そこに線路があるかぎり

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【ブルネイ】首都の中心街からボートに乗って ジャングルのサルと都心の目の前に広がる水上集落を見に行く (2011年)

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ブルネイの首都、バンダルスリブガワンブルネイ川に面しており、中心街からこの川を渡ったところに広がるのが世界最大と言われる水上集落です。先日は都心側の岸から対岸に広がる水上集落を眺めただけでしたが、この日はボートに乗って水上からこの集落を眺めてみようと思っていました。
バンダール都心から対岸の水上集落への足はボートタクシーのみで、ボートは船着き場にたくさんたむろしているのですぐに捕まえることができますが、料金交渉をしてチャーターすれば、水上集落を周遊してもらう事もできるそうです。
せっかくボートをチャーターするのであれば、この川の上流のジャングルに生息するというテングザルも見に行ってみたいと思います。2011年5月、バンダルスリブガワンの野生のサル観察と水上集落を巡るボートツアーに出かけました。

ボートに乗る前にニューモスクを見学

サルは日中は動きが鈍く、活発に動く朝か夕方の方が見られる可能性が高い、という話を聞いたので、しかるべき時を見計らうべく、ボートに乗る前にバンダールの観光名所のひとつである「ジャミヤシル・ハサニル・ボルキア・モスク」、通称ニューモスクに行ってみました。
半端な時間であったためか広い駐車場はがらんとしていますが、ここも礼拝の時には車で埋め尽くされるのでしょうか。

ニューモスクは、市内中心にあるオールドモスクから2-3km離れたところにあります。現在のボルキア国王の即位25周年にあわせ1994年に完成し、建設には8年という歳月がかけられたそうです。

あいにくの空模様ではありますが、噴水の清涼感、タイルの清潔感があいまって、とてもさわやかな印象のモスクです。

都心側の岸にもある水上集落

ニューモスクを見物したら、バンダールの都心の川辺に向かいます。
都心の目抜き通りの突き当りにある川岸から対岸を見ると、向こう岸に水上集落が広がっているのが見えます。近代的なビルが建ち、大きなショッピングセンターなどもあるこちら側の都会の風景と対岸の水上集落とのギャップが面白いですが、都心側の岸を少し歩くと、ショッピングセンターやオールドモスクのすぐ横に小規模ながら水上集落が広がっていました。

ショッピングセンターの横からその集落に入っていく木橋を歩いてみます。沈下橋のように欄干もなく、ただ木の板が渡されているだけの細い橋なので、少々スリルがあります。ちょうど潮が引いている時間だからか、場所によっては水の下から地面が洗われていて、それなりの高さがあります。

2階建ての立派な建物も水の上に建っています。

突き出した桟橋がありました。干潮時でも水位が保てる場所まで桟橋を作り、船が発着できるようにしているのかと思われます。

対岸に水上集落が続いています。

ずっと続く橋をどこまでも歩いてみたくもなりましたが、そろそろ船着き場に戻り、ボートに乗ってみたいと思います。

バンダルスリブガワンのボート旅 まずは都会の隣のジャングルへ 

船着き場で岸壁から川を見下ろすと、あちこちの船頭さんから「乗ってかないか?」的な声がかかり、アジアっぽい活気をあまり感じないブルネイにおいて唯一、アジアっぽい活気を感じます。人のよさそうな船頭さんを選び、「カンポンアイール一周、いくら?」と聞くと「20ドル」とのこと。水上集落は、マレー語で「カンポンアイール」と言います。「カンポン」は村とか集落というような意味ですが、「アイール」は英語で小島を意味する「アイル」をイメージさせ、マレー語のアイールは英語のアイルから転訛した言葉かもしれません。

カンポンアイール周遊のボートチャーターはおおよそ15ドルから20ドルくらいが相場と聞いていたので、初めからほぼ決着金額の提示がされてきたことになりますが、ブルネイ人の商売っ気のなさというか純朴さというかが感じられ、とにかく、アジア的な面倒な値引き交渉をあまりしないで済むのは有難いです。
値段は別に20ドルでよかったので、金額交渉もせずこの船頭さんのボートに乗ることに決め、舳先からボートに乗り込みます。川面を爆走するボートを見る限り、荷物がびしょびしょに濡れるのでは、という心配があったので、持参していたゴミ袋でバッグをすっぽりと覆い、防水対策も万全に整えました。

都心から乗ったボートではどれほどの時間川をさかのぼればサルのいるジャングルに辿りつくのか想像もつかず、とりあえず「ジャングルにサルを見に行ったらどれくらい時間がかかるの?」と聞いてみると「1時間から1時間半」との答えでした。往復2時間か・・・と思いながらよくよく聞くと、ジャングルに行って、水上集落を見て、全部で1時間半くらい、値段もトータルで30ドルでいいとのことだったので、迷わずサル+水上集落のツアーにしてもらうことにしました。

船着き場を出たボートは、川の上流に向けて針路をとります。船頭さんはボートの一番うしろでエンジンを操っていますが、陸から見たような爆走ではなく、わりとゆっくりとしたスピードで進んでいて、安心するような期待外れのような気がします。ふと船頭さんの方を見ると、携帯電話で誰かに電話をかけていて、何やらマレー語の会話がなされた後、私の方を見て「OK、サルは出てきているらしい」と笑顔をみせてくれます。サルはいつでも見られるわけではないのか、誰かに確認してくれていたようなのですが、こんなところにもブルネイ人の優しさを感じます。

ボートには「JAPAN」のペイントが。日本びいきの船頭さんのようでよかったです。

電話を切った船頭さんは、他のボートと同様、エンジン全開、フルスピードでボートを走らせ始めました。両岸に続く水上集落が途切れると、もう岸辺は木々に覆われていて、すっかりジャングルの様相を呈していますが、まだ都心を出航して5分も経っていません。
右岸の木々の上に顔を出す豪華な王宮の屋根が見え、その前には王宮専用らしき船着き場がありました。王宮を過ぎて大きく左に曲がり、さらに川を遡っていくと採石船が発着する船着き場があり、川幅の大部分を着岸している採石船がふさいでいるのを注意深く交わして行くと、ボートはマングローブが茂るジャングルの中に静かに停まりました。

エンジンを切ると、ときどき動物の鳴き声の聞こえる、静かな空間が広がり、岸辺にできた小さな干潟を、サギがくちばしを泥に突っ込みながら歩いています。すっかり、ジャングルの中の川を探検している気分ですが、都心からボートでわずか15分ほどの距離です。
「このあたりにいるはずなんだけど・・・」という船頭の言葉に、私も目を凝らして両岸の木々を探してみると、砂地の現れた岸を歩くサル、木々の上でエサを食べているらしきサル、確かに数匹のサルの姿を認めることができました。

船頭さんはそっとボートをサルの近くに寄せてくれますが、よく見てみるとこれらのサルの鼻は長くなく、残念ながらテングザルではないようです。恐らく、先日バンダール都心の市場裏で見たサルと同じ種類と思われますが、せっかくならばテングザルが見てみたいので「ロングノーズのやつが見たい!」と船頭さんにリクエストすると、ボートを岸辺近くにゆっくり動かしながら、目を凝らして森の中を探してくれました。10分近くボートの上からゆっくり探索しますが、残念ながらとうとうテングザルが姿を現すことはありませんでした。
先ほど電話して確認したのは、テングザルの出没状況だったのか、この普通のサルの出没状況だったのか聞いてみますが、あいにく船頭さんはあまり英語を解さず、聞きたい答えは返ってきません。
テングザルは諦めて次の目的地、水上集落に向かうことにしました。

林の上に顔を出す王宮の玉ねぎ屋根。

王宮専用らしき船着き場もあります。

それにしても都心から10分ほどのところとは思えないジャングル感です。

世界最大とも言われるバンダルスリブガワンの水上集落

さきほど遡ってきた川を戻り、左側にバンダール都心のビル群が見えてくると、といっても、なんか近代的な小さい街が見えてきたかな、という程度の規模ですが、そんな都心風景の向かい側、川の右岸に浮かぶ家並みが世界最大と言われる水上集落です。ここにはバンダルスリブガワンの人口の約3割、3万人が居住していると言われ、その大きさのほどが伺い知れますが、以前も書いたとおり、ここの住民は貧困層と言うわけではなく、電気も水道も完備され、エアコンやテレビや冷蔵庫もある近代的な家が、ただ水上に位置しているというだけです。住民たちは、あえて好き好んでこの水上の家を選んでいるとのこと。

対岸から見た限りでは、川の岸辺にただずらりと家が並んでいるのかと思っていて、確かに大きそうだけど、世界最大というほどの規模なのかなあ・・・という感じがしたのですが、ボートが川の本流から集落の中の水路に入っていくと、対岸から見えた家並みの向こうにも大通りというべき水路が走っていて、その両側にも家々が立ち並び、水上集落は思ったよりも奥まで続いていました。

家々の間には木製の橋というか通路がつながっていて、集落の中では船に乗らずとも歩いて移動することができます。

集落の中に入りスピードを落としたボートから家々を眺めますが、集落の中はとても静かで、平屋の家を見上げ、その足元の何本もの柱ごしに家の向こう側の明かりが見えるのは何とも奇妙な光景です。

ここが学校で、ここが消防署、これが警察、あれがモスク、と、船頭が説明してくれ、ひとしきり街としての体裁が整っていることに驚かされますが、特に学校はいくつもあり、そのひとつひとつの規模が大きく、この集落に多くの子供たちが暮らしていることを感じさせられます。

天気が良ければ集落に上陸してぶらぶら歩いてみたいところですが、あいにくいまにも降り出しそうな空模様で、日暮れの時間も近づいているので、雨が来ないうちに、そして日が暮れないうちにボート観光は終わらせたいと思い、このまま水上からの観光を続けることにします。

船はやがて集落の中の水路を抜け、ふたたび川の本流に出ました。このまま都心の元の船着き場に戻るのかと思いきや、広い川を船着き場とは逆の、下流に向けて爆走し始めました。
右岸にはずっと水上集落が続いていますが、都心の左岸はすでに街並みが終わり木々が茂っています。と、ボートはその森の一角の岸に近づいて行き、そこにあったのはボート用のガソリンスタンドでした。こんなところのガソリンスタンドでもしっかりとシェルのシンボルカラーに塗られていて、この国とシェルの結びつきの強さを改めて実感します。一隻のボートが給油を終えたようで、頭上のガソリンスタンドから垂れ下った紐の先についた容器にお金を入れると、スタンドのスタッフがするするとそれを引き上げました。

ガソリンスタンドを見た後は再び川をさかのぼり、やがて右岸に近代的な街並みが見えてきたと思うと、乗船した船着き場に到着しました。

船頭に礼を言って約束通り30ドルを渡し、下船します。アジアの国ならばここで約束と違う高い金を吹っかけられかねませんが、ここは穏やかなブルネイ、そんなことは全くなく、船頭も笑顔で、ややはにかみながらお金を受け取ります。ブルネイはやはり、人の心も豊かなのかもしれません。

船着き場の前のショッピングセンターをぶらぶらして外に出ると、すっかり暗くなった街に白亜のオールドモスクが浮かびあがっていて、その美しさにしばし見とれてしまいました。

ローカルなフライドチキン店の鶏半身フライドチキンは、ボリュームがあり、さまざまな部位が楽しめて最高でした。



2011年5月