そこに線路があるかぎり

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【神奈川県】<あの頃の鉄道風景> 小田原まで乗り入れていた登山電車 小田原~箱根湯本の三線軌条〔箱根登山鉄道〕(2006年)

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箱根への足として知られる小田急線は、終点の小田原から先、箱根湯本まで、箱根登山鉄道に直通運転をしています。この直通運転には面白いところがあって、小田急線は軌間(線路の幅)が狭軌と呼ばれる1067㎜、箱根登山鉄道標準軌と呼ばれる1435㎜とそれぞれ異なっているため、箱根登山線は小田原から箱根湯本までが1067㎜、箱根湯本から強羅までが1435㎜と、箱根湯本を境に軌間を変えることで対応していますが、これにより、箱根登山線は小田原~強羅の自社線内を1本の列車で直通することはできません。
しかし、2006年までは、小田原~箱根湯本を、2種類の軌間に対応する三線軌条としていたため、小田原と強羅を直通する列車が走っていました。今回はそのころの様子をご紹介します。

箱根登山鉄道三線軌

箱根登山鉄道は箱根の山を登る山岳鉄道です。急勾配を登るため強力なモーターを搭載していますが、開業当初はそのモーターが強力ゆえに大きかったため、当時の国鉄を始め日本で広く採用されていた1067㎜の軌間では車輪の間に搭載できず、少し幅の広い1435㎜の軌間が採用されたそうです。
箱根の観光開発とともに、比較的勾配がゆるやかな小田原~箱根湯本まで、小田急線が直通することになりましたが、小田急線は軌間が1067㎜のため、そのままでは直通運転ができません。そこで、2本のレールの片側を小田急と箱根登山の共用、もう片側は、小田急用と箱根登山用の2本のレールを敷いた、三線軌条とすることで、両社の車両が走行できるようにしました。

私が子供の頃の1980年代は、小田原発着の箱根登山車両は日中も運転されていた記憶がありますが、やがて日中はすべて小田急車の運用となり、箱根登山車が小田原に乗り入れるのは朝晩だけになっていましたが、2006年3月からは小田原~箱根湯本は終日小田急車での運用となり、箱根登山車の小田原乗り入れは終了しました。その後、箱根登山車の車庫のある入生田(いりうだ)~箱根湯本は三線軌条が残っていて、車庫への出入りの回送列車はいまでも三線軌条を使って運転されていますが、入生田~小田原は三線軌条のレール1本と取り外して1067㎜だけとなっているため、箱根登山車は乗り入れることができなくなっています。

非常用ドアコックを日常的に使っていた風祭駅

2006年2月下旬、小田原を訪れるとあいにくの大雨でした。
小田急線の小田原駅の箱根湯本寄りに、箱根登山線乗り場がありました。このホームはレールが1435㎜幅のため、箱根登山車しか発着できません。

箱根登山線の三線軌区間は、小田原と箱根湯本の間に、箱根板橋、風祭、入生田の3つの駅がありました。この日は、その中でももっとも個性的な、風祭駅に行ってみました。
箱根登山線は全線が単線ですが、全駅が交換可能になっています。小田原行きと強羅行きの箱根登山車の風祭駅での交換風景。風祭駅はホームが短いですが、小田急車の交換ができるように、ホームの数倍の長さの複線構造になっています。

小田原行きの箱根登山車を見送り、駅の反対側に行ってみると、小田急車の急行新宿行きがやってきました。

風祭駅に到着した小田急車。ホームが短く、6両編成の小田急車はほとんどがホームにかかりません。そのため小田急車は、箱根湯本寄りの1両のうちの1つのドアを非常用ドアコック(ドアを手動操作できるようにする非常用の装置)を日常的に操って、駅員さんがドアを手で開けることで対応していました。

行き違いの箱根湯本行きがやってきました。箱根湯本行きは、千代田線直通用につくられた9000系

次は箱根登山車同士の交換。風祭駅の駅舎は上り下りの線路の間にあって踏切に出る構造で、駅舎を出るとすぐに踏切遮断棒がありました。

ふたたび駅の小田原側へ。小田急車はこちら側にはみ出すので、ホームは全く見えなくなり、駅で交換しているとは思えない光景になります。
今見ると懐かしい車両ばかりが次々にやってきて交換していました。

三線軌条の問題のひとつは、駅のホームとの隙間が非常に大きくなってしまう場所があるということ。

対向式ホームの入生田駅

日を改めて、3月、ふたたび箱根の三線軌区間を訪れました。
留置線に停車する小田急車の横を通り、箱根登山車が小田原駅に入って来ます。

1435㎜軌間の箱根登山車専用ホームに到着。

風祭~入生田では梅の花がきれいに咲いていました。

小田原寄りから入生田駅を見ると、駅の向こう側は急な勾配になっていました。勾配を降りて小田原行きの列車がやってきました。

三線軌区間で唯一の対向式ホームの入生田駅。ここには箱根登山車の車庫があるため、2006年以降も箱根湯本~入生田の三線軌条は残されていますが、入生田駅構内では、小田原方面が発着するホームの側の三線軌条だけが残っています。

小田急の6両編成が停まれる長さのホーム。小型の箱根登山車にはずいぶん長く見えます。

小田原行きがやって来ました。

小田原の行先表示には小田原城がデザインされています。

ここでも、箱根登山車側の車両とホームの間に大きな隙間ができています。

小田急車両だと、ホームと車両の隙間は小さいです。

早川に沿って建つ箱根湯本駅

入生田から箱根湯本へと歩いて行きます。

箱根湯本駅が見えてきました。

当時の最古参のロマンスカー7000系LSE

箱根湯本駅は、早川に沿ったところにあります。

9000系の上り列車が発車していきます。

小田原からの箱根登山車がやってきました。

入れ違いにロマンスカーが発車。

今度は下りロマンスカーが到着。いまは長野電鉄で活躍している、10000形HiSEです。

三線軌条に行き交う車両たち、懐かしい箱根登山線の一時代の風景です。


2006年2月、3月