そこに線路があるかぎり

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【長野県】日本で2か所しかない星形城郭の1つ 龍岡城五稜郭を俯瞰する展望台への山登りと ヤギたちとのふれあい(2023年)

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特徴的な星形の城郭がユニークな「五稜郭」は、北海道の函館にあるものがよく知られており、五稜郭と言えばこの函館の五稜郭を指す場合も多いです。しかし日本にはもう1つ「五稜郭」があります。長野県の佐久市にある、龍岡城(たつおかじょう)五稜郭です。
この龍岡城五稜郭の近くの山には展望台があり、龍岡城から30分ほどの山登りで到達することができます。2023年5月、近くからではわかりづらい星型の城郭を眺めるならばやはり俯瞰しなければ、と、この龍岡城五稜郭の展望台に登ってみました。

龍岡城について

龍岡城は、この地の田野口藩藩主、松平乗謨(のりかた)により江戸時代末期の1864年(元治元年)に着工、1867年(慶應3年)に竣工した田野口藩(のちの龍岡藩)の新陣屋です。城と呼ばれてはいますが、いわゆる戦国時代の城とは違い、陣屋でした。星形の城郭はヨーロッパで多く造られていたもので、西洋の軍学に関心のあった乗謨が、ヨーロッパ式の城郭の設計をしたものだそうです。
完成した翌年の1864年明治元年であり、ほどなくして廃藩を迎えることとなったため、龍岡城は完成からわずか5年後の1872年に建物が解体され競売にかけられたとのこと。なんともはかなく、もったいない話だと思いますが、もともと龍岡城は、濠は城郭をすべて取り囲むことなく一部が未完成で、石垣も簡略化された部分があり、つまり計画通りの完全な形ではないにもかかわらず完成としていたようなので、こうした短い命となることをどこか見越していたのかもしれません。
なお、日本にあるもうひとつの五稜郭、函館の五稜郭は完成が1864年であり、これはちょうど龍岡城が着工された年に当たります。明治を目前にした江戸末期、西洋式の城郭が続けて2つも造られたことは、新しい時代の幕開けを予感させるものであったのかもしれませんが、その新しい時代が城を必要としなくなったことで、日本の新しい城郭デザインもそれ以上広がることがなく、2か所だけの珍しいものとなりました。

龍岡城へのアクセス

龍岡城は長野県佐久市の南部にあり、近くにJR小海線が走っています。小海線にはそのままずばり「龍岡城」という駅があり、鉄道で龍岡城にアクセスする場合は、この龍岡城駅か隣の臼田駅から徒歩20分~25分程度とのこと。車でのアクセスの場合は、中部横断自動車道 佐久臼田ICから10分ほどです。

羽黒下駅でJR小海線を見る

佐久方面での用事を済ませた帰り道、龍岡城に寄ってみることにしました。佐久市の南、佐久穂町羽黒下というところでランチタイムを迎え、ガレットが食べられるカフェで昼食をとることにしました。ヨーロッパ式城郭を見に行く前にフランスの料理を食べて気分を盛り上げよう、というつもりがあったわけではありませんが、ソバが有名な信州で、そば粉のクレープを食べるのもなかなかいいものではないかと思います。

カフェの近くにはJR小海線羽黒下駅があり、テーブルで料理を待っていると踏切の音が聞こえたので、線路のそばまで行ってみると、小諸行きの列車が通過していきました。

羽黒下駅は線路が2本になっていて、行き違いができる構造です。昼食を終えるとちょうど上り列車がやってくる時刻だったので、ふたたび駅が見える踏切へ。やってきたのはディーゼルと電気のハイブリット車両、キハE200型でした。

左の写真が下り列車のキハ110系、小海線の主力となっているディーゼルカーです。右が上り列車のキハE200型「こうみ」、ディーゼルとバッテリーを組み合わせて走るハイブリッド車で、営業用の鉄道車両としては世界初のものです。

ポイントの横に「S」と書かれた標識がありますが、これはこのポイントが「スプリングポイント」であることを示すもの。ローカル線などで見られるスプリングポイントは、常に一定方向に開通していて、この写真で言えば手前から走ってきた列車は、まっすぐ進んだ左側の車線にしか入ることができません。逆に、いま「こうみ」が停まっている右側の車線から手前に列車が進んでくるときは、車両の車輪でポイントのレールを押しながら右車線から手前の線路への進路を確保しますが、ポイントにはバネが仕込まれているので、車輪が通過するとバネの力で手前の線路と左車線を繋ぐ方向にポイントの開通方向が自動的に戻される仕組みになっています。

走り去る上り列車。

龍岡城の展望台に登る

ランチを食べた羽黒下から車で10分ほど走り、龍岡城跡にやってきました。駐車場は3か所に分かれていてどこも停められる台数が少なく、ちょうど満車だったのですが、運よく程なくして1台が出庫し、停めることができました。

龍岡城跡から展望台へは山を登って行きます。車でも行けるらしいのですが、展望台への山道はかなり狭く、対向車が来ればすれ違い困難であるうえ、そもそもその山道の入り口は城跡から見て山の反対側に位置していて遠いうえ、非常にわかりづらいと聞いたので、城跡に車を停めて歩いて登ってみることにしました。
展望台への山道のルートは、イラストマップの掲示がありました。

城跡付近から見上げた山。赤丸のところが展望台です。

案内表示に従って家の間の路地を進むと、山のなかへ続く道が。これが展望台への登山道です。

山の中にはところどころに標識があるので、それを目印に登って行きます。

標識はあるものの、登山道は細かったり、落ち葉が積もり滑りやすかったり、垂直方向にステップを踏めず、横向きの斜面に斜めに足を接地しながら歩かなければならないところがあったり、注意が必要な部分もあります。最低でもスニーカー、できればきちんとした登山靴を履いたほうが安心かと思います。

ところどころに現れる標識を頼りに、山を登って行きます。

20分少々歩くと、細い登山道は、車1台が通れるくらいの道にぶつかりました。ここにも標識があり、展望台はこの道を右に進むように指示があったのでその通りに進むと、ほどなくして、右の林の中に続く細い道に「五稜郭展望台 100m」の表示が。

木々の向こうが明るく、展望が利きそうな雰囲気になってきました。

麓から30分の山登りで 龍岡城五稜郭展望台に到着

案内表示に従って先に進むと、木々がなく見通しの利くところがあり、ここが展望台でした。スペースも小さく、山の中に簡素に造られた展望台ですが、龍岡城をバッチリ俯瞰することができます。

龍岡城五稜郭展望台からの眺め。星型の特徴的な城郭は俯瞰してこそ!と頑張って登って来ましたが、こうしてみると意外とわかりにくいかも…という心の声をぐっと抑えこみ、ここまでがんばって登ってきた子供には「ほら見てごらん、星の形をしているよ!これは上から見ないとわからないぞ。がんばって登ってきてよかったね!」と、半ば自分に言い聞かせるように声を掛けます。幸い、子供も「ほんとだー!」と呼び掛けに応じてくれたので一安心…

アップにすると星型もわかりやすいです。星形の城跡の敷地は田口小学校という小学校になっていましたが、今年2023年の3月に廃校になってしまったとのこと。

城郭の手前側にはお濠も見えます。お濠沿いの木は桜で、春にはお花見もできるそう。また桜の季節にここから龍岡城を見下ろしてみたいです。

千曲川に沿ってひろがる佐久平、そしてその向こうには八ヶ岳の北端にある蓼科山がみえます。龍岡城だけでなく、八ヶ岳を見るにも良い展望台です。

展望台は特にお店や自販機はおろか、東屋やベンチなどもない簡素なものなので、10分ほど景色を楽しんで下山することになりました。いま登ってきた道を引き返します。車の通れる道から登山道に入るところにも、しっかりと案内があるのでわかりやすいです。

龍岡城跡にあった田口小学校は廃校に

山を下り、今度は城跡に行ってみることにします。一周はつながってはいないそうですが、このあたりのお濠はしっかりと水を湛え、鯉がおよいでいました。

案内看板の五稜郭の図では、輪郭の半分ほどが水色に塗られていました。おそらくこの部分が水の入ったお濠ということだと思います。

橋を渡って城郭に入ります。

城郭に入ると、そこに広がっているのは、ザ・学校、の風景。
こんな珍しい城郭の中にある小学校とは、きっと通っていた生徒も誇らしかったことでしょう。校舎には「ありがとう 田口小学校」の横断幕が掲げられています。

2階建ての校舎、立派な体育館、広いグラウンド。なかなかの規模の小学校だったようです。

校庭の片隅には古い建物が。これは「お台所」で、場所は移設されたようですが、もともと龍岡城にあった建物だそうです。予約制で見学ができるようになっていますが、年に何回かは普通に公開されることもあるようで、この時は予約なしで中に入ることができました。

「お台所」内部にあった龍岡城の模型。

迫力ある太い梁が印象的なお台所内部。2階にのぼってみたいところでしたが、あいにく階段部分は立ち入り禁止で、1階だけが公開されていました。

お台所を見終えたら、校庭に出てさきほど登った山を見上げてみます。

龍岡城のイラストマップ。この図で城郭の上側に描かれている「五稜郭であいの館」は小さな資料館で無料で見ることができます。駐車場、公衆トイレ、飲み物の自動販売機もあり、龍岡城観光の拠点となるところ。

さきほどの展望台から見た龍岡城、青い丸をつけたところが「であいの館」、赤丸をつけたところが駐車場です。

星型のお城を楽しんだあとは 長野牧場でヤギたちとたわむれる

展望台への山登りと城郭の見学で1時間半ほど龍岡城を楽しんだあとは、車で15分ほどのところにある長野牧場ふれあい広場で、ヤギたちとのふれあい。

ここは「家畜改良センター茨城牧場長野支場」という研究施設で、飼育されているヤギに草を与えることができます。入場は無料。

草の上で気持ちよさそうにくつろぐヤギたち。

ヤギたちにエサをやることができます。エサはその辺で摘んできた草です。

「動物にエサをやる」は子供には鉄板のイベントですが、なんとものんびりとした雰囲気の中で、フラっと立ち寄って気軽にヤギたちと触れ合える、とても魅力的な施設です。

佐久は軽井沢や八ヶ岳からも近く、そうした観光地への道すがらちょっと立ち寄って、珍しい星型城郭を見たり、ヤギたちと触れ合ったりしてみると、旅がいっそう楽しくなることでしょう。


2023年5月