そこに線路があるかぎり

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【スイス】<あの頃の鉄道風景> ルガーノ湖畔を走るにこにこ顔の電車 ルガーノ鉄道の旅(2005年)

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ルガーノ湖の湖畔に開けたスイス南部の都市ルガーノは、スイス南部、ティチーノ州の最大都市です。ティチーノ州はイタリア語圏となっており、またルガーノからはスイスの首都ベルンよりイタリアの首都ミラノのほうが近いことっもあってか、スイスの中でもイタリア的な雰囲気が漂う町です。
そんな町を走る全長12.3㎞のFerrovie Luganesi ルガーノ鉄道(略称 FLP)には、にこにこ顔のユーモラスな顔つきの電車たちが活躍していました。2005年6月、ルガーノ鉄道の旅を楽しんだときのことをご紹介します。

湖を見下ろす始発駅ルガーノ

ルガーノの街は山が湖に落ち込む斜面の下に広がっており、スイス連邦鉄道(ドイツ語圏ではSBB、フランス語圏ではCFF、イタリア語圏ではFSSと呼ばれます)のルガーノ駅はその斜面の上にあります。駅と湖岸の市街地の間にはケーブルカーが運行されていて、鉄道の利用者の利便性が図られています。
SBBのルガーノ駅を出ると、駅前広場の向こう側の一段低くなったところにクリーム色とオレンジ色の電車が停まっているのが見えました。ここがFLPの乗り場です。 

FLPルガーノ駅はルガーノ湖を見下ろす、眺めのいい始発駅でした。前部に回って見えた電車の顔はにこにこ顔で、3両という短い編成とあいまって、非常にかわいらしい印象です。これから始まる小さな旅の期待に、にこにこ電車を前にしてこちらもにこにこした気分になります。

3両編成の電車は、前後が通常タイプ、中間車が低床タイプとなっていて、おそらくもともと2両編成だったところ、中間に低床タイプの新車を挟み、輸送力の増強とバリアフリー化を図ったのだと思われます。

ポンテトレーザ方面からルガーノ止まりの列車が入って来ました。これが折り返しポンテトレーザ行きになります。

それにしても、ただ曲線を描いただけで、電車の顔がこんなにかわいらしく見えるとは。大きなフロントガラスをメガネと見るか、ライトをつぶらな瞳と見るかで、顔の印象も変わります。

行先表示は、ルガーノ方がルガーノ、ポンテトレーザ方がポンテトレーザで固定のようです。

ルガーノ湖に背を向けて出発

発車時刻となり、ポンテトレーザまで21分の短い旅が始まりました。
ルガーノを出た電車は、すぐに右にカーブして湖に背を向けると、トンネルに入ります。このトンネルでFSSの線路をくぐりながら、丘の向こう側に抜けて行きます。
トンネルを出て、緑に囲まれた閑静な住宅街の中に飛び込んだ電車は、ちいさな駅に停まりながら、林や草原の中をのんびりと走ります。右手には小さな湖も見えました。

やがて前方には谷が迫ってきました。電車は林の中を右にカーブを切るとその谷に向かって斜面をゆっくりと下りて行きます。この谷間には、イタリアとスイスを結ぶ高速道路が走っていて、それに並行する形でルガーノ空港があります。
谷におりた電車は高速道路をまたぐと、空港の滑走路の端を横切り、今度は左にカーブして空港が見える小さな駅に停まりました。空港直結、というほどのつくりではありませんが、駅から徒歩で空港にアクセスできることには間違いなく、FLPルガーノの町からの空港アクセスも担っているのかも知れません。

その先も、緑の多い住宅地の中を走って行きます。

 

谷間の平地に広がる住宅街の中を郊外電車の風情で進んでいくと、やがて湖岸に出ました。ルガーノ湖です。 
ルガーノ駅をルガーノ湖に背を向ける形で出発したにもかかわらず、またルガーノ湖の湖岸に出るとは不思議ですが、イタリア北部=スイス南部の湖水地方の湖は氷河に削られて出来たものなので、細長く複雑な形をしており、ルガーノ湖もルガーノの街から大きく曲がって、またここに姿を現したのでした。 FLPの旅の最終章は、このルガーノ湖が車窓の友となります。

ルガーノ湖のほとりにある終着駅 ポンテトレーザ

ルガーノ湖畔を走ると、ほどなくして終点のポンテトレーザに到着しました。

ここはイタリアがすぐそこに迫っている国境の街です。

駅前からはこの先へ向かうバスが接続していました。 

駅を出て道路を渡ればすぐにルガノ湖畔です。この道を少し進むとイタリアに入ります。

駅構内は4本の線路が敷かれており、乗ってきた列車は一番手前に到着、奥の2線には2本の列車が休んでいました。

駅の階段を登り、ルガーノ方面を見たところ。左手に斜面、右手の建物の向こうはルガーノ湖と、平地が狭いところにあります。

ポンテトレーザからルガーノへ戻る

折り返しの列車に乗ってルガーノ戻ります。右手車窓にはルガーノ湖。

湖が見えるのはわずかな区間で、湖岸を離れて市街地に入ります。道路を斜めに横断して、道路の反対側へ。

ポンテトレーザの隣駅、カズラーノCaslanoの近くにはAlproseというチョコレートの工場があり、工場見学やチョコレートの購入ができます。

市街地をしばらく走ると列車は再びルガーノ湖の湖岸へ。さきほどの区間とは違い、道路越しではなく湖岸ギリギリのところを走ります。

ポンテトレーザ行きと交換。この当時のダイヤは、日中は平日は20分間隔、土休日は30分間隔というものでした。

放牧された牛も見えました。

空港を過ぎ、高速道路を渡り、高台に登って行きます。

ルガーノ駅に戻って来ました。この駅には3本の線路があります。左に停車する車両は残念ながら落書きによって汚されていました。

SBBルガーノ駅。ミラノ方面の列車が到着です。

都市郊外の地味な路線かと思いきや、住宅地、空港、湖、牛など、変化に富んだ車窓風景、そして何より行き交う電車のかわいらしい顔が楽しい、21分間のFLPの旅でした。なお、ウェブサイトを見たところ、ユニークなにこにこ顔の電車は2021年3月より新型の路面電車タイプの車両への置き換えが始まり、2022年3月に置き換え完了となって、姿を消してしまったようです。また、ルガーノ~ポンテトレーザの所要時間も25分に延びています。

Ferrovie Luganesi SA – FLP (flpsa.ch)

 

2005年6月

 

sokonisenro.net