そこに線路があるかぎり

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【マレーシア】石油で栄えたサラワク州の地方都市 「美しい里」ミリを歩く (2011年)

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ボルネオ島グリーンランドニューギニアに次ぐ世界第3位の面積の島で、面積は743,330㎞2、日本の国土の2倍弱という広さです。このボルネオ島には、ブルネイ、マレーシア、インドネシアの3つの国の領地となっており、インドネシアではカリマンタン島と呼ばれます。
このボルネオ島マレーシア領は東側のサバ州と西側のサラワク州の2州から成っていて、サラワク州の中にブルネイダルサラーム国があるのですが、ブルネイの西端の国境からほど近い場所に、マレーシアのサラワク州、ミリという町があります。
2011年6月、このミリの町を歩いてみる機会がありました。

巨大な市場 E-mart

ブルネイとマレーシアの国境から車で10分ほど、建物もなにもない平原の中に「E-mart」という巨大な市場があります。大きな駐車場を備え、スーパーやコンビニ、ファーストフード店、食堂、そして野菜や魚、食べ物、電化製品などを売る店が入居するこの市場は大変賑わっており、立地から考えると、おそらくブルネイ人の買い物客もターゲットにしているのではないかと思われます。中には両替所もあり、ブルネイドルからマレーシアリンギットに両替することができます。国際的な競争力を考えてか、ブルネイドルはシンガポールドルと等価に固定されていて、互いの国でそのまま通用するとのことですが、日常生活を考えるとブルネイドルはシンガポールドルよりもマレーシアリンギットと互換性を持たせたほうが便利な気がします。

訪れたときはちょうどお昼時ともあり、この市場の食堂で昼食をとることにしました。フードコートのように、小さな屋台の店舗が並ぶ中心に各店舗共用の座席があるタイプの食堂で、何を食べようか屋台を見て回るのは楽しいひとときです。悩んだあげく、どんなものかもよくわからないまま、麺の店で注文しました。
ラーメンのようなものかと勝手に想像していましたが、麺とスープが別々に運ばれてきました。

スープをかけるのか、麺をスープにつけるのか、はたまたそれぞれ別に食べるのか悩みましたが、和え麺のように麺と具を混ぜて食べ、スープは単体で飲むことにします。麺はカップラーメンのような麺でしたが、程よい塩加減に具のうまみがまじりあい、味の絡みやすい縮れた細麺と相まって、非常においしかったです。

食後は市場を覗いてみました。大きな上屋がかかった中に魚屋やら雑貨屋やら、いろいろな店が並んでいます。

いろどり鮮やかなマレー服の店。

お菓子を売る店。「ご飯はナシ、魚はイカン、お菓子をクエ」というマレー語の覚え方フレーズを思い出しました。ということで、これらはマレー語でクエというはずです。

南国らしく、フルーツもたくさん。

市場に来ると必ずチェックしたくなるのが野菜。色とりどりの野菜が並ぶ光景は目にも鮮やかで、見ていて飽きません。

「美しい里」ミリの町へ

国境近くの市場をぶらぶらしたあとは、ミリの町へ向かいます。
E-Martからミリまでは30分ほどの近さで、景色がやがて家並みを増し、大通りには並木が続いていて、もう街が近いかな、と思っているうちに大きなショッピングセンターがあり、もうミリ市内でした。
ミリへの道路には、漢字で書かれた道路標識があり、それによればミリは漢字では「美里」と書くようです。美しい里とは、良い字をあてがわれたものだと思います。

ミリは、ボルネオ島にあるマレーシア2州のうち西側のサラワク州にあり、ミリ川の河口に広がる街です。昔は小さな漁村だったものが1910年油田が発見され、以後オイルマネーを背景に発展してきた金持ちシティーと聞いていましたが、見た感じでは思ったよりも小さく、高層ビルは多少あるものの、都市というよりはよく整備された少し大きめの町という印象でした。
これから市内をぶらぶらしてみたいのですが、どこから見たものかまったくわからないので、とりあえずバスターミナルの近くで車を降り、観光案内所に行ってみることにしました。

ミリのバスターミナル

観光案内所で地図をもらい「ちょっと街を歩いてみたいんですが、どのへんに行くのがオススメですか?」と聞くと、係の人は「この近くだと、ここに中国寺院があって・・・。あとは、そうだなあ・・・」と、地図を見ながら悩んだそぶりを見せ、どうやら、これは!というおススメスポットもなさそうなので、「じゃ、中国寺院に行って、あとはブラブラしてみます」と言って外に出ました。
ミリの街は南北に細長く広がっており、ここから北に行くと旧市街と思しきエリアがあるようなので、そちらの方を歩いてみることにしました。

道路を渡り、中国寺院のほうに向かうと、市場がありました。地図によると、タムー・ケダヤンという市場です。さきほど車を降りたバスターミナル近くにも、タムー・ムヒバという市場がありましたが、どうやら「タムー」が、市場と言う意味のようです。

鈴なりの茶色いものは、ちいさな籠のようなものでしたが、何に使うのでしょうか。

ミリの中国寺院で出会った二郎の神様

タムー・ケダヤンを抜けるとすぐに、目指す中国寺院がありました。

門にはシーサーのような装飾が鎮座し、屋根には竜が踊っていて、小さいながらもなかなか迫力のあるお寺です。

敷地を囲む塀には神々のレリーフが設置されており、ふと見た1つに驚きを隠せませんでした。確かに日本ではこの名前のラーメン屋は信奉者が多いことで知られていて、私も昔から大好きなお店ですが、こんなところに神様がおわしたとは!

柱には竜が巻き、提灯の下がる軒下にも天井画があり、鮮やかな彩で見ごたえがあります。

社殿に入ってみると、線香の煙が漂う中、熱心にお参りする人の姿があり、信仰の場ならではのおごそかな雰囲気に包まれていました。

水辺には水上集落も

中国寺院を後に、街中に歩を進めて行きます。
緑の多いきれいな街という印象です。

東南アジアらしい、エアコンの室外機が並ぶ建物。この味気ない真四角の建物もアジアっぽいです。

歩いているのは市街地のいちばん川側を貫く大通りですが、地図を見るとこの右側に並行している通りが店などが並ぶ街のメインストリートのようです。
川沿いの街とあればなにより水辺の景色が気になるので、まずはこの川に沿って街を北上し、店の並ぶ市街のメインストリートで戻ってくることにして、川に近づくべく、大通りを左に折れました。

川風が心地いい川べりの道に出ると、すぐ左手には河口が見えて、海もすぐそこであることが分かります。対岸は緑に覆われていますが、地図によればゴルフ場のようです。
そして右手を見ると、なんと水上集落があるではありませんか!ブルネイバンダルスリブガワンのものとは比べ物にならないほどの小さな規模ですが、ミリにも水上集落があるとは。この辺りの人たちは水上に住むのが好きなのか、水上生活とは余程快適なものなのか、とにかく、街に水辺があればその上に住めんでみるべし、というのがこの地方の流儀なのかもしれません。

さて、川沿いの道から大通りに戻り、再び北上して行くと街並みが途切れ、そろそろ戻りどきかな、と思っていると、右手の空き地に何やら動くものがいます。犬かと思いましたが犬よりも大きく、牛のような模様ですが牛よりは小さく、よく見てみれば、草をはむヤギでした。

近づいてみるとヤギは警戒して逃げ、少し離れたところでこちらの様子をうかがいつつ再び草をはみ、また近づくと少し逃げ、ということを繰り返しているうちに、ヤギたちは用水路に沿った細い通路を、家並みの影に消えて行きました。

モスクや公園を見て旧市街へ

ヤギに導かれるように空き地を横切ると、目の前にはモスクがありました。

モスクの前はきれいに整備された公園になっていて、その一角の池の中には白い一対のタツノオトシゴが。タツノオトシゴはミリのシンボルのようで、市内のいろいろなところにタツノオトシゴのモニュメントがあるようです。

公園で折り返してメインストリートを南に向かい、スタート地点に戻ろうと思います。熱帯の昼下がり、炎天下を小一時間歩いて喉もカラカラですが、日本の公園のように冷たいドリンクを売っている売店があるわけでもなく、自販機があるわけでもなく、バッグの中に持っている、生温かくなったペットボトルの水で喉を潤します。

ふたたびモスクの前を通りまっすぐ歩いて行くと、セブンイレブンがあったので思わず飛び込み、冷たいコーラを買いました。ふだんあまりコーラなどは飲みませんが、やはり暑い中歩いた後は、糖分と炭酸がおいしいです。
冷たいものを飲んで生き返り、こじゃれた感じのカフェなどもあるメインストリートを歩いて行きます。もっとたくさんの店があり、活気にあふれた風景を想像していましたが、思ったよりも店は少なく、また、さすがに一番暑い午後の時間、あまり道を歩いている人もおらず、街は気だるい午後の空気に包まれています。

大通りを横切り少し歩くと、少しごちゃごちゃした旧市街っぽい一角にさしかかり、午後のひとときを何をするわけでもなく過ごすアジアな人々の姿がありました。やはり一番暑い時間帯に街をブラブラ歩くようなことはせず、こうして日を避けることのできる建物の密集した路地で飲み食いする、というのが、一般的な午後の過ごし方なのかもしれません。

気がついてみればもう夕方で、街で過ごした人たちが郊外の家に帰るのか、バス停にはたくさんの人がバスを待っていました。

バス停の前は警察署で、ここは道路横断禁止になっていたのですが、中央分離帯に高圧電流を流すという、なかなか過激な方法で守りを固めています。しかし、たかだか道路横断防止に、そこまでの守りが必要なのでしょうか…?

ガラス張りの近代的な高層ビルもあるミリ。

再び市場などが増えてきて、店先を覗きこんだり、見るものも多くなります。もうここはスタート地点や中国寺院にも近い場所ですが、やはりこのあたりが一番賑わいのあるエリアなのかもしれません。

お菓子かお惣菜か、何やら美味しそうなものを売る店。こういう店は、つい買い食いしたくなります・・・。

道端にならぶ青空市場

2時間ほどミリの町歩きを楽しんで、観光案内所に戻って来ました。大通り沿いにはブーゲンビリヤの木があり、綺麗なピンク色に染まっています。私は初めて行った海外がマレーシアのクアラルンプールで、その時に見たブーゲンビリヤに、外国に来ているんだということ、ここは熱帯なんだということを感じてうれしくなった覚えがあります。それ以来、私にとっての海外経験の第一歩を思い出すこの木が好きになり、この木を見ると、あの時のわくわくした気持ちが甦る気がします。

こうしてひととおり市内を見て歩いた後は、最後に車で石油の博物館に向かいます。ミリで最初に油田が採掘されたカナダヒルという丘の上にあるこの博物館は入館無料で、石油採掘について学ぶことができますが、何より丘の上というロケーションゆえ、ミリ市内とその向こうに広がる南シナ海が一望できる、絶好のビュースポットとなっています。残念ながら、ちょうどカメラの電池が切れ、写真が撮れなくなってしまったのですが、心地よい風に吹かれて、さきほど歩いたと思しき場所を目で追いながら、夕暮れのミリの街を見下ろすひとときは気持ちがよく、時間を忘れてその風景を眺め続けてしまいました。

2011年6月