そこに線路があるかぎり

鉄道旅も、そのほかの旅も。子供と出かけた休日のこと、まち歩き、山歩き、グルメ、温泉、観光情報。国内・海外 紀行ブログ。

【岐阜県】新型車両に置き換え間近のキハ85系に乗って新穂高温泉へ 特急ひだ7号の旅 〔名古屋~高山~富山/JR東海道本線・高山本線〕(2023年)

スポンサーリンク

北アルプスの麓に広がる奥飛騨温泉郷は、源泉数100以上という豊富なお湯に恵まれた温泉地です。数多くの露天風呂があることでも知られており、ひとつの温泉地の中の露天風呂の数としては日本一とも言われる、露天風呂天国という魅力もあります。
雪山を眺めながらゆっくり温泉を楽しみたいと思い、2023年1月、奥飛騨温泉郷の1つ、新穂高温泉に出かけてみました。

奥飛騨温泉郷へのアクセス

北アルプスの西、岐阜県側の麓に広がる奥飛騨温泉郷は、平湯温泉福地温泉新平湯温泉栃尾温泉新穂高温泉の5つの温泉地からなっています。山の眺めと豊富な湯量が魅力の温泉地で、長野県の松本と岐阜県の高山のほぼ中間地点あたりにあるので、意外と首都圏からのアクセスも良いです。

首都圏から訪れる場合は長野県の松本経由が最短ルートですが、その他にも名古屋または富山を通って高山を経由して行くルートもあります。

東京から新穂高温泉 

1.松本経由のルート

<鉄道・バス>

中央本線 特急あずさ号  新宿~松本      約2時間40分
バス 高山バスセンター行  松本~平湯温泉    約1時間40分
または 高速バス 新宿-高山線 新宿~平湯温泉   約4時間40分

バス 新穂高ロープウェイ行 平湯温泉奥飛騨温泉内各温泉 約10分~30分
※ 夏季と年末年始は松本~新穂高ロープウェイの直通バスあり。

<車>

中央自動車道~長野自動車道利用 松本IC経由  約280㎞ 約4時間15分

2.高山経由のルート

<鉄道・バス>

東海道新幹線 のぞみ 東京~名古屋    約1時間40分
高山本線 特急ひだ号 名古屋~高山    約2時間30分
または
北陸新幹線 かがやき 東京~富山 約2時間10分
高山本線 特急ひだ号 富山~高山 約1時間30分

バス 新穂高ロープウェイ行 
高山バスセンター~奥飛騨温泉内各温泉 約1時間~1時間30分

このように、何種類もある東京と奥飛騨温泉郷のルートですが、今回は名古屋経由のルートで行くことにしました。子供が新幹線に乗りたがっていること、そして特急ひだの車両が間もなく新型に置き換わってしまうため、古い車両に乗っておきたかったことがその理由です。

特急ひだ号に使われるキハ85系

特急ひだ号は、高山本線を走る特急列車です。主な運転区間は名古屋~高山ですが、名古屋から高山を通って富山まで行く列車や、名古屋ではなく大阪から高山へ行く列車などもあります。

<特急ひだ 運転区間>

名古屋~高山: 1日5往復(臨時便は含まず)
名古屋~高山~富山:1日4往復
名古屋~高山~飛騨古川:1日1往復
大阪~高山 : 1日1往復

このひだ号に使われているのがキハ85系という車両です。前面、側面ともに大きな窓を備えていて景色を存分に堪能できるというのが魅力で、「ワイドビュー車両」とも呼ばれるこのキハ85系は、それまで使っていた古い車両の置き換えのために1989年から運転を始めました。JR東海発足後初めて開発された特急車両であり、ステンレス車体、大きな窓、窓回りの濃い茶色の塗装、そしてオレンジの帯という、その後に登場した特急ふじかわ等に使われる373系や、特急しなの等に使われる383系にも受け継がれた、JR東海の標準的な仕様を確立した車両です。かつては「ワイドビューひだ」という愛称(列車名としては、かっこ書きでワイドビューが付される「(ワイドビュー)ひだ」)でも呼ばれていましたが、2022年以降、JR東海としてはワイドビューという呼び名を使うのをやめてしまいました。

もともとワイドビューと呼ばれ、展望を売りにしていたキハ85型は、先頭車両の最前部の座席から、運転台越しに前方の景色を楽しめるようになっているほか、座席は通路から一段高くなったところに配置され、横の見晴らしもよくなっています。ディーゼルエンジンも、アメリカのカミンズ社製の強力なエンジンを搭載しており、キハ85系の投入によって、特急ひだは、居住性、走りの両面で、従来の旧式の車両から大きくサービス改善されました。

登場から30年が過ぎた2022年、後継のHC85系が登場したことにより、2023年3月をもってキハ85系は特急ひだの定期運用から退くことが決定。高山本線で日常的にキハ85系が活躍するのも、あとわずかとなりました。

特急ひだ号に使われるキハ85系ディーゼル特急車両

特急ひだ7号に乗って高山へ

7両編成のうち自由席は2両

東京から新幹線で名古屋に行き、名古屋からは特急ひだ7号富山行きに乗車。ひだ7号は通常は7両編成で、グリーン車が1両半、指定席が3両半、自由席が2両という構成になっています。多客期には車両が増結されることもあります。
私たちは自由席の利用としました。新幹線から乗り換え、在来線の11番線ホームに行くと、ちょうど列車のドアが開き、乗車が開始されたところでした。自由席車のドアの前にも乗車する人の列が続いており、あわててその後ろに並びます。
列は非常に進みが遅く、どういうことかと思っていると、デッキから客室に入ったところにある荷物置き場や、座席の上の棚に大型のスーツケースを置く人が多く、荷物の収納に手間取って通路をなかなか進めないという状況になっているようでした。時間はかかりましたが車内に入るとまだまだ座席は空いており、無事座ることができました。

富山行と高山行が併結

ひだ7号は富山行きと案内されていますが、富山まで行くのは前の3両だけで、後ろ4両は途中の高山止まりです。自由席の場合、1号車が高山止まり、9号車が富山まで行く車両なので、高山より先まで乗る場合は乗車車両に気をつけなければなりません。
7両編成ですが、号車は1号車から4号車と、8号車から10号車という割り振りになっていて、5,6,7号車が欠番になっています。これは多客期に増結した場合、その増結車両に5,6,7号車の号車番号を割り振るようになっているためです。

ホームの発車案内は富山行きになっていますが、1号車から4号車の行先表示は高山行き。

ひだが停車する向かいのホームには、長野行きの特急しなのが停車しています。

富山と高山は、遠目には一瞬同じような字の形に見えます。

中間に連結された先頭車。高山ではここから切り離され、富山行きと高山どまりに分かれます。

外国人観光客の姿が多い特急ひだ

発車が近づくにつれ乗客が増え、発車時点では1号車の自由席はほぼ満席になりました。車内を見回すと半数以上が外国人観光客のようです。飛騨高山が外国人に人気の観光地であることは知っていましたが、まさか特急ひだがここまで外国人で賑わっているとは思いませんでした。

岐阜までの短い区間で前面展望が楽しめる1号車自由席

名古屋を発車した時点で、1号車は先頭になっています。最前列の座席に座れば、座ったままで前面展望が思う存分楽しめます。最前列の座席に座れなったとしても、通路から前方の景色を見ることができます。

名古屋を出て、クネクネとポイントを渡って行きます。前方には留置されている普通列車用の車両が見えました。

多くのポイントを通って名古屋駅を出ると、スピードを上げて東海道本線を走って行きます。

さまざまな列車とすれちがいます。

尾張一宮の手前でひだ7号は停まってしまいました。この先の踏切で障害があり、列車が遅れているのだとか。この先も、走ったり停まったりを繰り返し、ゆっくりと進んでいきます。
名鉄と並走する区間では、スイスイと走って行く名鉄の電車がうらやましく見えました。

ようやく障害区間を通り過ぎ、快調に走り出しました。すでに20分以上の遅れとなってしまっています。

木曽川を渡り、岐阜県に入ります。

岐阜駅に着く手前では、右側の山の上に稲葉山城を見ることができます。

高架駅の岐阜に到着。3つあるホームのまんなか、高山本線の乗り場に停車します。

岐阜からは進行方向が逆に

岐阜では短い停車ののち、進行方向が逆向きになって走り始めました。高山本線は、岐阜から名古屋方面に戻るような形で分岐しているので、名古屋発着の特急ひだは岐阜で方向転換します。名古屋から岐阜は20分程度の短い乗車時間なので、名古屋で乗車した時点で、座席の向きは後ろ向き、つまり、岐阜からの進行方向の向きにセットされていました。
いままでは前面展望が楽しめていましたが、ここからは後方展望になります。

岐阜を出たあたりで、名古屋で買った駅弁を食べることにします。今日のランチはとりめし。

岐阜からは単線になります。各務ヶ原で名古屋行きのひだと行き違い。乗車しているひだ7号は20分以上遅れていますが、単線だと行き違いの列車にも遅れが生じることとなり、遅れの影響がどんどん広がってしまいます。

国宝犬山城日本ライン みどころの多い車窓

鵜沼の手前あたりで、右の車窓に国宝犬山城が見えます。小さなお城ですが、かつての天守がそのまま残る12か所のお城、残存12天守の1つ。

鵜沼を出ると岐阜の手前で渡った木曽川が右側に寄り添ってきます。このあたりは岩が連なる景観がドイツのライン川に似ているということで、日本ラインと呼ばれています。

山肌に接近する区間では、落石から線路を守る落石覆いが設置されていました。

岐阜から20分ほどで、岐阜の次の停車駅、美濃太田に到着。ここでは検測車両、通称「ドクター東海」に出会いました。新幹線の、あの有名なドクターイエローの在来線版とも言うべきドクター東海は、なかなか出会う事のない珍しい車両です。

美濃太田には高山本線のほか、多治見へ向かうJR太多(たいた)線と、城下町と郡上おどりで有名な郡上八幡を経由して北濃(ほくのう)までを結ぶ長良川鉄道が乗り入れていて、鉄道の要衝となっています。駅名は美濃太田ですが、行政としては美濃加茂市という名前で、美濃太田美濃加茂市の市役所もある中心地です。

美濃太田でも乗車してくるお客さんが多く、1号車自由席は満席となり、デッキでの立客も出ました。

美濃太田からは山深い区間

美濃太田を過ぎると山がだんだん深くなっていきます。いくつかの駅を通過すると、ホームがなく旅客の乗降はできませんが、列車の行き違いのため線路が2本になっている、信号場という施設がありました。この信号場は飛水峡信号場といい、少し先にはその名の由来となった飛水峡が右の車窓に広がります。

このあたりの川は、さきほど見えていた木曽川から分かれた飛騨川という川です。川沿いの谷を、落石覆いやトンネルをくぐりながら走って行きます。

時々少し開けた土地となり家々が建ち並ぶのを見ることができますが、すぐにまた山の中に入ってしまいます。

高山本線は鉄橋で何度も飛騨川を渡るので、右側でも左側でも、車窓から飛騨川の眺めを楽しむことができます。

下油井で上り普通列車とすれ違い。

山の中の小さな駅にたたずむローカル列車。

飛騨川に沿って走ります。

白壁の蔵が美しい里の風景。

飛騨金山付近ではお茶畑が見えました。金山はお茶の産地です。

カーブに身をくねらせて走る特急ひだ7号。

美濃太田を出てからずいぶんと長いこと走っているな、と思って改めて時刻表を確認すると、美濃太田から次の下呂まで、およそ1時間にわたって停車駅がありません。下呂から次の高山までも40分ほどかかります。

飛騨金山あたりから下呂あたりまでの飛騨川は、奇岩が連なる「中山七里」という景勝地。車窓からもダイナミックな景観を楽しむことができます。

下呂の一つ手前の駅、焼石(やけいし)で上り名古屋行きひだと行き違い。

1時間ぶりの停車駅は日本三名泉に数えられる下呂

美濃太田を出てひたすら山の中を走り続けたひだ7号は、1時間ぶりの停車駅、下呂に到着しました。ここは、有馬(兵庫県)、草津群馬県)と共に、日本三名泉に数えられる温泉地。たくさんの乗客が降りて行きましたが、下呂に泊ってこれから高山に向かうと思われるたくさんの乗客が乗っても来ました。引き続き1号車自由席はほぼ満席の状態が続きます。

跨線橋やホームの屋根があり、主要駅としての風格がある下呂を後にします。

下呂を出ると間もなく飛騨川を渡ります。川岸には温泉旅館が建ち並んでいるのが見えます。

下呂を過ぎると、ところどころに雪が残っているのが見えるようになりました。

引き続き、川と山の景色の中を走って行きます。

飛騨小坂ですれ違った上り名古屋行きひだ号は、新型車両HC85系での運転でした。

美しい山と川の風景の中を、高山目指して走って行きます。

谷がだんだんと狭まって行き、長いトンネルを抜けると高山盆地に入ります。ここで分水嶺を超え、日本海へと流れる宮川の流域に入りました。宮川はやがて神通川と合流し、富山湾に注ぎます。

高山の1つ手前の駅、飛騨一ノ宮では樹齢1100年の桜の名木、臥龍桜を車窓から見ることができます。以前ゴールデンウィークにここを通った時、きれいな花をつけていたことを思い出しました。

飛騨一ノ宮を通過し、高山に向けてラストスパート。

高山に到着 駅前のバスターミナルからバスに乗る

下呂から40分ほど走り続け、ひだ7号は高山に到着しました。遅れは少々回復しましたが、それでも所定より20分近い延着となりました。

右がいま乗ってきたひだ7号。ここで後ろ4両を切り離し、身軽になって富山に向かいます。真ん中が名古屋行き上りひだ、そして左側が留置線で休む新型HC85系。

高山には多くの留置線があり、高山本線の拠点駅であることを感じさせられます。

この後は、バスに乗り換えて新穂高温泉へ。1泊して明日高山に戻り、ふたたび「ひだ7号」に乗って富山に向かいます。

ミニケーブルカーに乗って行く巨大露天風呂が魅力の新穂高温泉「山のホテル」、そして、富山行き「ひだ7号」に乗る前に食べたご当地グルメ高山ラーメンの様子はこちらの記事で。

 

sokonisenro.net

ふたたびひだ7号に乗って富山へ

翌日、新穂高温泉からバスで高山に戻り、昼食に高山ラーメンを堪能したら、歩いて高山駅へ。10分くらいで駅に着くことができました。
近代的な高山駅舎。

駅のすぐ横に昨日乗車したバスセンター。

高山駅跨線橋から富山方面を見たところ。駅周辺には高い建物もありますが、行く手にはすぐ山が迫っています。

駅の横の留置線ではキハ85系の4両編成と、普通列車用のキハ25系が休んでいます。

これから乗るのはひだ7号富山行き。昨日名古屋から乗った列車の、高山から先の区間に乗車します。

留置線に停まる新型HC85系。

1番線にひだ7号が入って来ました。

到着すると、高山止まりの車両の切り離し作業が行われます。

8,9,10号車の3両が富山行き。先頭10号車がグリーン車、9号車が自由席、8号車が指定席です。今日は指定席を利用します。

切り離された高山止まりの編成がだんだんと小さくなっていき、高山を出発します。

難読駅の上枝(ほずえ)で上り特急ひだと行き違い。

今日も車内はほぼ満席。客層が外国人観光客が多いというのも昨日と同じです。

最初の停車駅、飛騨古川を発車したところ。飛騨古川は、高山と並んで古い町並みが人気の観光地ですが、映画「君の名は」の舞台になったことでも有名になりました。

だんだんと盆地が尽き、山に入って行きます。

ときどきダムになる川に沿って谷間を進む景色が繰り返されるところは昨日乗った区間と同じですが、雪の量はこちらの方が多いようです。

駅のポイントの上に雪除けのスノーシェードが設置されていることから、雪の多いところであることがわかる打保(うつぼ)で、HC85系の上りひだと行き違いをします。

雪、山、川の景色が美しいです。

谷が狭くなり地形の険しい区間を抜けるとすこし谷が広がり、猪谷(いのたに)に到着。

ここはJR東海JR西日本の境界駅。ここから先はJR西日本になります。

かつてはここから、鉱山の町、神岡に至る神岡鉄道が出ていましたが、廃止されてしまいました。猪谷駅前に見えた、このあたりには似つかわしくない巨大な集合住宅のような建物は、鉱山で働く人たちが住むアパートだったのかもしれません。

猪谷からはだんだんと谷を抜け、富山平野に入りました。

雪をかぶる山々を見ながら、平野の中を快調に走って行きます。

新幹線の高架に並んで神通川の鉄橋を渡ると、終点の富山に到着します。

北陸新幹線の開業とともに高架化された富山駅に到着。2日間に分けてですが、ひだ7号の名古屋から富山の全区間の旅を楽しみました。

まったく古さを感じさせず、まだまだ活躍できそうなキハ85系が引退するとは信じられない思いがありますが、引退前のタイミングで特急ひだの旅が楽しめたのは良かったです。大きな露天風呂から北アルプスや夜の星空を眺め、落ち着いた山岳リゾートでゆっくり過ごした週末は、キハ85系ひだ号の旅とともに、冬の良き思い出となりました。

 

2023年1月