桃の産地としても知られる山梨県には、春になるとピンク色の桃の花に彩られた景観が楽しめる桃源郷があります。中でも、新府(しんぷ)桃源郷は、八ヶ岳や南アルプス、富士山も見える景観の良さと、駅近のアクセスの良さが魅力です。近くには桜の名所、新府城跡もあり、桃と桜の花を両方楽しむことができます。2023年4月、そんな新府で春の一日を過ごしてみました。
新府について
新府(しんぷ)は、東京から見ると甲府の少し先、山梨県韮崎市の七里岩と呼ばれる台地の上にあります。武田勝頼公が甲府市の躑躅が崎館から城の移転を計画して、新しい府中、新府と名づけられた新府城が築かれことによりその名が生まれました。
JR中央本線には新府駅があり、新宿からの距離は140.9㎞。普通列車しか停車しない小さな駅です。
JR中央本線で新府へ
東京から新府へは、新宿駅から特急あずさ、または特急かいじで甲府まで行き、そこから普通列車に乗り換えるのが便利です。あずさ号、かいじ号の違いは、行き先と停車駅。簡単に言うと、甲府までしか行かない列車がかいじ号、甲府より先まで行くのがあずさ号という区別になっていて、かいじ号は甲府までの停車駅が多く、甲府より先を目指すあずさ号は甲府までは停車駅が少ないという違いがあります。途中であずさ号がかいじ号を追い抜かすということは無いので、甲府に行くのであればどちらに乗っても、その列車が早く着きます。
あずさ号、かいじ号は全席指定席で、自由席はありません。
この日は、新宿駅からあずさ号に乗車。
三鷹の車庫で休む、中央総武線各駅停車の車両と地下鉄東西線直通用車両。
東京の桜は終わりかけでした。
多摩川を渡ります。
豊田の車庫には、オレンジの中央線快速には2本しかない珍車両、209系が停まっていました。
浅川を渡って八王子へ。
高尾を過ぎると山の中に入ります。新緑と桜がきれいです。
勝沼から甲府盆地に入ります。勝沼駅には桜並木があり、満開の桜が迎えてくれます。
勝沼駅はかつてスイッチバック駅でした。当時使われていたホームが残されています。
中央本線は、勝沼を過ぎると甲府盆地に向かって下りて行きます。桃の花もたくさん見えてきました。
線路際にも桃畑が。
降りた1番線ホームに次にやってくるのは臨時列車の笛吹桃源郷号。発車案内には桃のイラストまで添えられています。
ここから乗る普通列車松本行きは3番線からの発車。乗り換え時間に、お昼に食べる駅弁を購入しておきました。
新府駅に到着。甲府からは16~17分程です。
新府駅は簡易IC改札だけがある無人駅。
次の特急列車が通過していきました。
新府駅は下り列車用ホームと上り列車用ホームの入口が別になっていて、上り列車に乗るには線路をくぐった向こう側の階段を上ります。
列車の姿も楽しめる 新府桃源郷さんぽ
新府駅はのどかな駅で、駅前に店舗などはありません。駅前だけでなく、これから向かう新府桃源郷や新府城跡にも飲食店などはありませんので、新府でゆっくり過ごすなら、お弁当などを持って来ましょう。飲料水の自動販売機なら、数は少ないですが、ところどころにあります。
駅を出て右手のほうに歩き、道なりに丘を登ったら、さっそく桃畑があります。駅から歩いて5分ほどでアクセスできる、駅近桃源郷です。
普通列車がやって来ました。
桃のピンク、菜の花の黄色、若草の緑色が織りなす色合いが春気分を盛り上げてくれます。
丘に続く農道を歩いて行きます。丘なのでアップダウンはありますが、舗装されていて歩きやすいです。
特にコースなどがあるわけではないので、好きなように散策すればいいですが、農道ですので農作業の方の軽トラックなども通ります。農家の方のご迷惑にならないように、気をつけて歩きましょう。
この日はあいにく雲が厚く、八ヶ岳も南アルプスも富士山も見えませんでしたが、茅が岳が見えました。茅が岳は「ニセ八ツ」の異名を持つ山で、甲府方面からやってきて、ちょうど八ヶ岳が見えてくるかと思う頃に、八ヶ岳に似た山々の連なりを持つ山が現れるため、八ヶ岳かと勘違いされることが多いそうです。勝手に間違えられてニセモノ扱いされているので茅が岳がかわいそうになりますが、茅が岳もまた魅力的な山容で、この地域を代表するシンボリックな山であることには変わりません。
少し歩いてお腹も空いてきたので、桃の花を見ながらお弁当と食べることにしましょう。今日のお昼は甲府駅で買った駅弁です。牧場の牛めしと山賊焼弁当。
特急あずさが走って来ました。
こんどは普通列車。
再び桃源郷散歩を開始します。
スモモかりんごか、白い花を咲かせる木もありました。
左側の木々の陰に通過する特急列車がちらりと。その向こうには切り立った岩が見えますが、こちら側の台地と向こう側の台地の間には谷があります。
丘の上に新府共選場という農業施設があります。おそらく、収穫された桃がここに集められ、ここで選別されるのかと思いますが、そこに桃源郷の案内看板がありました。
共選場から丘を下り、新府城跡へ向かいましょう。
振り返ると丘の上に先ほどいた共選場が見えました。新府桃源郷の看板もあります。
桃畑が途切れ、桜の花が咲く山が見えてきました。このあたりが新府城跡です。
桜が満開の新府城跡
県道を渡り、県道に沿って山の麓に続く細い山道を城の入り口に向かって歩きます。県道はそれなりに車の往来が多いですが、歩道がないので、県道ではなくこちらを歩くのが安全です。山道には背の高い桜の木もありました。
城跡は新府藤武神社という神社になっています。神社へと続くこの階段が、すなわち城跡への入り口です。
見上げるとうんざりしてしまいそうな階段です。
階段の横には、階段を回避する巻き道も用意されていました。
がんばって階段を登りきると本殿があります。
舞台もありました。桜の花びらが舞い散り、風情があります。
お城の建物は残っていませんが、平らになった広場に満開の桜が咲き誇っていて、なんとも華やかです。
城跡の縁に行ってみると、少し木々が邪魔ではありますが、桃源郷を見渡すことができました。
景色を楽しんだら、山を下りて新府駅に戻りましょう。
新府城は、正式には、新府中韮崎城というそうです。
新府城の麓から新府駅までは歩いて15分ほど。花を見ながら歩いていれば、あっという間に到着します。
帰りの上り列車のりばは、線路をくぐった反対側です。
新府駅。
ホームからも桃の丘が見えます。
下り普通列車がやって来ました。
上り列車に乗って甲府へ。
甲府ではやっぱりこの名物を食べて行きましょう。ほうとうです。
甲府からは特急に乗って帰ります。
列車で気軽にアクセスできる、駅近の桃源郷と城跡の桜が魅力の新府。あいにく雲が多く、八ヶ岳や富士山、南アルプスは見えませんでしたが、美しい花を見ながらの散歩は、楽しい春の休日となりました。
2023年4月