埼玉県行田市は、さきたま古墳や忍城(おしじょう)などの史跡や、古代の種が発芽したと言われる古代蓮など、歴史のロマンを感じさせる町です。最近は田んぼに稲で絵柄をつくる「田んぼアート」でも知られ、特に2025年は映画公開を記念し作られた「鬼滅の刃」の田んぼアートが大きな話題を呼びました。8月の休日、そんな行田を訪れてみました。
田んぼアートは行田タワーから
鬼滅の刃の田んぼアートは、行田タワーから見ることができます。というより、辺りにほかに高い建物や高い土地はないので、行田タワーからしか見ることができません。
行田タワーがあるのは、蓮の花が咲く公園、古代蓮の里の中の「古代蓮会館」という施設です。古代蓮の里はJR高崎線の行田駅からバスで20分ほどのアクセスですが、今回は車で訪れました。

駐車場に車を止めて、公園の中を古代蓮会館へ。タワーが目印になるので、広い公園内でも迷いません。



朝10時前の到着でしたが、タワーへのエレベーターの待ち時間は30分ほどでした。

エレベーターへ向かう廊下には、過去の田んぼアート作品の写真が飾られています。最初は素朴な図柄だったものが、だんだんと規模と質を上げ、ドラマや映画などとタイアップするようになったり、その成長の軌跡がわかり面白いです。行田の田んぼアートは2008年に始まりました。


エレベーターは、11人乗りが1基だけ。ふだんはそれでも十分なのでしょうが、鬼滅の刃人気で今年は多くの待ち時間が発生しているとか。30分ほど待って、ようやくエレベーターに乗れました。エレベーターは外が見えるタイプです。
展望台に上がり窓からのぞくと、迫力の田んぼアートが!


せっかくの田んぼアートですが、残念ながらどうしてもガラスの反射で展望台内の景色が映り込んでしまいます。映り込みなしで写真が撮れるよう、反射防止の黒い円盤が2か所に備え付けられていました。真ん中に穴が開いており、ここからカメラのレンズを覗かせて写真を撮ると、手前の景色が映りこまずに写真を撮ることができます。


田んぼアートのデザイン画も飾られていました。

展望台は周囲がガラス張りで、田んぼアートではない側の景色も楽しむことができます。


アートなしの田んぼですが、稲の緑が美しいです。

古代蓮の里の駐車場。駐車場の手前に、蓮の花壇があります。

そして公園の奥には蓮の葉が茂る池があります。



木道がある池は、鬼滅の刃の映画に出てきた風景に似ていて、子供たちも興味津々。

タワーからの風景を楽しんだら、エレベーターで1階に戻り、古代蓮会館の展示を見学。蓮についての展示や、武蔵野の雑木林の生き物の展示などもあり、なかなか面白かったです。

出入口ロビーには鬼滅の刃のポスターの展示があるほか、売店では鬼滅グッズや、埼玉名物十万石まんじゅうの鬼滅の刃モデルの販売もありました。あいにく売店を覗いたときは十万石まんじゅうは売り切れだったのですが、「いまお店からこちらに向かっています!」とのこと。10分ほど待ち、無事買うことができました。届いたまんじゅうは飛ぶように売れ、あっという間にまた売り切れになっていました。


古代蓮会館を出たら、目の前のうどん店でうどんの昼食を。

武蔵野らしい、肉汁うどんにしました。

うどん屋の隣には、行田名物B級グルメ、ゼリーフライの販売店。ゼリーフライとは、おからの入ったコロッケのようなもので、小判型だったことから銭フライと呼ばれ、それがなまってゼリーフライになったと言われています。ゼリーとは関係がありません。ゼリーを揚げても、溶けてしまうだけですし。


古代蓮の里で蓮を見る
暑さも厳しい昼下がりですが、蓮を見に行くことにします。
さきほどタワーからも見えたように、古代蓮の里にはいくつかの池があり、そこで蓮を間近にみることができます。あいにく訪れた8月の上旬では蓮の花のシーズンは終わっていましたが、いくつかの花が残っていました。ただ、蓮の花は朝に咲いて昼には閉じてしまうので、花のピークシーズンだったとしても、この時間帯では開いている花は期待できません。


花の落ちた蓮の花の花托(かたく)に、コオニヤンマが止まっていました。

こちらはモノサシトンボ。水辺は、トンボたちの楽園です。

行田蓮が茂る古代蓮池から、行田タワーを見上げます。

わずかに残っていた蓮の花。



ホタルの川というところがありました。シーズンになると、ホタルが飛ぶのでしょうか。

茂る蓮と行田タワー。行田らしい風景です。

ところどころに残る蓮の花が、緑一色の池の風景に彩りを加えてくれています。



池のほとりには芝生の広場や東屋、遊具などがあります。さすがに猛暑の昼時とあって遊具で遊んでいる子供はいませんでしたが、子供を連れて休日を過ごすにはよさそうな場所です。

長いローラー滑り台も。


駐車場に戻ってきました。駐車場の前の「世界の蓮園」ゾーンには、花がまだ多く残っていました。





生い茂る蓮のジャングルの中に続く小道を行けば、ちょっとした探検気分が味わえます。

駐車場前でふと見上げた木の葉に、琵琶のような顔のような、面白い模様の虫が。キマダラカメムシの幼虫です。

関東七名城のひとつ 忍城へ
田んぼアートと蓮の花を楽しんだあとは、関東七名城のひとつにも数えられる忍城(おしじょう)へ。古代蓮の里からは車で10分ほどです。
忍城は室町時代の1478年頃に築城された平城です。1590年、石田三成を大将とする豊臣軍は、忍城の近くに堤防を築き、利根川の水を流れ込ませ、忍城を水攻めにします。しかし忍城はこれに耐え、忍の浮城と呼ばれるようになったといいます。
本丸跡は郷土博物館になっています。

城跡の一角にある鐘楼。

忍城のシンボルともいえる御三階櫓。建物は再建されたもので比較的新しいです。郷土博物館に入ると、御三階櫓に上ることができます。

お城の隣ではビニール傘アートが。


東京からも近く、迫力の田んぼアートや蓮の花が楽しんる行田は、日帰りのおでかけ先にぴったりです。
2025年8月