【2024年1月10日 記事分割と加筆、編集】
いまや鉄道に乗るときに利用する乗車券としてすっかりメジャーになったモバイルICカード。そんなモバイルICカードでは、鉄道会社によってさまざまなポイントサービスが展開されていますが、JR東日本のJRE POINTは Suica、私鉄各社のポイント制度はPASMOの利用にもとづいてポイントが加算されるため、くまなく貯めるには、Suica、PASMOの両方を持っていなければなりません。SuicaとPASMOを別々に持つのは面倒だな、と思いましたが、実はSuicaとPASMOは同時に1台のスマホに入れることができ、改札口を通るときに SuicaかPASMO、どちらかを選んで使うことができます。そのやり方をご紹介したいと思います。
なお、モバイル端末で利用できるSuica、PASMOは、Android用が「モバイルSuica」「モバイルPASMO」、Apple用が 「Apple PayのSuica」「Apple PayのPASMO」と呼ばれていますが、この記事では特に記載のない限り、Android用、Apple用を総称して「モバイルSuica」「モバイルPASMO」と呼びます。
- モバイルIC乗車券はSuicaが先行
- 私鉄系ポイントサービスはPASMO利用だけ
- 1台の端末にモバイルSuicaとモバイルPASMOを両方入れて使い分け
- SuicaとPASMOを1台のスマホで使い分けるデメリットも
モバイルIC乗車券はSuicaが先行
携帯電話でSuicaが使えるようになったのは2006年のこと。2011年にはAndroidスマートフォンでの利用が可能になり、2016年からはiPhoneにも対応するようになって、スマートフォンでのSuica利用が大きく普及していきました。
いっぽう、モバイルPASMOについては、2020年3月にAndroid用、同年10月にApple用と、Suicaよりも遅れてのリリースとなっています。
2019年10月からSuicaで運賃を支払いJR東日本の鉄道を利用すると2%を還元するサービス(モバイルSuicaの場合)も始まったこともあって、モバイルPASMOがリリースされた時点では、すでにモバイルSuicaを利用する大きなメリットが確立されていました。そのためモバイルICはモバイルSuicaを入れているというユーザーも多いと思います。しかし、後発のPASMOにおいても、各鉄道会社により乗車ポイントの制度などが設定され、利用するメリットがだんだんと生まれてきました。
私鉄系ポイントサービスはPASMO利用だけ
私鉄系(地下鉄事業者も含む)のポイントサービスは、PASMO利用によって貯まります。いままでスマホにはモバイルSuicaを入れていたからと言って、私鉄に乗るときもモバイルSuicaを利用してたのでは、せっかくの私鉄系ポイントを取り損ねてしまいます。
(モバイルSuicaをJREカードなどのクレジットカードと連携していて、モバイルSuicaへのクレジットチャージによりクレジットカード利用ポイントを獲得する場合は、私鉄乗車でも間接的にJREポイントを貯めることができます)
1台の端末にモバイルSuicaとモバイルPASMOを両方入れて使い分け
所持しているスマートフォンの機種によっては、すでにモバイルSuicaが入っている端末にも、モバイルPASMOを入れることができます。私はスマートフォンにモバイルSuicaアプリを入れていましたが、私鉄系ポイントを獲得するためにモバイルPASMOアプリも入れることにしました。
モバイルSuicaとモバイルPASMOを両方入れられる機種は、下記リンクをご参照ください。
モバイルSuica対応端末を知りたい。 | モバイルSuica よくあるご質問:JR東日本 (mobilesuica.com)
「モバイルPASMO」と「モバイルSuica」の両方を利用できる機種を知りたい。 | モバイルPASMOサポート
優先利用する交通系ICカードを決める
1台の端末に2種類の交通系ICが入っているということは、その端末を自動改札にタッチしたときにどちらを使用するかを、あらかじめ決めておかなければなりません。
設定の仕方は、下記リンクをご参照ください。
1台の端末でSuicaとPASMOを使い分けたい。 | モバイルSuica よくあるご質問:JR東日本 (mobilesuica.com)
エクスプレスカード設定について知りたい。 | Suica Apple Pay よくあるご質問 (mobilesuica.com)
一台の端末でモバイルPASMO/モバイルSuicaを1枚ずつ登録しており、PASMOが優先的に使われ | モバイルPASMOサポート
Androidなら「メインカード」、Appleなら「エクスプレスカード」に設定された交通系ICが使われることになります。「エクスプレスカード」というとJR東海のクレジットカードが頭に浮かびますが、ここで言うエクスプレスカードはAppleの設定メニューの名前であり、JR東海のカードではありません。
優先ではないほうの交通系ICを使うには?
優先設定をすることで、自動改札を通過するとき、買い物などで電子マネー決済するときは、その交通系が使われることになります。そして、優先ではないほうの交通系ICを使うときは、都度設定を切り替えて利用することになるのですが、自動改札を通る前に立ち止まってスマホの画面を見ながら都度設定を切り替えるのはかなり面倒です。
iPhoneはダブルクリックとTouch ID/Face ID認証で切り替えできる
iPhoneでは機種によってはダブルクリックしてTouch ID/Face ID認証をするだけで利用するカードを切り替えることができ、この機能を使えば、1台のスマートフォンでSuicaとPASMOを使い分けしやすくなります。
設定の方法は、設定>ウォレットとApple Payを開き、「支払い用カード」にSuicaとPASMOを設定、「サイドボタンをダブルクリック」をON、「エクスプレスカード」に優先利用したい交通系IC、「メインカード」にサブ利用したい交通系ICを設定します
例)通常はSuicaを使い、ときどきPASMOを使いたい場合
「エクスプレスカード」にSuicaを設定
「メインカード」にPASMOを設定
この場合、なにも操作を行わず交通系ICを利用するとSuicaが利用されます。
PASMOを使いたいときはサイドボタンをダブルクリックし、Touch ID/Face IDで認証すると、その1回はPASMOが使われるようになります。
このときメインカードのPASMOが使われるのは操作をしたときの1回だけなので、自動改札を入るときにこの操作をしてPASMOで入場したら、下車するときもこの操作をしてから自動改札を出場しましょう。
メインカードについて知りたい。 | Suica Apple Pay よくあるご質問 (mobilesuica.com)
SuicaとPASMOを1台のスマホで使い分けるデメリットも
このようにして1台の端末でSuica/PASMOの使い分けができ、Suica で貯まるポイント、PASMOで貯まるポイントを漏れなく貯めることができるのは大きなメリットです。
一方、こんなデメリットもあるのでご注意を…
切り替え忘れで定期券があるのに別途運賃が…
モバイルICを使うときは無意識なことも多く、切り替えを忘れて意図しないほうの交通系ICを使ってしまった、というリスクは払拭することができません。定期券を持っていなければ、切り替え忘れてもポイントが貯まらなかったというくらいのデメリットしかありませんが、定期券を持っていると、切り替え忘れにより、定期券が使える区間なのに運賃が引かれてしまった、ということも。
優先利用するほうで定期券、サブ利用するほうで運賃支払して利用するという使い分けならば、万一切り替えを忘れても、定期券側のICで運賃が引かれるだけなので、貯めたかったポイントを逃すということはあるにしろ、お金の支出としては変わりませんが、サブ利用のほうに定期券が入っていたりすると、切り替えを忘れることで、せっかく定期券を持っている区間なのに運賃を支払ってしまった、ということも起きかねないため、サブ利用側には定期券は入れないほうが安心でしょう。
乗り換え改札や直通運転が使えない
例えば、品川駅でのJRと京急のように乗り換え改札が設けられている場合、乗り換え改札通過時には1種類のICしか使えないため、JRはSuica、京急はPASMOという使い方はできません。SuicaでJRに乗ってきたら、乗り換え改札もSuicaで通り、必然的に京急もSuicaで乗らなければなりません。
もし乗り換え改札のある駅で、JRはSuica、私鉄はPASMOと使い分けたい場合は、乗り換え改札ではなく、一度JRの改札を出て、私鉄の改札から入りなおすという動きが必要になりますが、乗り換え改札よりはだいぶ利便性が低下します。
また、同様に、乗り換えなしで直通運転がされている場合も注意が必要です。例えばJR常磐線から直通の東京メトロ千代田線に乗って行く場合、ICを分けるとすると、境界駅の北千住でいったんSuicaでJRの改札を出て、PASMOで入りなおす必要があり、直通運転のメリットがまったく生かされないことになってしまいます。
このように、1台の端末でSuica、PASMOを併用する場合は、切り替え忘れのリスクや利便性の低下もあるということを充分に理解したうえで利用しなければなりません。
東京の私鉄、地下鉄各社のポイントサービスについてのお話は、記事を分割しました。
また、オートチャージのためのクレジットカード選びについては、下記の記事をご参照ください。
2023年1月