかった私は「36」だと思い込み、「なぜ鉄道路線名に36という数字が入っているのだろう」と不思議に思ったのを覚えています。
会社名は変わっても、長年親しまれた富士急行線という呼び名も定着しているので、現在でも引き続き使われています。

富士登山電車について

運転区間は大月~河口湖 富士山に登る電車というわけではない

富士急行線を走る普通列車用の1200形車両を改装し、2009年8月から運行を開始したのが「富士登山電車」です。運転区間富士急行線の全線、大月~河口湖26.6㎞で、他の特急や普通列車と同じです。この列車が富士山に登るというわけでもなく(そもそも富士山に登る鉄道路線はありません)、富士登山に行くバスに絶妙のタイミングで接続しているというわけでもなく、あくまで富士山に向かって勾配を登って行くという富士急行線の路線特性のイメージから名づけられた列車名であり、同時にその列車に使われる専用車両名ということのようです。

富士登山電車の運転時刻

2020年4月から富士登山電車はずっと運休が続いていますが、運休直前は下記の時刻で運転されていました。

富士登山電車2号 河口湖  8:24 --> 大月  9:26
富士登山電車1号 大月 10:01 --> 河口湖  10:56 
富士登山電車4号 河口湖  12:09 --> 大月  13:17
富士登山電車3号 大月 13:49 --> 河口湖  14:51

全列車とも大月~河口湖の各駅に停車。
富士登山電車車両2両+一般車両2両の4両編成で運転。
富士登山電車車両に乗車するには、着席整理券200円が必要(座席定員制)
木曜日は一般車両だけで運転。

着席整理券が必要な普通列車

運行開始当初は富士登山電車車両2両と一般車両2両が連結された4両編成の普通列車として運転されていて、富士登山電車車両のうち1両が別途200円の着席整理券が必要とされていました。その後、2010年3月からは富士登山電車車両単独の2両編成の快速列車に変わり、全車着席整理券が必要となったのち、2020年3月からはふたたび富士登山電車車両2両+一般車両2両の4両編成の普通列車に戻って、富士登山電車車両に乗車の場合だけ着席整理券200円が必要となっています。

富士登山電車 着席整理券の予約方法

2022年12月現在、富士急行の公式サイトによれば、富士登山電車の着席整理券は下記の方法で予約、購入ができると案内されています。富士登山電車は現在は運休中ですので予約自体ができないですが、運転再開になった場合、予約、購入方法が変更になる可能性もありますのでご注意ください。

 1. 富士急コールセンター(0555‐73‐8181)にて予約後、当日改札窓口にて購入。
 2. インターネットにて予約後、当日改札窓口にて購入
 3. お近くの旅行代理店(*1) にて購入
 *1 旅行代理店によっては取り扱っていないところもあります。
 4. お席が空いている場合は、当日窓口でも購入できます。

インターネット予約のサイトは以下ですが、現在は検索しても「該当する便がありません」という表示になってしまいます。

富士急行特急予約 (fujikyu.co.jp)

デザイナーは観光列車のデザインで有名な水戸岡鋭治

富士登山電車のデザインは、JR九州をはじめとする全国の観光列車のデザイナーとして有名な水戸岡鋭治氏によるものです。和のぬくもりを感じるやわらかな風合いの中にも、時に遊び心や斬新さを取り入れた独特のデザインは、乗った人を驚かせ、旅を楽しくする列車として人気があります。

1号車「赤富士」と2号車「青富士」の2両編成

富士登山電車車両は2両編成で、大月駅発車時点での河口湖方が1号車「赤富士」、大月方が2号車「青富士」となっています。富士山でスイッチバックし進行方向が変わるため、富士山~河口湖では河口湖方が2号車「青富士」、大月方が1号車「赤富士」となります。
「赤富士」と「青富士」は車内内装のイメージが異なり、「赤富士」は赤系を基調とした落ち着いた雰囲気、「青富士」は青を基調とした明るい雰囲気になっています。

1号車「赤富士」車内

2号車「青富士」車内

昔は京王線を走っていた車両

富士登山電車の1200形車両は、元は京王線の5000系という車両です。京王を引退後、1994年から1996年にかけて富士急行に譲渡され、そのうちの2両が2009年に富士登山電車に改装されました。京王と富士急行では線路の幅が違うので、台車は地下鉄日比谷線で同時期に廃車になった車両のものを使っています。

富士山満喫号に乗る

早朝に走る臨時普通列車 富士山満喫号 特別料金は不要

富士山満喫号は、大月から河口湖まで早朝に1本だけ運転される臨時列車で、2022年秋の運転日と時刻は以下のとおりでした。

運転日:  2022年9月23日(金・祝)~11月26日(土)の土休日(10/2 日を除く)。

運転時刻:(片道のみ運転)

大月                   6:06
上大月               6:08
田野倉               6:12
禾生                   6:17
赤坂                 6:20
都留市                   6:22
谷村町                   6:26
都留文科大学前  6:29
十日市場                6:31
東桂                  6:34
三つ峠                   6:30
寿                6:45
葭池温泉前         6:48
下吉田              6:54
月江寺              6:56
富士山              7:07
富士急ハイランド 7:10
河口湖              7:13

かなりの早朝の運転となっており、当日の朝の東京駅発の中央線始発列車に乗っても、この列車の出発時刻までに大月に着くことはできません。

富士登山電車車両が使われていますが、富士登山電車では購入が必要な着席整理券も富士山満喫号では不要で、乗車券のみで乗車することができます。

まだ暗い大月駅で列車を待つ

日も短くなった11月下旬、午前6時前の大月駅はまだ真っ暗です。駅を出てすぐの踏切からは、まだ人気のない大月駅ホームと、これから1日の活動を始める2本の普通列車6000系車両が見えました。振り返ると、少し先の留置線に停車する富士登山電車車両の姿もみえました。

踏切から駅のほうに来て、さきほどの電車を反対側から見ます。駅の明かりに照らされて、金色と赤色の電車の顔が良く見えました。この車両は元JRの205系、山手線などで活躍していた車両です。

鳥居のあるところが富士急行大月駅の入り口です。まだシャッターがおりていて中に入れません。

シャッターのおりた入口には、この入口の営業開始が6:08との表示がありました。富士山満喫号の出発は6:06なので、ここが開くのを待っていては電車に間に合いません。もしかすると富士山満喫号の運転日は少し早く開くのかもしれませんが、万が一開かなかったとなるとせっかくの富士山満喫号に乗れなくなってしまうので、すぐ隣にあるJRの駅舎から改札を入り、JR大月駅ホームを通って富士急行への連絡口に向かいました。JRの大月から入ったICカードではJRから富士急への連絡口の自動改札を通ることができませんでしたが、ここには富士急の駅員さんがいらっしゃり、フリーきっぷの購入もできたので、ICカードのJR大月の入場記録を消していただき、富士急線のフリーきっぷを購入してました。

5:50を過ぎた頃、富士山満喫号の富士登山電車車両がホームに入って来ました。

赤茶色のような外装の塗装は、富士山麓鉄道開業時に走っていた車両の色、「さび朱色」なのだそうです。色はすっかり変わっていますが、形は京王時代の面影を色濃く残しています。ただ、京王時代は片側に3か所あった乗降用ドアが、富士登山電車車両では真ん中のドアが埋められて前後2か所になっていることが違います。真ん中のドアは、富士登山電車に改装されるときに埋められました。

京王れーるランドに保存されている京王5000系

左の河口湖方1号車が「赤富士」車両、右の大月方2号車が「青富士」車両です。

うしろにJR中央線の車両が停まっているのが見えます。

2号車「青富士」の車内

車内に入ってみると、水戸岡さんのデザインらしい、木を多用し、丸みを帯びた独特の空間が広がっていました。
まずは2号車「青富士」車両の車内を観察してみます。

乗務員室前には曲がったシートが配置されていました。乗降用ドアはドア横のボタンを押して開閉する方式です。

車両中央部、ドアが埋められた付近は、大月発車時の進行左側の窓を向いた椅子が配置されています。

大月から富士山駅の手前までは進行左側に富士山が見えので、シートがそちら側に向けられているのですが、富士山駅から河口湖の間では富士山は反対側に見えます。

ベビーサークルまでありました。

4人掛けボックス席も4ボックスあり、グループでの利用にも対応しています。

つり革も木製です。まっさおなシートは「青富士」をモチーフにしたソファ席。

連結面側には、ちょっとしたカウンターと木の棚があります。富士登山電車として運転されるときはアテンダントさんが乗車され、このカウンター部分で物販も行われるようです。

カウンターの連結面寄りにも小さな座席がありました。

窓のカーテンはすだれ仕様。

棚には絵葉書や民芸品などが飾られています。

隣の車両への通路にはのれん、その両脇にはイラストが飾られています。

1号車「赤富士」の車内

2号車から1号車に入ると、空間の色合いががらりと変わりました。

木の色合いも「青富士」よりも濃く、壁の色も黄色くて、やわらかで暖かみのある、落ち着いた空間が広がっています。

「赤富士」の車端部にも棚がありますが、「青富士」よりはだいぶ小さいものです。

明るい雰囲気の「青富士」に対し、シックな感じの「赤富士」車内。

「赤富士」にも車両中央部に窓向きシートがあります。シートが向いているのは「青富士」と同じく、大月発車時に左側になる窓の方向です。

窓向きシートの向かい側には本棚がありました。

古い邸宅のリビングのような「赤富士」車内。

4人掛けボックスシートとあわせ、一部2人掛けクロスシートもある「赤富士」。

運転台直後には「赤富士」モチーフのソファと、「富士見窓」と名付けられた丸い窓。

夜が明けきらぬ大月駅を出発 だんだんと明るくなる車窓

6:06、河口湖目指して大月駅を発車しました。まだ夜も明けきらず外は真っ暗で、景色は全然見えません。
大月から2駅目の田野倉で上り一番列車大月行と行き違い。

禾生かせい)に停まると、外はうっすら明るくなってきていました。

大月発車時点でお客さんは私を含めて3人だけ。ガラガラのまま列車は河口湖目指して進みます。

外はどんどん明るくなってきます。都留市を発車。

谷村町(やむらまち)では対向列車待ちのため少々停車。

やってきた対向列車は中央線で使われているJRのE233系。中央線に直通する東京行きの列車です。

後方に去りゆく景色を眺めます。

今日はあいにくの天気ですが、進行左側に雲に隠れた富士山の足元だけが見えました。晴れていればドーンと大きな富士山を見ることができます。

三つ峠でも対向列車を待ちます。

やってきたのは再びJRのE233系E233系による中央線との定期直通列車は1日2往復あり、夜に下り2本、朝に上り2本が運転されています。

三つ峠の先も富士山がよく見える区間ですが、あいにくの空模様。

ふと見た山の斜面にはびっしりと並ぶソーラーパネルが。

縁起のいい駅名として知られる寿(ことぶき)。ホーム1面に線路1本、駅舎もない小さな無人駅です。

家並みの向こうに富士山の足元だけが見えています。つくづく天気が残念です。

ブルートレインも保存されている下吉田駅

下吉田に到着。ここにはなんとブルートレイン「富士」の車両が保存されています。

ブルートレインの他にも引退した車両たちがたくさん保存されている下吉田。ここでも対向列車待ちのため少々停車します。

「赤富士」の富士見窓から保存車両を見ていると、赤い対向列車がそれを遮りました。

かわいいイラストがたくさんあしらわれていますが、これは富士急ハイランドのアトラクション、リサとガスパールのラッピング列車です。

下吉田を発車。ユニークな顔つきのこの車両は、先代の「フジサン特急」車両。

心の目でも見ると、雄大で美しい富士山の姿が見えます。

スイッチバック富士山駅で進行方向が変わる

富士山駅スイッチバックの駅。河口湖へ向かう線路が左側に並びます。

晴れていれば、「ふじさん」の駅名標の向こうに富士山がドーンとみえるはず。

富士山駅は昔は富士吉田という名前の駅でした。いまでも富士吉田市の玄関となる駅です。

富士山駅ホームから、富士急ハイランドの絶叫マシンが見えます。

赤いテールランプから前照灯に切り替わり、進行方向を変えて河口湖へラストスパート。

「青富士」の車端部、大きな棚が設置されている部分の外側は路線図になっていました。

いままで後ろだった2号車が、富士山駅からは先頭になります。

上り列車の到着を待って、富士山駅を出発。

左側の河口湖方面の線路を進みます。

絶叫マシンがどんどん近づいてくると、富士急ハイランド駅に到着。ここは改札を出ればすぐに富士急ハイランドの入り口になっています。

富士急ハイランドの次が終点河口湖。大月からおよそ1時間の旅が終わります。

車庫のある終点河口湖駅で休むカラフルな電車たち

富士五湖で最も大きい湖、河口湖に近い河口湖駅

奥に見えているのは「富士山ビュー特急」に使われる8500系車両。富士登山電車と同じ色合いです。

たくさんのイラストがあしらわれた車両は「フジサン特急」用の8000系車両。

フジサン特急8000系が少し停止位置を変え、富士登山電車の横にやってきました。

富士登山電車車両は5分ほどホームに停まっていましたが、やがて引き上げ線に向けて発車しました。

引き上げ線で停車、前照灯が点灯して進行方向を変え、留置線へ。

フジサン特急、富士山ビュー特急、そして富士登山電車。富士急行線の観光客向け優等車両がそろい踏みです。

駅を出て引き上げ線の踏切まで来ると、駅と留置線に並ぶバラエティ豊かな富士急行の車両たちが見えました。

今度は駅の反対側に行ってみると、富士登山電車と京王カラーに復刻された1000形が仲良く並んでいました。

ピンク色の帯の車両はJR京葉線で使われていたJR205系車両。運転台のない中間車両が2両停まっていました。おそらく部品取り用の廃車体だと思われます。右の水色の車両がJR205系を改造した富士急6000系。いまや富士急の主力車両です。

河口湖駅前に保存されている昔の車両「モ1号」。富士登山電車の外装塗装は、この「モ1号」の色です。

シートのバリエーションも多く、どこに座ってもそこならではの楽しみがありそうな富士登山電車の車両は、装飾品や展示品を見たり本を読んだり、天気が悪い時や夜など車窓が楽しめないときでも乗る楽しみを味わわせてくれる素敵な車両でした。車両自体は古い車両なのでいつまで運転されるかはわかりませんが、今度は晴れた昼間などに、また富士登山電車に乗って富士急行線の旅を楽しんでみたいと思います。

朝食は富士吉田名物 吉田のうどん「栄屋」で

河口湖から普通列車に乗って2駅、富士山駅にやってきました。ここ富士吉田で有名なご当地グルメと言えば吉田のうどん。昼に営業する店が多いのですが、駅から歩いて行けるところにある「栄屋」さんが朝8:15から営業していたので行ってみました。

駅から歩いて10分少々、住宅街の中にありました。

 

店内は狭く、コの字カウンターが1つだけ。メニューもシンプルです。

肉玉うどんを頼みました。吉田うどんというとコシが強いというイメージですが、こちらのうどんは柔らかめの茹で加減。それでも噛みしめると粉の香りが口に広がる太麺は食べ応えがありました。つゆはあっさり味ですが太麺に負けていません。

吉田うどんの薬味と言えば「ずりだね」。これを入れて味変しながら食べると最高においしいです。

朝からおいしいうどんを堪能できて大満足です。

 

2022年11月