西武鉄道により毎年開催されている「西武・電車フェスタ」は、ふだんは立ち入ることのできない電車の整備工場を会場としたイベントで、申し込みをすれば無料で誰でも参加することができます。子供が楽しめるイベントかどうかわからなかったのですが、2023年6月に開催された「西武・電車フェスタ2023」に初めて行ってみたところ、ふだんはなかなかできない貴重な体験に子供も大喜び、とても楽しいイベントでした。
- 西武線アプリで事前申し込みが必要
- 武蔵丘車両検修場で開催
- 西武・電車フェスタ2023in武蔵丘検修場へ行く
- 広大な建屋が会場
- トラバーサー乗車体験は人気のアトラクション
- 電車工場での体験プログラムの真骨頂? 車輪転がし
- 電車の展示は少ないけれど
- 工場らしい展示物がいっぱい
- ミニ電車やキッチンカーもある屋外で ツアー列車をお見送り
西武線アプリで事前申し込みが必要
西武・電車フェスタ2023年は完全事前申込制で、事前に西武線アプリからの申し込みが必要でした。開催日のおよそ2週間前の5月22日AM10:00 から申込開始となり、アプリからの一般参加者枠は8,500人の定員とのことだったので、受付が開始された直後に申込をし、無事電子入場券を入手することができました。申込は11:00からの枠と13:00からの枠の2つがありましたが、11:00に入ったからと言って早く退場しなければならないわけではなく、どちらも閉場の15:30までいることができるので、おそらく入場時間をずらして混雑緩和をしようという意味合いで受付時間を2段階にしているのだと思います。いうまでもなくイベントをじっくり楽しみたければ11:00の枠で申し込んだ方がよく、11:00枠は受付開始翌日午前中には早々に満席の案内が出ていました。13:00の枠はその後もしばらく空きがあったようです。
西武線アプリからの申し込みのほか、飯能・日高市民専用枠(各500名、計1000名)、ツアー参加者枠(約570名)、西武鉄道キッズクラブ枠(抽選に当選したキッズクラブ会員最大4人の組が30組)といった参加枠もありました。
また、鉄道部品を買いたい人は、鉄道部品販売コーナーへの入場券(500円)の申し込み(抽選で計200名)が必要でした。
武蔵丘車両検修場で開催
西武・電車フェスタは埼玉県日高市にある西武鉄道の武蔵丘車両検修場で開催されます。車両検修場とは電車の整備工場のようなもので、電車の検査や修繕、改造などが行われます。
最寄り駅は西武池袋線の飯能の2駅先、高麗(こま)で、ここから会場までは徒歩15分ほど。西武池袋線の飯能から先は山岳区間となり、列車の運転本数が1時間に1~2本と少ないのですが、このイベントアクセスのため、開催日に限って飯能~高麗の臨時普通列車が運転されていました。また、飯能駅南口から会場直通の臨時送迎バスもあり、来場者の足はしっかり確保されています。
西武・電車フェスタ2023in武蔵丘検修場へ行く
会場の高麗駅へは、途中の飯能まで特急ラビューを利用して向かいました。週末朝の下り秩父行き特急「ちちぶ」は行楽客で混んでいますが、飯能止まりの「むさし」に乗れば席にも余裕があります。
飯能で特急を降りて、臨時の高麗行き普通列車を待っていると、向こうのホームに茶色い電車が到着しました。この車両は、黄色い2000系車両をリバイバルで昔の茶色に色を変えたもので、ふだんは通常の電車として西武線を走っていますが、この日は電車フェスタへ向かう団体ツアー用に使われていました。電車フェスタへの団体ツアーは2023年は2つのコースが設定され、これらツアーに参加すると電車に乗ったまま会場に直行できるというメリットがあります。
・ 特急レッドアローで行く!親子で西武・電車フェスタ直通ツアー:
大人1人+子供1人の場合 16,500円
・ 2069Fで行く!西武・電車フェスタ直通ツアー :
大人、子供同額 1人6,600円
飯能発高麗行きの臨時普通列車はボックスシートの4000系の4両編成。高麗に到着すると表示が「回送」に変わりました。
高麗駅を出ると会場への案内表示が。ここから会場まで、最初は一般道を歩き、途中から専用通路に入っておよそ15分ほど。コース上には案内表示や西武の案内の方が道を誘導してくださっていて、迷わず会場に向かう事ができました。
会場に近くなると線路沿いの西武社員用の通路に入りました。ちょうど上り列車が通化していきました。電車の右側に見える、一段高くなったところが武蔵丘車両検修場です。
線路に沿った通路から折れて長い上り坂を上ります。会場案内にも「約200mの上り坂があります」という断り書きがありましたが、いざ目の前に長い上り坂が現れると、気合を入れなければという気持ちになります。がんばって登っていると、飯能駅からの送迎バスがやってきて、スイスイ坂を登って行きました。
行先表示はイラスト入りの特別な仕様。
坂を登り切ったところに武蔵丘車両検修場の入り口がありました。受付のテントで電子入場券を見せ、会場案内のチラシと記念品のクリアファイルをいただき、いざ中へ。
広大な建屋が会場
メインの会場となっている大きな建屋は、地図を見るとたて200m、よこ150mほどもあるとても大きなもののようです。建屋に入ると、まず広い休憩スペースとイベントステージが目に飛び込んできました。
ステージに近づいて見ると、鉄道ものまね芸人、立川真司さんのものまねショーが行われていました。
2023年の西武・電車フェスタのステージのスケジュールは下記のとおり。
11:20~11:55
立川真司 鉄道ものまねステージ①
12:10~12:35
出展各社PRステージ①
13:15~13:55
久野知美(女子鉄アナウンサー)&杉浦哲郎(スギテツ)鉄道トーク&ライブ
14:05~14:25
出展各社PRステージ②
14:35~15:10
立川真司 鉄道ものまねステージ②
ほぼ休みなくステージが続いており、これを見つづけるだけでも楽しそう。どの時間にステージを見るか、そのために他の展示をどう見ていくか、計画をしっかり立てたほうがよさそうです。
トラバーサー乗車体験は人気のアトラクション
トラバーサーとは、電車を横に動かすことができる装置のことです。鉄道の車両はレールの方向にしか進めませんが、工場内などでは作業の都合などで別の車線に横移動できたほうが効率的です。そこで、トラバーサーという装置が設置されており、車両をこのトラバーサーに乗せてトラバーサーを動かすことで、好きな車線に車両を横移動させることができるというわけです。
このように、ふだんは車両を運んでいるトラバーサーですが、西武・電車フェスタではなんと乗って見る体験ができます。
乗「車」という語が適切なのかどうかという疑問がわきますが、それはさておき、目の前でトラバーサーが動くのをみれば、子供も「あれに乗りたい!」となるのは必然です。
トラバーサー乗車体験の待合場所に行ってみると多くの人が順番待ちをしていましたが、一度に乗れる人数も多いですし、乗った場所から50m~60m程度先まで行って戻ってくるだけなので、1ターンはものの2-3分で終わり、回転は早いです。特に出発時間が決まっているわけではなく、待っているお客さんがいれば順次運転しているようでした。
係の方に案内されてトラバーサーに乗ってみると、足元には2組のレールが敷かれていました。鉄道のレールの脇には、車輪のつばがひっかかるための溝があるものですが、その溝は丁寧にテープで養生されていて、人がつまずいて転んだりしないよう、しっかり配慮されていました。
乗る人たちが乗ると合図とともにトラバーサーが動き出しました。乗ってみると思ったよりもスピード感があり気持ちがいいです。
このまったいらなコンクリート床の左右にトラバーサー用のレールが1本ずつ敷かれていて、トラバーサーはその上を走るという仕組みになっています。
前方の白いテントが近づいてきたら折り返し地点です。あの白いテントの向こう側には最初に見たステージがありますが、よく見ればステージもテントも、トラバーサーの上にありました。つまり、2基あるトラバーサーのうち1基を中央に停めてステージにし、もう1基を乗車体験用に供しているのでした。
進行方向が逆になり、乗車地点に向かって戻ります。
横には先ほど見た記念撮影用の電車が見えます。あの電車たちも、このトラバーサーで運ばれてあの車線に入ったのかもしれません。
乗車地点に戻ったら、トラバーサー乗車体験は終了。
端に注目してみると、トラバーサーにつながる横方向からの線路の断面が見えると共に、それと直角方向に走るトラバーサー走行用レールが下に見えました。
電車工場での体験プログラムの真骨頂? 車輪転がし
トラバーサー乗車体験の近くには、車輪転がし体験がありました。これは本物の電車の車輪を転がしてみようというシンプルなものですが、電車工場でのイベントらしさがあり、実際に体を動かすアクティビティで車輪を動かせた達成感や嬉しさを感じることができ、さらに鉄輪と鉄レールのエネルギー効率の良さを実感できる、これこそ電車工場での体験としての真骨頂と思える、子供なら絶対に参加しておくべきプログラムであると感じました。
車輪転がし体験は2レーンありますが待機列は1列で、順番が近づくと空いた方に案内されます。どちらのレーンにも係の方がついて、安全に気を配ってくださっています。転がせるのはざっと5mくらいの短い距離ですが、子供たちの表情は真剣そのもの。聞けばこの車輪の重さは1トンほどもあるそうで、そんな重量の車輪を車輪の径と同じくらいの背の小さな子供がひとりで押していたりします。やはり鉄道はエネルギー効率の良いシステムなのだなと感じさせられます。
ゴールに着くと係の方がちからいっぱい車輪を止めてスタート地点まで転がして戻していて、なかなか大変そうです。これ、スタート地点を両方にして、前の人のゴール地点から次の人がスタートするようにすれば時間的にも、係の方の体力的にも効率が良いのではないかと思うのですが…
我が子も車輪転がしがとても楽しかったようで、「1トンを1人で動かしたんだよ!けっこう軽かったよ!」と得意げでした。やはり、車輪転がしは子供が絶対参加すべき、とても良いプログラムだと思います。
電車の展示は少ないけれど
イベントステージの袖方向には広大な検修スペースが広がっていて、電車が数両おかれていました。このイベントのために展示しているうというよりは、たまたま検修中の電車をそのまま置いているということのような感じがします。
先頭車両の前では記念写真を撮ることができます。こんなに電車に近づいて写真を撮る機会などなかなかないので、順番待ちの行列ができていました。
右に停まっている6000系と、左に停まっている30000系が、記念写真用になっていました。
記念写真用先頭車両も検修中の装いで、窓もドアも開いていて、台車は本線を走るときのものとは違い、簡素な仮の台車を履いています。
6000系車両。この6101番は6000系の中でも最初に製造された第1編成の先頭車両です。1992年に営業運転を開始したので、登場からはもう30年以上のベテラン車両。
架線はないので、バッテリーからの給電かもしれませんが、種別表示も行先表示も点灯しています。
後ほど通りかかったときに見てみると、表示が「快速急行」「武蔵丘」に変わっていました。ここは「武蔵丘車両検修場」ですが、「武蔵丘」という駅があるわけではありません。それなのになぜ「武蔵丘」という行先表示が用意されているのかと言えば、以前ここに駅を作る計画があったため。この検修場には隣接して車両基地もあるので、もし「武蔵丘」駅ができたならば、車庫への入出庫の列車が、終着、始発列車として運転されていたはずです。それを見越して、ちょうど駅設置計画のあった時期に造られた車両については「武蔵丘」の行先が用意されていたのでした。しかしながら、現在でも駅の設置はされておらず、「武蔵丘」の行先表示は幻のレア表示となっています。
こちらは30000系車両、丸みを帯びた優しくやわらかな雰囲気の電車です。よく見るとところどころに肌色のテープがペタペタと貼られているので係の方に伺ってみたところ、補修をする個所の目印としてテープをつけているのだそう。やはり検修中の車両なのでした。
これらの車両は、開放された連結面の貫通扉や側面の乗降扉から中を覗くことができますが、シートの座布団が取り外された状態でした。なかなか珍しい車内の様子を見ることができて面白いです。
建屋の奥に進んでいくと、30000系の中間車両が置かれていました。さきほどの先頭車両と同じ編成を組んでいる車両かもしれません。営業路線では8両や10両の編成を組んでいる車両も、検修場では1両ずつバラされています。
工場らしい展示物がいっぱい
西武・電車フェスタでは、電車の工場らしい施設や展示品も見ることができます。
ここは車体を持ち上げるジャッキらしき設備と、仮台車らしき車輪が置かれています。
マルチプルタイタンパー。レールの上を自走できる、保線用の大型機械です。終電後の深夜の保線作業などで活躍します。
鉄道と道路の両方を走れるトラック。いまは鉄道レールを走るモードになっていて、鉄道レール用車輪がレールに乗っているので、道路用のタイヤは宙に浮いているようになっています。
工場内で車両を動かすモーターカー。
このあたりはパンタグラフの整備場のようです。
スイッチを操作してパンタグラフの上げ下げができる体験もありました。
車両の床下に設置されている、圧縮空気をつくるコンプレッサーの稼働実演。よく車両の床下から聞こえてくるあの音が目の前で。
塗装ブース。新設したばかりで未使用の状態だそうです。今後使用されれば塗料などで汚れることが予想されるので、きれいな状態で見ることができるのは最初で最後かもしれないとのこと。
このあたりは車輪コーナー。高く重ねられたラックに車輪が収納されています。
こうした工場設備の見学の他にも、子供用制服を着ての写真撮影や、ホームや踏切に設置されている非常ボタンの操作体験、また、出展している鉄道会社のグッズ販売など、子供が楽しめるさまざまなプログラムがありました。
ミニ電車やキッチンカーもある屋外で ツアー列車をお見送り
建屋の外に出るとミニ電車乗車コーナーやキッチンカー、テント下に机といすが設置された飲食・休憩スペースがありました。
線路に近い方に人が集まっていたので何かと思っていたら、ちょうど茶色い電車を使用したツアー列車が発車するところでした。
子供が楽しめる体験型プログラムが多かった西武・電車フェスタ2023は、子連れファミリーの休日にぴったりな楽しいものでした。会場はほぼすべてが屋内なので梅雨時期でも天気を気にせず楽しめ、ぜひまた来年も参加してみたい素敵なイベントでした。
ふだん一般の人が立ち入らない工場に、ちいさな子供もたくさん来ることになれば、その準備は大変な苦労かと思いますが、各所の担当の係の方も感じ良く接して下さり、とても快適に過ごすことができました。準備や運営にあたった社員の方には感謝しかありません。
2023年6月