カザフスタン西部の港町、アクタウから南東に60㎞ほどのところに、クルック(Kuryk)という小さな町があります。三角形に飛び出した半島の付け根に位置し、海岸線もこの付近でほぼ90度に曲がっているので波の影響を受けにくいのか、石油輸出の拠点としての整備が進められることが検討されていて、ここからカスピ海の対岸のアゼルバイジャンまでパイプラインを引いたり、タンカーのシャトル便を運航する計画があります。
2017年11月から12月にかけて、仕事でアクタウに滞在した際、このクルックにも何度か訪れました。
おだやかな時間が流れる町
11月下旬のクルックの夜明けは遅く、朝焼けが東の空を赤く染めたのは朝8時すぎのこと。湾になっている海は波もおだやかで、時間によって、場所によってその色合いが違い、風景に変化をつけています。
白壁に青い屋根が美しい教会と思しき建物が、青空を背景に、美しい青と白の風景を作り出しています。
11月下旬とはいえ、もうすっかり冬の空気のクルックの町。高い建物もなく、空が広いです。
街は賑やかさはないものの、下校する子供の姿や道端で野菜を売る露店など、人々の生活感が感じられ、のんびりとした時間が流れていました。


アクタウとクルックを結ぶ道路から見えるのは、どこまでも続く乾いた大地。
カスピ海は周りを陸に囲まれた内陸海で海面標高はマイナス28m、つまり外海よりも28mも低いところにあり、流出河川がないにもかかわらず、ロシアから3600㎞もの距離を流れてくる大河、ヴォルガ川を始めとする多くの流入河川があるのですが、それでも溢れることなく水を湛えていられるのは、この乾燥があってのことなのでしょう。


雪原のラクダと荒野の牛
アクタウとクルックの間を移動する車の窓からは、ときどき牛や馬、ラクダなどの群れを見ることができました。動物の近くに人の姿が見えることもあったので、放牧か遊牧なのだと思いますが、ずっと荒野が続く変化の少ない車窓にあって、動物が見えるのはいいアクセントになります。
夜の間に雪が降った朝。車窓から見る景色は一面の銀世界に変わっていましたが、動物たちは変わらず群れを成して枯草を食べていました。
よく見ると背中に2つのコブがあります。ラクダです。
ラクダは灼熱の砂漠にいるイメージこそあれ、極寒の雪の中にいるのは意外な感じがします。
ヒトコブラクダが西アジア原産なのに対し、フタコブラクダは中央アジア原産とのこと。ヒトコブラクダとフタコブラクダの数は90%:10%くらいだそうなので、フタコブラクダのほうが遭遇機会が少ないはずで、まして雪との組み合わせが見られたのはラッキーなことなのかもしれません。
おだやかな湾の向こうにクルックの町。
雪は翌日には消えてしまい、また枯れ色の景色に戻ったクルックの町外れで、牛が枯草を食んでいました。




エア・アスタナの機内安全ビデオ
この時のカザフスタン訪問には、エア・アスタナという航空会社を利用しました。アスタナはカザフスタンの首都で、アスタナとはカザフ語で「首都」の意味なのだそうです。1997年にアルマティから遷都された比較的歴史の浅い首都です。2019年にはカザフの初代大統領の名前を取って「ヌルスルタン」に改称されましたが、エア・アスタナの名はそのままで、現在でもエア・アスタナです。
このエア・アスタナの機内安全ビデオは、ダンサーが影絵のように文字や物を表現する「シャドウ・パフォーマンス」でつくられており、次はどういう形になるんだろう、と見入ってしまう、秀逸なものでした。Air Astana によりYoutubeで「air astana safety demonstration video」として公開されているので、検索して視聴してみることをおすすめします。


黒川紀章氏デザインの空港ターミナル
アスタナ(現ヌルスルタン。訪問当時はアスタナだったので、以後もアスタナと記載します)の都市計画はコンペにより選ばれた黒川紀章氏のデザインにより建設されていて、近代的で美しい街づくりが進んでいると聞き、ぜひ街並みを見てみたかったのですが、乗り継ぎ時間がそれほど長くなかったため町に出ることは叶いませんでした。ですが、アスタナ国際空港のターミナルビルも黒川氏のデザインなのだそう。
せっかくなのでターミナルビルの外観も見てみようと外に出ると、そこはマイナス17度の世界。アスタナはモンゴルのウランバートルと並んで、世界で最も寒い首都だと言われているとか。
それほど大きな空港ターミナルではありませんが、とても洗練された良い建築でした。




2017年11月~12月
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