そこに線路があるかぎり

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【福井県】<あの頃の鉄道風景> 普通の電車が道路を走っていた 路面電車車両化前の福井鉄道 〔田原町~武生新/福井鉄道線〕(2006年)

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福井県にある福井鉄道は、道路の上を走る路面電車と、専用軌道を走る郊外電車としての2つの顔を持っています。2024年現在は、車両は路面電車タイプの小型のものが使われていますが、2006年までは普通の電車車両が使われており、大型の電車が堂々と道路の上を走る姿が見られました。
2006年1月、大型の電車が道路を走る珍しい風景が消えると聞き、福井鉄道の風景を見に行ってみました。

福井鉄道福武線

福井鉄道鉄道路線福武線(ふくぶせん)と言う名前で、福井市田原町(たわらまち)から越前市のたけふ新まで20.9㎞の本線と、福井市内の福井城址大名町で分岐して福井駅に至る0.6㎞の支線から成ります。始発の田原町はえちぜん鉄道三国芦原線と接続しており、三国芦原線の鷲塚針原まで直通運転が行われています。支線の福井駅はその名の通りJR北陸新幹線と、北陸本線がJRから経営分離されたハピラインふくいの福井駅の目の前にあり、終点のたけふ新はハピラインふくいの武生駅のすぐ近くにあります。
2006年当時は、田原町からのえちぜん鉄道直通運転はまだ行われておらず、支線の分岐駅の福井城址大名町は市役所前、福井駅福井駅前という停留所名で、終点のたけふ新も、武生新という漢字表記でした。
車両の路面電車化、えちぜん鉄道直通運転、北陸新幹線開業など、福井鉄道を取り巻く環境はここ20年ほどで大きく変わり、駅、停留所名が変わったところも多くあります。

福井駅前停留所

JRの福井駅の駅前広場から伸びるメインストリートの1本横の道に、福井駅前停留所がありました。線路は停留所からすこし伸びたところで消失しており、終点部でよく見られる車止めなどもなく、あっさりとしたものでした。
路面にある停留所なのでホームの高さは低く、停車する普通サイズの電車ではドアとの段差が非常に大きいので、福井鉄道の電車のドアにはステップがついていました。このステップは折り畳み式で、路面区間の停留所でのみ使用されていました。

町の中の道路の真ん中の、路面電車が停まるような停留所に大型の電車が停まっているのは、なんとも面白い光景でした。

この車両は元静岡鉄道の300形で、2両編成が3本、福井鉄道に譲渡され活躍していました。

福井鉄道の電車は広告車両が多く、この編成もジブラルタ生命の全面広告となっていました。福井駅前、武生新寄りの1両がブルー、田原町寄りの1両が白に塗られています。

福井駅前停留所を出発した電車は、西武デパートなどもある商店街をゆっくりと走って行きます。

市役所前停留所

支線が本線に合流する市役所前まで歩いて追いかけてみると、進行方向を変えた武生新行きが市役所前を出発するところでした。

市役所前のホームで待っていると、さきほどの列車と入れ違いに福井駅前に行っていたグリーンの車両が武生新行として福井駅前から戻って来ました。

福井駅前から来た武生新行きは、いったん田原町方面のホームに停まります。この車両は元名古屋市営地下鉄の600形。

電車は進行方向を変えて反対向きに走り出します。

隣の線路に移ると、今度は武生新方面のホームに停まりました。市役所前に2回停まるという珍しい運転です。
入れ違いに、武生新方面からの田原町行きがやって来ました。こちらはさきほども見た元静岡の300形ですが、さきほどとは違い、広告塗装ではありませんでした。

この300形に乗って、まずは田原町へと向かうことにします。車内はボックスシートでした。ペンキ塗りのドアが懐かしさを感じさせます。

田原町駅

路面区間を走り、10分ほどで終点の田原町に到着。ここは路面電車サイズの停留所ではなく、ホームが高い普通鉄道サイズの駅でした。木造の上屋で味があります。

田原町は1面1線の駅。ここまでは複線の併用軌道でしたが、カーブして道路から逸れ、単線になって田原町駅に入ります。

ホームの左側に、わずかにえちぜん鉄道の電車が見えます。福井鉄道えちぜん鉄道の乗りかえは近く、便利です。

折り返しの電車が発車していきました。

すこしカーブしたホームの田原町駅

木造の上屋にホーロー看板や灰皿、古い書体の吊り下げ看板など、郷愁を感じさせる駅です。

次の列車がやって来ました。福井鉄道のオリジナル車、200形です。

この列車に乗って、終点の武生新へ向かいました。200形の車内も、クロスシートが並んでします。緑の壁に青いシートという色遣いは、かつての国鉄電車のよう。

福井の市街地の路面を走り、途中で専用軌道に変わると列車のスピードも上がります。単線なのでところどころ途中駅で対向列車とすれ違いながら武生新を目指します。

武生新

田原町から1時間ほどで、終点の武生新に到着。線路は3本ありますが、ちょうどそこに200形が3本並びました。200形は3本が在籍しているので、全編成がここに並んだことになります。

側線には古い車両が停まっていました。その向こうはJR北陸本線の線路です。

路面電車用の古い車両もありました。

武生新駅は、2010年に越前武生と改称されましたが、北陸新幹線に越前たけふ駅ができることになって駅名を召し上げられる形となり、2023年にたけふ新に再改称されました。武生と書いて「たけふ」と読みづらいからか、新幹線も再改称後の福井鉄道も、「たけふ」はひらがなになっています。

田原町行きの列車に乗って、福井方面へ戻ります。
武生新の隣の西武生駅には車庫があり、古い電気機関車や、これから投入される路面電車タイプの車両が停まっていました。

途中駅での行き違い。駅に入るポイントの上には、雪除けの丸い上屋が設置されています。

市内の路面区間に戻って来ました。

市役所前で下車。田原町へと走り去る列車を見送ります。

先ほどの列車が武生新行きとして戻って来ました。市役所前で本線から分かれ、福井駅前への支線に入ります。支線に入ったところで線路は単線になります。

道路の真ん中の福井駅前停留所に停車。

折り返して武生新に向けて出発。

路面電車のような停留所、併用軌道を、大型の電車が走る福井鉄道の風景は、他ではあまり見られないユニークなものでした。2006年、路面電車タイプの車両が大量に導入されたあとも、一部の大型車両が引き続き活躍をつづけたようですが、それもしばらくしてなくなり、現在では路面電車タイプの車両のみが運転されています。
路面電車車両での福井鉄道の旅も、いつか楽しんでみたいものです。


2006年1月