バンコクの南西70㎞ほどのところにあるメークローン駅の近くには、線路上に広がる市場があります。この線路は列車の本数は少ないながらも現役の路線で、列車が近づいてくると市場は支障する部分だけがあっという間に折りたたまれ、列車が通過するとふたたびあっという間に組み立てられるという妙技が毎回繰り返されています。かつて鉄道雑誌で見かけてここを知って以来、その特徴的な光景を一度見てみたいと思っていましたが、2010年9月、バンコクに訪れたときにその機会を作ることができました。目的のメークローンの線路市場がとても魅力的だったのはもちろんのこと、そこへ向かう列車の駅、途中で乗った渡し船など、道中もとても楽しい素敵なローカル線の旅になりました。
- 渡し船を挟んだ2つのローカル線を乗り継ぎメークローンへ
- バンコクの路地に溶け込む始発駅 ウォンウィエンヤイ駅
- マハーチャイにも線路市場!? 海産物店が並ぶ港町から渡し船に乗る
- 静かな佇まいの始発駅 バーンレム
- メークローン駅目前で列車は市場の中へ
- メークローンの線路市場を歩く
- 列車の去ったメークローン駅
渡し船を挟んだ2つのローカル線を乗り継ぎメークローンへ
線路市場があるメークローンはタイ国鉄メークローン線の終点にある駅です。バンコクからここへ列車で行くには、バンコクのウォンウィエンヤイ駅からローカル線、マハーチャイ線に乗って終点のマハーチャイへ、そして駅のそばを流れるターチン川を渡し船で対岸のバーンレムへと渡り、バーンレムから再びローカル線のメークローン線に乗って終点のメークローンへと、渡し船を挟んでローカル線2本を乗り継ぐ、変化のある旅が楽しめます。マハーチャイ線は31.2㎞、メークローン線は33.7㎞とほぼ同じ距離で、どちらも所要時間は1時間ほど。いずれの路線もタイ国鉄ですが、他のタイ国鉄路線とはつながりのない、飛び地路線になっています。
2010年9月当時、マハーチャイ線は1日17往復、メークローン線は1日4往復の列車が設定されていました。
写真はメークローン駅に掲示されていた時刻表。タイの文字は読めませんが、おそらく左からウォンウィエンヤイ、マハーチャイ、バーンレム、メークローン、バーンレム、マハーチャイ、ウォンウィエンヤイだと思います。
マハーチャイ線がほぼ1時間おきに1日17往復の列車があるのに対し、メークローン線は1日に4往復しか列車の設定がないので、バンコクから列車でアクセスし、市場が折りたたまれるところを車内と車外の両方から見ようとすると必然的に行程は限られ、ウォンウィエンヤイを5:30に出てメークローンに8:30に到着、メークローン9:00発と11:10着の列車を市場から見て、11:30発の列車に乗ってウォンウィエンヤイに戻るか、ウォンウィエンヤイを8:35に出てメークローンに11:10着、11:30発と14:30着の列車を市場から見て15:30発の最終列車でウォンウィエンヤイに戻るしかありません。
ウォンウィエンヤイを5:30に出るのは早起きがしんどいので、私はウォンウィエンヤイ8:35の列車に乗ることにしました。メークローンで4時間20分も滞在しなければならず、果たして線路市場の他にメークローンでそれほどの滞在時間をかけて見るべきものがあるのかわかりませんが、とにかく行ってみることに。
バンコクの路地に溶け込む始発駅 ウォンウィエンヤイ駅
まず乗車するマハーチャイ線の始発駅、ウォンウィエンヤイ駅はバンコクの高架鉄道、スカイトレインに同名の駅がありますが、両線の駅は隣接してはおらず少し離れていて、10分少々歩く必要があります。
朝8時、ホテルから乗ったタクシーが止まった場所はスカイトレインのウォンウィエンヤイ駅でしたが、別に歩けばいいかとここでタクシーを降りることにします。路地を歩き、食堂や露店で賑わう通りを曲がって、大通りに突き当たったところにある歩道橋を渡った場所が国鉄ウォンウィエンヤイ駅のはずです。バンコクには学生時代にも来たことがありますが、その頃からメークローンの線路市場に興味があり、行ってみたかったものの時間がとれず、せめてそこへの路線の始発駅だけでも見たいと、ウォンウィエンヤイ駅を訪れたのでした。その時、駅の向かいの露店で今まで食べたことのなかったドリアンを購入し恐る恐る食べてみると、噂にたがわぬ匂いが口いっぱいに広がって、これがドリアンというものか、と、人生の経験をひとつ積んで大人に一歩近づいた気がしたのが、まさにこの歩道橋の上でした。そんな思い出の歩道橋に懐かしさもひとしおですが、はて、この歩道橋を渡ったところに駅があったはずだけど・・・と、記憶が違っていたかと自信がなくなるほど、街に埋もれて目立たないところに国鉄ウォンウィエンヤイ駅の入り口がありました。
大通りからテント屋根の下の通路を覗いたその先に、わずかに鉄道車両が見えます。
通路を進むと左側の植え込みに駅名標がありました。改札口などもなく、大通りから歩いてきた通路がそのままホームにつながっています。
すでに8:35発のマハーチャイ行き列車はホームに停車していました。路地裏にギュッと押し込められたような駅に停まる4両編成のディーゼルカーは大きく見えます。
ホームには食堂や売店が並んでおり、線路を挟んだ路地にも露店が出ていて、駅は非常に賑わっていましたが、おそらくそのすべてが列車に乗る客というわけではなさそうです。むしろ駅は食堂か道路として利用されているにすぎず、ほとんどの人はホームを歩いてそのまま駅を出てゆくか、売店や食堂に寄ってまた戻ってゆくかで、列車などまったく意に介していない様子でした。ウォンウィエンヤイ駅は市民の暮らしに溶け込んだ、というよりも、市民の生活空間を間借りして列車が発着している、と言った方がいいような、独特の風情を持った駅です。
食べものを売る店もありました。ここで列車の発車を待ちながら麺をすすったりするのも良さそうだな、と、日本の駅のホームにある立ち食いそばを思い浮かべました。
列車の進行方向を見ると、線路の向こう側の路地にも多くの店が並び、賑わいを見せています。
ホームの先にも屋台が続いています。
振り返って駅のほうを見たところ。賑わうホームと静かに佇む列車。
発車を待つ列車の窓に、おいしそうな匂いが流れて行きます。
切符売り場でこの路線の終点、マハーチャイまでの切符を買うと、10バーツでした。マハーチャイまでは1時間ほどかかりますが、当時の換算レートで円にするとわずか30円、何とも安上がりに鉄道旅行が楽しめます。
発車時刻は8時35分、まだ10分ほど時間がありますが、列車に乗り込むとすでにそれなりに乗客が乗っていました。ボックス席にはすべて先客がいたので、ドアの横のロングシートに座り発車を待っていると、ドアが閉まり、しかし一部のドアは閉まらずに開いたまま、ディーゼルカーはゆっくりと走りだしました。
8:35、ウォンウィエンヤイ駅を出た4両編成のディーゼルカーは、バンコクの下町の路地裏をゆっくりと走ります。終点のマハーチャイ着は9時28分、およそ1時間の旅です。
バンコク路地裏列車は、水たまりや水路のある水っぽい街中を小さな駅に止まりながら走ります。タクシーを塗装している小さな自動車工場や、駅のホームにうろつくニワトリなど、車窓には裏町的な、なかなか面白い景色が続いてゆきます。乗客はバンコクを離れるにつれて降りてゆく一方かと思いきや、途中駅から乗車するお客もそれなりにいて、少ない列車本数ながら、うまく住民に使いこなされているようです。
発車した時から気になっているのが、走っているときも開いているドアがあるということで、近くまで行ってみると風が非常に気持ちいいのですが、なかなかスリルがあります。壊れているドアだけ閉まらないのかと思いきや、さきほどはこちらのドアが、次の駅からは向こう側がと、駅に着くたびに開放したままのドアが変わり、これはあえて開けているとしか思えません。熱帯の国の非冷房車ゆえ、換気を考えてのことでしょうか。
手旗で発車合図を出す駅員さんや、ホームで暮らすトリ鉄たちなど、小さな駅で繰り広げられるいろいろなシーンが楽しいローカル線の各駅停車の旅です。
車窓から見えた盛大に積まれたドラム缶。あんなに高く、どうやって積んだのかと思います。いろいろな色のドラム缶があつまってモザイク画のように見えます。
マハーチャイにも線路市場!? 海産物店が並ぶ港町から渡し船に乗る
バンコク郊外ののどかな街並みが続く車窓がだんだんと田舎っぽくなってきて、広い草原なども見えるようになったかと思うと、再び少し街中に入り、終点のマハーチャイに到着します。駅の構内にさしかかると、線路端は、というよりも線路に接して露店が並んでいました。メークローンほどではありませんが、ここにも線路市場が発達しているようです。
おおよそ駅構内とは思えない賑やかな市場の風景の中、パラソルスレスレにすすむ列車の窓から、手が届くような近さに並ぶ各商店の数々の商品を眺めて、ゆっくりとマハーチャイ駅のホームに入ります。
列車を降りると、ホームは多くの人でごった返していました。1時間に1本の列車を出迎える人々・・・な訳はなく、住民の生活に密着した市場であり通路である駅のホームに、何を間違ったか列車が到着してしまった、というだけのことのようです。
駅の終点側は車庫と整備工場になっているようでした。
列車は乗客を降ろすと、すぐにホームの先にある車両基地に引き上げて行きました。見通しがきくようになったホームは、行き交う人々であふれていました。先ほど見えた線路端の露店を見に行きたいところですが、ここからはターチーン川の渡船に乗り継いで対岸のバーンレーム駅まで行かなければならず、もしバーンレームからの1日4本のうちの1本という貴重な列車を逃してしまっては大変なので、諦めてすぐに渡船場にむかうことにしました。
左側が、車庫に引き上げた、今乗ってきた列車。
駅を出て右に曲がった渡船場に向かう道は、海産物を売る商店が立ち並んでいました。ここマハーチャイは漁港の街のようで、魚やらエビやらイカやらカニやら、新鮮な魚介類があふれんばかりに店先に並んでいます。
陳列されている海産物の中に、なんとカブトガニの姿がありました。古代からほとんどその姿を変えておらず、生きた化石と言われ日本では天然記念物に指定している地域もあるカブトガニが市場で売られているとは驚きですが、市場で売っているということは食べられるということだと思われ、ぜひ食べてみたい衝動にかられます。とは言え、今は「バーンレームからの列車に乗る」という非常に重要な用事があるため、カブトガニを食べられるレストランなどを探す余裕はなく、少し足をとめただけでまたすぐに歩き出しました。
港町の雰囲気を楽しみながら駅から5分ほど行くと、左側に目指す渡船の乗り場がありました。
渡船場で待っていると、向こう岸を出発した船が近づいてきて、目の前の船着き場に接岸しました。乗客たちが降り終わるのを待ち船に乗り込むと、低い屋根と木製のベンチがあるだけの、いかにも渡船らしい簡素なつくりの船でした。
乗客は意外と多く、バイクのまま乗ってくる人もいます。この渡船は日常の足として町の人々の生活に根付いているようです。
川の水面にはホテイアオイのような水草がたくさん浮いていて、その上でサギが羽を休めていました。
目の前を漁船が通り過ぎてゆき、漁港の街であることを感じさせます。
ほどなくして船は出航し、ものの数分で川を横切って、折り返しの渡船を待つ人たちがあふれる対岸の船着き場に到着しました。この渡船は街の人々の大切な生活の足になっているようです。
静かな佇まいの始発駅 バーンレム
バーンレム側の船着き場を出ると、こちらにもやはり水産物の店がならんでいました。地図によると、右にまっすぐ行けば目指すバーンレーム駅があるはずです。列車に乗り継ぐ人の流れが自然と駅の方向に向かっているのではないかと思っていましたが、右手の道に流れる人は少なく、また、港と駅を結ぶ道には乗り換えの人たちをターゲットとした商店が立ち並んで賑わっているだろうという予想に反し、右の道は住宅街の中といった静かな雰囲気の中に続いていました。
鉄道の乗り換え客と思しき人の姿もないその道を不安になりながらも歩いて行くと、すっかり通行人もいなくなりました。タイらしい象の像がある寺院を過ぎ、道の舗装も終わって一瞬行き止まりかと思ったところに、未舗装の細い道が続いていて、そこを進むとようやく線路が見えてきました。
辿りついたバーンレーム駅は、ゆるくカーブを描く1本のホームと1本の線路だけがある、のどかで小さな駅でした。線路はバラスト(道床砂利)が痩せこけ、ところどころ枕木がむき出しになり、レールはゆがみ、本当にここを列車が走るのだろうかという状態で、さすが1日に4本の列車しか走らない路線だと思います。
線路の奥には2両編成のステンレスのディーゼルカーが止まっていましたが、これはただ留置されているだけで、乗るべきメークローン行き列車はまだ到着していませんでした。
線路が途切れたその先はすぐ川です。
ホームの奥にあった切符売り場のような窓口で切符を買おうとすると、ちょうどその前には観光客らしきタイ人の4人組の女の子たちがいて、窓口の係員との間の言葉の橋渡しをしてくれて切符を手にすることができましたが、「いくら?」と訊くと「キャンペーンなのでタダ」と言います。そんなことがあるのかと思いましたが、ぼったくられるどころかタダということであれば、有難く頂戴しておきます。もらったチケットの券面には確かにバーンレームからメークローンまでというアルファベットは確認できますが、出発時刻が7:30となっており、何となくこの券では乗れないんだろうな、と思わせるものがありました。
やがてゆがんだ線路の向こうにヘッドライトが輝くのが見え、メークローンからの列車が到着しました。バーンレーム着10時の本日2本目の列車で、この列車が折り返し10時10分発、やはり本日2本目のメークローン行きとなります。
姿は見えども、なかなか目の前にはやってきません。
2両編成のディーゼルカーがホームに入って行きます。
列車が到着すると、さきほどまで静かだったホームに今この列車から降りてきた乗客と、どこから姿を現したのか不思議なメークローン行に乗車する乗客が集い、駅はなかなか賑やかになりました。
列車に乗り込んでみると、1日4往復の超ローカル線ながら車内はボックス席が埋まる程度の乗客がいて、それなりに需要があることが感じられます。日本人の観光客もいて「あのー、切符、買いましたか?」と不安そうに話しかけられましたが、こちらも「たぶん使えないと思われる切符をタダでもらいました」という、意味不明で、彼の不安を取り除くには不十分と思われる回答をせざるを得ず、まあ、どっちにしても車掌さんから買えるでしょう、という結論になりました。
10:10、バーンレームを出発した列車は、民家の軒先をかすめながら20-30km/hほどの低速で走ってゆきます。車窓からは家の中までも覗けたりして、人々の生活が手に取るようにわかるのですが、このペースで1時間も走るのだとしたらまだるっこしいな、と思います。ひときわ速度が遅くなったので席を立ち、運転台の後ろから前方の景色を見てみると、そこは併用軌道、というよりも、バラストも枕木も見えないような、土に埋もれて隣の未舗装の道と一体化したような線路がヨレヨレと続いていました。これでは、スピードを上げようにも危険すぎて上げられないのかも知れません。
やがて車掌が回ってきたので先ほどの切符を見せますが、予想通り「ノー」と言われ、メークローンまで10バーツの切符を購入します。
気がつくと車窓の街並みは途切れ、列車のスピードも上がってきました。椰子やソテツなども見える林を抜けると、広い溜池だか養殖池だかがあり、細い水路に沿って走ると木々に囲まれた集落に入り、という景色が続いてゆきます。水路の際に生えている木はマングローブで、ここが海に近いことを感じさせます。
窓から吹き込む風を心地よく浴びながら、列車からのんびりとしたタイの田舎の風景を楽しむのは、なんとも至福のひとときです。
メークローン駅目前で列車は市場の中へ
バーンレームから1時間、列車が終点のメークローンに近づくと、運転台の後ろの窓には人だかりが出来てきました。線路市場の眺めを絶好のポジションで楽しもうという人々で、ここがタイでも有名な観光地であることがわかります。
街の中に入り、列車がスピードを落としてきたので窓から外を覗くと、話に聞いたとおり線路端ギリギリに市場が広がっていて、眼下では市場の店主たちが身をよけながら列車の通過を待っていました。
ゆっくりゆっくり走る列車の窓から見下ろすと、市場らしいいろいろな商品が目に入ります。
線路市場区間では運転席のすぐ後ろは満員状態。
市場を抜けてメークローン駅に到着。
駅のホームは食堂状態。駅に食堂があるというよりも、食堂に間違えて列車が入ってきてしまったようです。
洋服も売っていました。
メークローンの線路市場を歩く
駅を出てすぐの踏切の先には、今通ってきたはずの線路敷はまったく見えず、早くもすっかり市場へと姿を変えていて驚かされます。
市場から駅方向を見たところ。野菜や果物、魚や生活雑貨などを売る店が両側にひしめき合い、足元にレールがある以外は、至って普通の市場です。
青々とした野菜、あずき色の何かペースト、カエルの串焼きなど、さまざまな品物が並ぶ市場は見ていて飽きません。
通路となっている線路にはたくさんの人が歩いていますが、地元の買い物客と、線路市場を見に来た観光客が半々くらいのように見えます。
あまりにも普通の市場の風景であるがゆえに、やはり線路市場の醍醐味は列車が通過するときなんだろうな、と思っていると、店主たちが忙しくテントを畳み商品を引き上げ始め、みるみるうちに市場の真ん中に一筋の軌道が現れました。
見通しの良くなった線路の向こうには、さきほど乗ってきたディーゼルカーがメークローン駅を出発するのが見え、その姿がだんだん大きくなってきます。
線路の外側きわきわに置かれた野菜は片づけられません。ここは車両にぶつからないということを、市場の人たちもわかっているのでしょう。
私もまわりの人たちと同じく線路脇のスペースを見つけ退避していますが、カメラを構え興奮している姿が心配に見えたか、同じ場所に退避していたタイ人のおっさんが後ろからしっかり支えてくれました。少し照れて会釈し、市場をかすめて接近する列車が目の前を間近に通過するのを見送ると、列車の姿がカーブの向こうに消えるのも待たず、線路はあっという間にまた市場への戻っていきました。ほんの一瞬でしたが、長い間夢見ていた特徴的な光景を楽しむことができ、大満足です。
列車が行ってしまうとやることもないので、少し街を歩いてみることににします。線路に平行して走る道路を歩いていると市場があり、その中を進んでいくと先ほどの線路が現れ、線路の向こう側にも続いていました。どうやら、もともと線路の両側にあった市場が拡大するスペースを求め、線路の上まで侵蝕していってしまったというのが、この線路市場の成り立ちのようです。
時刻も12時近くになり腹も減ってきたので一軒の食堂に入り、タイの屋台らしい、スープ麺にツミレやらかまぼこやらが入ったものを食べました。素朴な味がおいしいです。
列車の去ったメークローン駅
昼食を食べてしまうといよいよやることがなく、駅に戻って列車の姿のなくなった構内を観察したりしてみますが、次の列車の到着までまだ2時間以上あり、時間を持て余してしまいます。
線路市場はすっかり市場モードで、あんなところを列車が通過していったとは信じられません。
駅構内の屋台の後ろにはタイで活躍する鉄道車両の幕がかざってありました。
その中に見つけたこの車両。元JRのキハ58系で、日本で引退したのちタイに譲渡されたものです。残念ながらタイでもそれほど長い期間は活躍せずに引退を迎えたとか。
1日4往復しか列車はありませんが、メークローン駅には駅員さんがいて窓口が営業していました。
駅の終端側からホームをみたところ。咲き誇る花とオレンジの瓦、そしてタイ国旗が南国らしさを醸しています。
ここにも線路にトリ鉄がいました。線路の終端側はすぐ川になっています。
予定では次の列車の到着を再び市場の中から眺め、その折り返しに乗って車内から市場を眺め、バンコクに帰るつもりでいましたが、あまりにも待ち時間が長いのでどうしたものかと思っていると、乗合バンでバンコクに戻れることを教えてもらいました。
駅から5分ほどの乗り場に行くと、ちょうどバンコク行きが出るところで、乗り込むやいなや出発しました。車内は10人ほどが乗っていて満席です。
街を抜けて高速道路に入ると、先ほどの列車とは比べものにならないスピードで走ります。バンコクまでは1時間ほどだそうです。これでは、鉄道でバンコクに行く人なんていないだろうな、と、一抹の寂しさを感じますが、あののんびりとした鉄道が、そして終点で繰り広げられる市場畳みショーが、いつまでも変わらず残ってくれることを祈るばかりです。
2010年9月