そこに線路があるかぎり

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【埼玉県】西武特急ラビューで行く奥武蔵ハイキング 築約200年の本堂が圧巻の高山不動尊と 展望が素晴らしい関八州見晴台(2022年)

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西武鉄道は東京、埼玉の西部に路線を延ばす大手私鉄です。一番のメイン路線である池袋線は池袋を起点に所沢、飯能などを経由し、西武秩父線へとつながって西武秩父までを結んでいます。飯能から先は奥武蔵の山の中を走る区間となり、各駅からさまざまなハイキングコースが整備され、東京から手軽に訪れることができるハイキングエリアとして人気があります。木々の緑が濃くなる6月、西武特急ラビューに乗ってこの奥武蔵へハイキングに出かけました。

乗降者数が2番目に少ない山の中の駅に特急列車が停車

西武池袋線には特急列車が運転されています。池袋から西武秩父を結ぶ特急「ちちぶ」と、秩父へ向かう途中の飯能までの特急「むさし」です。奥武蔵のハイキングエリアは飯能より先にありますが、飯能より先に行く特急「ちちぶ」は飯能を出ると奥武蔵エリアの駅をすべて通過し、秩父エリアの横瀬まで停車しないため、奥武蔵エリアに行くには「ちちぶ」か「むさし」を飯能で降り、各駅停車に乗り換える必要があります。ところが、2022年5月28日(土)から7月10日(日)までの間、「ちちぶ」のうち1日2往復が奥武蔵エリアの西吾野(にしあがの)に臨時停車するというではありませんか。西吾野は巨大な鉄わらじで有名な「子の権現(ねのごんげん)」や関東三大不動のひとつ「高山不動尊」へのハイキングコースの拠点となる駅ですが、西武鉄道のウェブサイトによれば、西吾野駅は2021年度駅別1日平均乗降人員は247人、これは隣の正丸(しょうまる)駅の169人に次いで西武鉄道全92駅の中で2番目に少ない数です。そのような駅に特急が停車するとはなかなか面白いことですし、ハイキングコースも魅力的だったので、今回は西吾野から高山不動、そして関八州見晴台を訪れることにしました。
なお、西武鉄道のウェブサイトではハイキングコース24選が紹介されており、今回訪れる高山不動へのハイキングマップもここからダウンロードすることができます。

西武鉄道で行く ハイキングコース24選 (seiburailway.jp)

窓の大きさと洗練されたデザインが魅力の特急ラビュー

西武鉄道の特急用車両は2種類あります。池袋線系統で使われる001系「ラビュー」と、新宿線系統で使われる10000系「ニューレッドアロー」です。ラビューとニューレッドアローというのは車両の愛称で、列車の愛称は定期列車の「ちちぶ」「むさし」「小江戸」と、野球開催日に運転される「ドーム」となっています。今回乗車するのはラビュー車両による、特急ちちぶ7号です。

001系ラビューは、5000系レッドアロー、10000系ニューレッドアローに次ぐ、西武鉄道の第3代目の特急車両として2019年に運転開始されました。丸い前頭部、シルバーのボディ、そして大きな窓と、見た目からして従来の車両とは一線を画す特徴的なものです。

西武特急ラビュー001系 2019年5月 飯能

そして車内も黄色を基調としたおしゃれなデザイン。(車内写真は帰路に撮影)

客室内はカーペット敷きです。1号車は車椅子スペースがあるため、客室に入ってすぐのところが広々としています。

丸みを帯びた天井を暖かく照らす照明。

ラビューはゆったりとくつろげる、居住性の高いとてもいい特急車両だと思います。

西武鉄道新型特急車両「Laview」 (seiburailway.jp)

池袋からわずか1時間で自然がいっぱいの奥武蔵へ

特急ちちぶ7号 池袋8:30⇒西吾野9:34

池袋から特急ちちぶ7号に乗車。西武線池袋駅では特急列車は特急ホームから発車します。特急ホームは、7番線ホームのいちばん奥まったところにあります。ひとつの線路の、飯能寄りが7番線、終点寄りが特急ホームになっています。かつては特急ホームには専用の改札があり、特急券を持っていなければ入ることはできませんでしたが、いまは専用改札は廃止され、自由に入場できるようになっています。

特急券は前日夕方にネット予約で購入しましたが、その時は1割ほどしか席が埋まっておらず、行楽に向かう休日朝の列車がガラガラなことに心配になりましたが、いざ乗車してみると8割から9割の席が埋まっている印象でホッとしました。西武特急は直前に特急券を買う方が多いのかもしれません。

所沢、入間市と過ぎ、秩父の山並みが見えてきました。入間川を渡ります。飯能でスイッチバックして進行方向が変わると、路線は山の中に入って行きます。大きな窓から飛び込んでくる緑あふれる奥武蔵の景色が最高です。
飯能から20分ほどで西吾野に到着。

山の中にある駅です。駅前には飲み物の自動販売機と公衆トイレ以外何もありません。

駅を出て身支度をしていると、上りのラビューがやって来ました。おそらく先ほど降りたラビューと、次の正丸駅で行き違いをした列車でしょう。

西吾野駅から高山不動尊を目指す

高山不動尊西吾野駅から北西の方角の山の中にあります。

今回歩くのは「西武鉄道で行くハイキングコース24選」で紹介されているコースですが、結果的にモデルコースとは少し違うルートを歩くことになりました。

西武鉄道で行く ハイキングコース24選 (seiburailway.jp)

カンプ用B4.indd (seiburailway.jp)

西吾野駅からは駅前の一本道をいったん下り、小さな川の橋を渡ります。ふと見上げると緑の中にぽつんと建つ西吾野駅の駅舎が見えました。

しばらく車道を歩き、西武線の線路をくぐった少し先で、そのまままっすぐ車道を進むコースと、右に折れて山道に入るコースが分かれます。どちらも高山不動に行くことができ、まっすぐ行けば滝も見られるようですが、まっすぐ行くコースはまだしばらく車道を歩くことになるので、ハイキングらしい山道を歩きたかった私たちは右に折れて山道に入るコースを選びました。住宅の間に続く細い道を歩き、その先で標識に従って左に折れると、コースは林の中を行く山道になりました。陽射しが暑かったので木々の下の日陰を歩けるのは助かります。

山道を登ってゆくと、西武線の線路を見下ろせる場所があり、ちょうどいいタイミングで列車がやってきました。黄色のボディーが木々の緑に映えます。
西武線と言えば黄色というイメージがありますが、黄色い電車はだんだん数を減らしており、やがてこのような黄色い電車と緑の山という組み合わせも見られなくなってしまうかもしれません。

ハイキングコースは林の中を進んでいきます。まっすぐ伸びた杉の木が気持ちがいいです。

分かれ道にはたいてい道標がありますが、ところどころ道標がなく迷いそうな分かれ道もありした。地図をよく見て、また、木に結んであるコースを示す赤いリボンも目印に落ち着いて歩きましょう。

登山アプリによれば西吾野から3.3㎞、ゆっくり歩いて1時間30分ほどで高山不動尊が見えてきました。

山の中に静かに佇む高山不動尊 築191年の木造の本堂の迫力に感動

埼玉県飯能市にある高山不動尊は正式には常楽院という名前のお寺で、成田不動、高幡不動とともに、関東の三大不動尊のひとつに数えられています(高山不動ではなく、埼玉県加須市不動ヶ岡不動尊または神奈川県の大山寺をカウントする説もあり)。開山は654年、実に1300年以上の歴史を持つ大変古いお寺です。
木造の本堂は1831年建立というので、築191年!こんな山奥にどうやって、と思わせるほど大きく迫力があり、圧倒されます。
本堂前には急な長い下り階段があり、これが正式な参道なのだと思いますが、ハイキングコースを歩いてきたら本堂横に出てしまったため、急階段を登らずに本堂に来ることができました。

本堂横には屋根の下にベンチが並ぶ休憩スペースと公衆トイレがあったので、ここで一休み。

標高771.1m 関八州見晴台から関東平野を一望

高山不動で少し休憩したあとは、公衆トイレ横から登山道に入って関八州見晴台を目指します。関八州見晴台は、関東の八州、相模、武蔵、安房、上総、下総、上野、下野、常陸を一望できるとのことで名付けられた展望のよいピークで、高山不動奥の院があります。高山不動本堂からはおよそ30分の道のり。
山道を登って行くと、奥武蔵グリーンラインという舗装道路に出ます。見晴らしがよく、奥武蔵の山並みが一望できました。

登山道に入り林の中を登って行くと再び奥武蔵グリーンラインに出て、少し先に「関八州見晴台入口」の案内が。ここからまた登山道に入って林の中を登り始めます。
シャクナゲの花がたくさん咲いていました。

だいぶ見晴らしがよいところに出ました。関八州見晴台まではもうすぐ。

高山不動からちょうど30分で関八州見晴台に到着。高山不動奥の院と東屋、ベンチがあるほか、少し広く平らになっているので、レジャーシートを敷いてのお弁当タイムにもぴったりです。

北側に関八州見晴台の看板が立っています。北の方角は木々が茂り展望はありません。

南の方角、関東平野方面の眺めは抜群。本当に関東八州すべてが見えるのかどうかはわかりませんが、空気が澄んでいれば新宿副都心や東京湾、丹沢なども見えるそうです。

西武ドームの白い屋根が目立ちます。もやっていて遠望が利かないのが残念。

東の方角は木々の間からわずなに見えます。下野とか常陸の方角でしょうか。

西は木々が茂っていてほとんど展望はききません。三角形のシルエットは秩父を代表する山、武甲山

クロアゲハかジャコウアゲハオナガアゲハかわかりませんが、黒いアゲハチョウが飛んでいました。

高山不動の大イチョウと 暑さを吹き飛ばす清冽な湧き水

関八州見晴台で見晴らしを楽しみながらお昼ご飯を食べ、来た道を引き返して高山不動に戻ります。行きには通らなかった参道の急階段を下りた広場にある大イチョウは推定樹齢800年の巨木。子育て銀杏とも言われ、祈願したお母さんの母乳の出が良くなったという言い伝えがあるそうです。秋の黄葉はさぞかしきれいかと思います。

イチョウ前から本堂を見ると、かなりの斜面の上に建っていることがわかります。

イチョウ脇の階段を下りると三輪神社という小さなお社があり、その横には古びた枡から勢いよく溢れる水が。

手ですくってみると冷たくて気持ちがいいです。この日は気温が高く、ここまでのハイキングですっかり暑さにやられて疲れがたまっていた感じだったのですが、この水で顔を洗ってみると、あまりの気持ち良さにいっきに疲れが回復しました。

枡は2つあり、それぞれの側面に蛇口がついています。この蛇口をひねって手で水をすくい飲んでみると、まろやかな口当たりのとてもおいしい水でした。ちょうど空になったペットボトルがあったので、この水を汲んで帰ることにします。
なお、私は何の問題もなかったですが、生水の飲用は自己責任で、家庭での利用には念のため煮沸したほうがいいかと思います。

渓流を見ながら ユキノシタ咲く林道を下る

湧き水から細い舗装道路を歩いてゆくと、なにやら白く小さな花が咲いていました。ユキノシタです。

洗濯して干してある妖精が穿くモンペのような、白いかわいらしい花です。

本当はここから登山道を歩くコースで山を下るつもりでしたが、地図を見ると途中で合流するようになっているので、このまま舗装道路を下ることにします。林の中を木漏れ日を浴びて、渓流のせせらぎを聞きながら快調に歩いて行きます。

ところどころにユキノシタの群生が。ちょうど満開のシーズンだったようです。

渓流の真ん中に鎮座する巨石や木の幹など、ユキノシタは思わぬところにも咲いているのが面白いです。

やがて林を抜け、家々が増えてくるとゴールの吾野駅は近いです。国道299号線の下をトンネルにくぐって古い街道筋に出ると、このあたりが昔の吾野宿だったところだそうです。

おつかれさまグルメ ピザとうどんで疲労回復

吾野駅まであと5分ほどというところに、ピザとうどんの幟を発見。駅まであと少しという安心感と、たくさん歩いた疲れと空腹で、吸い寄せられるように入ってしまいました。

Enjoy Agano - レストラン_吾野駅徒歩4分_手打ちうどん・特製ピザ・定食のある飲食店です (enjoy-agano.com)

吾野産蜂蜜とゴルゴンゾーラのピザと、梅じそ冷やしうどん。そして炭酸飲料で、エネルギーチャージもばっちり。

食後は高麗川の流れを見ながら吾野駅へ。歩いて5分とかかりませんでした。

 

吾野には特急は止まらないので、飯能行きの普通列車に乗って飯能へ。

飯能からは飯能始発の特急「むさし」で池袋に帰ります。休日夕方上りの特急は、秩父発だとかなり混んでいたり満席だったりしますが、飯能始発はかなり空いていました。

臨時停車があるときならば池袋からたった1時間でアクセスでき、駅からすぐに歩き始められる西吾野からのハイキングは、利便性の高さだけではなく、歴史ある高山不動の風情、関八州見晴台からの展望、湧き水、歩いた後の吾野でのグルメまで、充実の1日が楽しめる、素晴らしいところでした。アクセスに使った西武特急ラビューもまた乗りたくなるような素敵な車両ですし、季節やコースを変えて、奥武蔵のハイキングをまたいろいろと楽しんでみたいと思います。

 

<ハイキング> 

スタート:西吾野駅 ゴール:吾野駅 総歩行距離約11.6㎞

西吾野駅 9:50 --->  高山不動 11:40  (1時間50分)

高山不動 11:50 --->  関八州見晴台 12:20 (30分)

関八州見晴台 13:25 --->  高山不動 13:50(25分)

高山不動 14:10 ---> Enjoy Agano 16:00(1時間50分)

Enjoy Agano  16:50  ---> 吾野駅 16:55 (5分)

計 約4時間40分 (コース上での小休憩含む。大休憩は含まず)

 

<交通機関利用> (2022年6月現在)

池袋 8:30 ---> 西吾野(臨時停車)9:34  西武池袋線 特急ちちぶ7号
 特急券(指定席)710円
 大人IC運賃 639円

吾野 16:57 ---> 飯能 17:17    西武池袋線 普通

飯能 17:33 ---> 池袋 18:19 西武池袋線 特急むさし38号
 特急券(飯能->池袋 指定席)500円
 大人IC運賃吾野->池袋) 608円

計 2457円(大人1人)

 

<注意>

・最新の公共交通機関の時刻、運賃は、最新の時刻表等でご確認ください。

・山歩きのルート、コースは最新の情報をもとに充分ご検討の上、各自に合ったプランを立ててください。

・山歩きをされる際には必ず充分な装備と最新の地図を持参してください。

 

2022年6月