そこに線路があるかぎり

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新幹線の車内で足湯に浸かり 湯上りは畳の座席で駅弁食べくらべ 秋の山形新幹線 とれいゆつばさ号の旅 【奥羽本線/福島県・山形県】(2018年)

車内に足湯があることで知られる山形新幹線の「とれいゆつばさ」。新幹線の車内で足湯に入るのは、この列車でしかできない唯一無二の体験です。湯上りにはラウンジで、お酒やアイスを軽く楽しんだ後は、畳敷きのゆったりとした座席に座って、ここに来るまでに買い集めた地方色豊かな駅弁の昼食。2018年9月、黄金色の稲穂が揺れる秋の山形の美しい景色を眺めながら、足湯と味覚を満喫した2時間14分の旅をご紹介します。

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新庄駅に停車する「とれいゆつばさ」

とれいゆつばさについて

とれいゆつばさは、福島県の福島駅と山形県新庄駅の間148.6㎞を1日1往復、土日祝日を中心とした運転日に走る観光向けの臨時列車です。なんといっても車内に足湯があることで知られていますが、車内のバーカウンターで沿線のお酒や食べ物を買ってラウンジで楽しむことができたり、畳敷きの座面に座布団があり大きなテーブルが備わるゆったりとした客席、天井や座席背板にフルーツをモチーフとしたレリーフなど、車内設備やインテリアも優れた、乗って楽しい観光列車です。

秋田新幹線の車両を改装 山形新幹線区間を走る在来線特急

とれいゆつばさの車両は、もともとは秋田新幹線「こまち」として使用されていたE3系車両。現在のE6系こまちに置き換えられ余剰となったE3系の1編成を改装して誕生しました。元秋田新幹線とはいえ、走る区間山形新幹線の福島、新庄間ですが、山形新幹線とは在来線の奥羽本線を新幹線が直通できるように線路幅を広く改造した区間と福島以南の東北新幹線を直通する列車のことを言うので、東北新幹線に直通しないとれいゆつばさは、在来線特急という扱いになるそうです。

とれいゆつばさ 列車名の由来

列車名の由来は「トレイン」と「ソレイユ」(フランス語で太陽)を合わせた造語です。JR東日本のウェブサイトによれば、「食(太陽の恵みによる様々な食材)」「温泉」「歴史・文化」「自然」を温泉街のように散策しながら列車の旅を楽しむ、というテーマが凝縮された列車であるという想いを込め命名しました、とのこと。特に明記されてはいませんが、きっと「とれいゆ」の「ゆ」は、「湯」にもかけているのではないかと思います。

とれいゆつばさは全車指定席 乗車には事前に予約が必要

とれいゆつばさは全席指定で自由席はないので、乗車するにはあらかじめ予約が必要です。一般販売される指定券特急券は他のJR列車と同様、乗車日の1か月前からの発売で、みどりの窓口、旅行会社窓口、えきねっと(インターネット予約)などで購入することができます。もちろん、指定席特急券の他に有効な乗車券も必要です。
列車の編成は11号車から16号車の6両で、各車両の設備と扱いは以下のとおりです。

↑ 新庄寄り
16号車 足湯車両 足湯入浴時のみ利用可
15号車 湯上りラウンジ バーカウンター、ラウンジ(フリースペース)
14号車 42席 お座敷指定席(びゅう旅行商品として販売)
13号車 36席 お座敷指定席(指定席特急券として一般販売)
12号車 42席 お座敷指定席(指定席特急券として一般販売)
11号車 23席 普通車指定席(指定席特急券として一般販売)
↓ 福島寄り

6両のうち、下り列車のときの前2両、16号車と15号車は足湯とフリースペースなので、予約できる座席はありません。予約できる座席があるのは14号車から11号車の4両分 計143席です。
このうち11号車23席は横4列のリクライニングシートですが、もともとグリーン車だった座席をそのまま普通車として使用しているので、座り心地もよさそう。普通車の料金でグリーン車のシートが利用できるという、乗りドク車両になっています。
12号車から14号車の計120席は「お座敷指定席」で、畳のシートに座布団がある4人用と2人用の向かい合わせのボックス席があり、各ボックスにはおおきなテーブルが備えられています。お座敷といっても靴を脱ぐ必要はなく、あくまでボックス席の座面が畳になっているという形です。ボックス席なのでリクライニングはしませんが、畳の上でくつろぐゆったりとした気分が味わえる、とれいゆつばさならではの座席です。
お座敷指定席のうち14号車の42席は旅行商品として乗車+飲み物や食べ物がセットになったパッケージで販売されるので、一般の指定席として指定席特急券を買うことができるのは、11号車から13号車の3両分、101席です。

とれいゆつばさの指定席特急券東北新幹線との通しで購入できる

とれいゆつばさの指定席特急券は、東北新幹線区間と同時に購入すれば、特急料金は東北新幹線との通し料金で計算されます。例えば、東京~福島の東北新幹線の指定席特急券は4270円、福島~新庄の山形新幹線の指定席特急券は2390円、合わせて6660円ですが、通しで買えば5950円になり、同時に購入したほうが少々お安くなります。別々に買ったきっぷをあとから通し料金で計算することはできませんので、これはあくまで東北新幹線とれいゆつばさの特急券を同時に買った場合のみの適用です。

とれいゆつばさは 一部区間だけの利用も可能

一般の指定席として販売されている席は、要は普通の指定席ですので、各停車駅間で好きなように利用することができます。とれいゆつばさの停車駅は、米沢や山形といった都市、赤湯やかみのやま温泉などの温泉、将棋の駒で有名な天童、さくらんぼで有名なさくらんぼ東根など、魅力的な観光地がたくさんあります。自分の旅の予定にあわせて、とれいゆつばさに一部区間だけ乗ってみるということも(指定席さえ空いていれば)可能なので、旅程にとれいゆ乗車を組み込むことで、さらに楽しい旅になるでしょう。

とれいゆつばさの始発駅、福島までは東北新幹線

東京駅から乗車した東北新幹線やまびこ205号仙台行きは、通過駅がひとつもない各駅停車の列車ですが、E5系E6系が連結された17両の長い編成。見た目には東北新幹線の花形列車、はやぶさ+こまちと何ら変わりがないので、子供のテンションも上がります。各駅停車なので、途中で後から来る足の速い列車に道を譲るため、3分とか6分の停車時間がある駅もあり、その時間を利用して売店に駅弁を買いに行ったり、はやぶさ型とこまち型の連結部分を見に行ったり、各駅停車ならではの楽しみ方が。はやぶさ型とこまち型の間は車内では通り抜けができませんが、どちらの編成にも自由席があるので、長い停車時間の駅でホームを歩いてもう片方の編成に乗り移って、はやぶさとこまちの両方の車両の乗り比べなどもできてしまいます。(片方の編成の自由席からもう片方の編成の自由席へは、間に指定席車両を挟むため、比較的長い距離を歩く必要があり、充分な停車時間がある駅での移動がおすすめです)

やまびこの車内では、朝食に東京駅で買った鮭はらこ弁当を。有名な仙台駅弁のはらこめしかと思ったら、どうやらこれはそれとは違い、東京近辺で売られているものらしいです。仙台の駅弁屋さんと言えば「伯養軒」と「こばやし」の2大巨頭が知られますが、長く人気のある「鮭はらこめし」は伯養軒という会社が作っているもので、さらに最近はこばやしも「銀鮭のはらこめし」を販売しているそう。各「はらこめし」を食べくらべてみるのも楽しそうです。

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とれいゆつばさは福島駅在来線ホームから出発

やまびこを福島で降り、とれいゆつばさに乗りかえです。山形新幹線東北新幹線と同じ新幹線ホームに発着しますが、とれいゆつばさは在来線の「山形線奥羽本線)」のホームから出発します。山形新幹線のホームは上下線あわせて1本しかないため臨時列車が発着する余裕が少ないことと、前述のようにとれいゆつばさは新幹線ではなく在来線特急の扱いであることなどから、在来線ホームの発着になっているのかと思われます。乗り換えの時は乗り場に注意が必要です。

畳や木のぬくもりを感じるお座敷指定席

今回はお座敷指定席車両を予約しました。車内に入ると、赤い背もたれと畳の座面が印象的なシート、大きなテーブルや天井のレリーフの木のぬくもりに、なんとも言えない優雅さと落ち着きを感じます。畳敷きのシート座面には座布団が置いてあり、お座敷でテーブルを囲んでくつろぎ、団らんを楽しみながら列車の旅ができます。

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乗車したらまず足湯券を買いに

とれいゆつばさに乗車したら、まずやるべきことは足湯利用券を買うことです。足湯は定員制で足湯の利用には予約が必要ですが、事前に予約ができるのは「びゅう旅行商品」として乗車する場合だけ。そして当日空きがある場合に限り、車内で足湯利用券が発売されます。当日の車内購入の場合の料金はタオルがついて1人450円、1回の利用時間は約15分です。足湯利用券は15号車で発売されていて、区切られた各時間ごとに定員に達すれば、その枠は売り切れとなります。
私たちが利用した日は当日予約枠も充分に空きがあり、福島駅で乗車してすぐに買いに行ったところ、どの時間帯にも空きがあり、好きな時間帯を選ぶことができました。
なお、足湯利用券を持っていないと足湯のある16号車に入れないため、利用券はないけど足湯だけ見学したい、ということは残念ながらできません。
足湯のお湯は温泉ではなくただのお湯で、殺菌ろ過して循環式で供されます。衛生的には問題ないですが、なんとなく、気分的に、できるだけ早い時間に入っておきたい気も・・・。

福島から米沢へ 難所、板谷峠を越える

福島を出発し市街地を抜けると、列車は大きくカーブしながら山肌にはりつき、福島盆地の田園や果樹園を見下ろしながら、山の中に入って行きます。ここから奥羽山脈を越えて米沢を目指しますが、ここは板谷峠と呼ばれる難所です。昔は蒸気機関車が牽く列車が走っていましたが、パワーのない蒸気機関車は、勾配の途中で停まると再び走り出すことができなくなってしまいます。そのため駅の部分は平らにする必要がありますが、急勾配がつづく山岳路線では平らなところがなく、仕方がないので本線から分岐して平らな行き止まりの線路を設けてそこに駅を作る、スイッチバック式の駅が4駅も連続するほどの難所でした。
現在では、つばさや、とれいゆつばさ、そして普通列車もパワーのある電車になったため、この区間スイッチバック駅はすべて勾配途中の本線上に移設され、スイッチバックではなくなりましたが、深い山の中の険しい勾配を登る列車の車窓は、今も変わらず美しいです。

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いよいよ足湯タイム 車窓は深い森から田園風景へ

足湯は2回目のグループを予約したので、ちょうど板谷峠を走っている頃に予約の時間となり、先頭の16号車に向かいました。車両の入り口で足湯利用券の確認があり、足湯車両に案内されると、前のグループの人たちが入浴を終え、身支度を整えるところでした。交代するようにこちらもソファにすわって靴下を脱いでズボンの裾をまくり、いざ足湯へ。スタイリッシュな色合いの室内と窓の外の木々、足元の照明や窓からの光が、美しい空間を作り上げています。

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列車はちょうど峠を越えて米沢盆地に入ったところ。車窓の景色も深い森から黄金色の田園に変わりました。足を湯に浸してリラックスしながら移りゆく景色を眺める、最高のひとときを味わえるのは、とれいゆつばさだけ。

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我が子も初めての足湯でしたが、とても楽しかったようで、これ以来、温泉地などで足湯を見かけると必ず入りたいと言うようになりました。

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湯上りのクールダウンはラウンジで

短いようで程よい時間だった足湯タイムの15分が過ぎ、次のグループに交代して16号車を後にします。隣の15号車の売店でアイスクリームや冷たい飲み物を買って、畳敷きの湯上りラウンジでしばしのクールダウン。記念撮影用のフレームも置いてありました。
このラウンジは乗客誰でも利用できるフリースペースで、テーブルが3つしかないため、混んでいたら譲り合いが必要ですが、幸いこのときはあまり利用されている方はおらず、ゆっくりくつろがせていただきました。

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後半戦は沿線の味覚を味わう駅弁まつり  

途中の主要駅である山形では7分間の停車時間があり、ホームに出て少し気分転換します。山形を出ると終点の新庄まではあと50分の旅です。

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さて、列車の旅の楽しみの一つと言えば駅弁ですが、いま手元には3つのお弁当があります。これら東北、山形新幹線沿線の味覚は、ここまでの旅の成果でもあります。

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まずは、やまびこ号乗車中、宇都宮での6分間の停車時間を利用して買いに行った「餃子ダブル弁当」。新幹線改札内売店では買うことができず、乗り換え改札口でお願いして、在来線コンコース内の売店に買いに行かせて頂きました。おかずは餃子と少しの漬物だけという攻めた内容。餃子にはタレの味がはじめからついていて、にんにくも香る餡のバランスも良くおいしいです。列車の中であっても、とにかくお腹いっぱいに餃子を食べることができる、ありがたい一品。

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そして福島での乗り換えの時に、乗り換えコンコースの売店で買った「海苔のりべん」。郡山駅の駅弁ですが、福島駅でも販売しています。日本一ののりべんとの呼び声も高いこの弁当、おかずもオーソドックスなラインナップですが、ひとつひとつがしっかりおいしい!おかかごはんの上にのった主役の海苔は三陸産とのこと。この海苔が香り豊かで肉厚で食べごたえがあり、和の味がうれしいおかずオールスターズと相まって、これぞ日本のお弁当、と言った風格。満足度の非常に高いお弁当でした。

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最後は有名な米沢駅の「牛肉どまん中」。とれいゆつばさの車内で購入しました。いままで2つのお弁当を家族で分けながら食べましたが、さすがにおなかがいっぱいに。牛肉どまん中は、宿についてから、おやつに頂きました。冷めても柔らかい牛肉は程よく脂をまとい、甘じょっぱい味付けとともに、ごはんがいくらでも食べられるおいしさです。

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満腹になって眺める車窓。黄金色の田んぼが美しいです。終点の新庄はもうすぐ。

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12時16分、終点の新庄に到着。福島から2時間14分、とれいゆつばさの旅が終わります。

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隣のホームには陸羽東線の観光列車、リゾートみのりが入って来ました。リゾートみのりは2020年に引退してしまったので、この並びは今ではもう見ることができません。

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とれいゆつばさは、折り返し福島行きとなるまでの間、車庫に引き上げて待機します。とれいゆが去ったホームには普通列車が入って来ました。その隣には紫のラインの山形新幹線つばさが。

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足湯に入り、湯上りラウンジでくつろいで、お座席指定席の大きなテーブルに並べた駅弁を家族でつつくという、ゆったりとして、団らんのひとときを過ごすことができた「とれいゆつばさ」は、山形の旅にぜひ組み入れたい魅力的な列車です。


のってたのしい列車 ポータル>とれいゆ つばさ:JR東日本 (jreast.co.jp)


2018年9月