そこに線路があるかぎり

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【スイス】<あの頃の鉄道風景> ルガノ湖畔からアプト式登山電車でイタリア国境の山へ モンテジェネローゾ鉄道の旅(2005年)

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スイス南部、イタリアとの国境にほど近いところに標高1701mのモンテ・ジェネローゾという山があり、ここには山頂近くまで手軽にアクセスすることができる登山電車が走っています。オレンジとブルーに塗られた2両編成のこの登山電車は、険しい勾配を登るためにアプト式が採用されており、ルガノ湖にほど近い始発駅から山頂駅までおよそ40分、林の中からやがて森林限界を超えた草原へと移り変わり、山々と麓の湖や町を望む、登山電車らしい車窓が楽しめます。
スイスとはいえ、イタリアのミラノからも1時間少々でアクセスできるので、ミラノからの日帰り旅行にも最適です。
そんなモンテジェネローゾ鉄道に2005年6月に乗車しました。

モンテジェネローゾ鉄道について

モンテジェネローゾ鉄道 Ferrvia Monte Generoso は、山麓のカポラーゴラーゴ Capolago Lago 駅から山頂のジェネローゾヴェッタ Generoso Vetta 駅まで、全長9㎞を結ぶ鉄道です。レール幅は800㎜という狭さのナローゲージ(日本のJRは1067㎜、新幹線は1435㎜)で、車両も小ぶりなものですが、およそ1300mの標高差を登り、最急勾配220パーミルという険しい勾配路線のため、レールの間に敷かれたギザギザした形のラックレールと車両についた歯車を噛み合わせて走る、アプト式が採用されています。

カポラーゴラーゴ駅とジェネローゾヴェッタ駅の間には3つの駅がありますが、スイス鉄道と接続する1つめのカポラーゴ・リヴァサンヴィターレ駅が実質的な始発駅となっていて、2005年6月時点ではカポラーゴラーゴ駅とカポラーゴ・リヴァサンヴィターレ駅の間は1日1往復しか運転されていませんでした。2024年6月現在、モンテジェネローゾ鉄道のウェブサイトを見ると、時刻表では山麓側の駅は単にカポラーゴ駅とだけ表記されており、駅の説明では、スイス鉄道の駅舎と共用、と書かれているので、これがカポラーゴ・リヴァサンヴィターレ駅のことかと思います。カポラーゴラーゴ駅については、時刻も含め表記がまったくないので、もしかすると現在は全列車がカポラーゴ・サンヴィターレ駅発着となっているのかもしれません。
なお、ラーゴというのはイタリア語で湖のことで、カポラーゴというのが町の名前、その中にある2つの駅名を区別するため、カポラーゴの町の湖の近くにある方の駅を、カポラーゴラーゴと名づけたのだと思われます。

2005年6月時点のモンテジェネローゾ鉄道時刻表

カポラーゴ・リヴァサンヴィターレからジェネローゾヴェッタへ

モンテジェネローゾ鉄道へは、スイス鉄道のカポラーゴ・リヴァサンヴィターレ駅から乗り換えることができます。
この駅は普通列車しか停車しない小さな駅ですが、スイス南部の中心都市ルガノや、イタリアとの国境駅キアッソから普通列車でおよそ15分、イタリアのミラノから特急列車と普通列車を乗り継いでも1時間少々と、アクセスのしやすいところです。

私はミラノからチューリッヒ方面の特急列車に乗り、キアッソで普通列車に乗り換え、このカポラーゴ・リヴァサンヴィターレにやってきました。

山が迫っているカポラーゴ・リヴァサンヴィターレ駅を、普通列車がルガノ方面へ向けて発車していきます。左手の少し先にはもうルガノ湖の湖岸があります。

ここでモンテジェネローゾ鉄道に乗り換えます。スイス鉄道の駅を出ると、目の前に路面電車のようにモンテジェネローゾ鉄道の乗り場があります。ちょうど列車が近づいてきました。

発車時刻まではまだ時間があるのでおかしいな、と思っていると、車内には乗客の姿はなく、列車も目の前を通過して走り去って行ってしまいました。回送列車だったようです。

しばらくすると、山のほうからふたたび列車がやってきました。

満員のお客さんが乗っています。これが折り返し、ジェネローゾヴェッタ行きの列車になります。

スイス鉄道の駅舎の目の前に停まるモンテジェネローゾ鉄道の列車。

静かだった駅前が一気に賑わいました。

列車の到着が14:10、折り返し列車の発車が14:15と、たった5分の停車時間で列車はふたたび山登りに挑みます。

2つある途中駅のうち山頂側のベラヴィスタで山を降りてくる対向列車と待ち合わせ。この駅の駅舎はレストランになっており、山の中でのんびりとおいしい料理が楽しめるようです。

霞がかかってしまってはいるものの、ルガノ湖を見下ろすことができました。

坂を下って、対向列車がやって来ました。

車内が狭いため、列車の山頂側には、大型荷物搭載用の小さな貨車が連結されています。

ジェネローゾヴェッタは霧の中

ラヴィスタを出ると10分ほどで終着のジェネローゾヴェッタに到着。眺望が楽しめる駅のはずですが、あいにく霧に覆われてしまっています。
駅前には、こんな山の上とは思えない大きな建物があり、レストランになっています。

駅には多言語で歓迎の言葉が書かれた看板が。Yokosoもありました。
駅の近くを少し散策してみると、ヤギたちがお出迎え。

黄色い花咲く草原。この霧がなかったら、向こうにはさぞ美しい景色が広がっているのでしょう…

ジェネローゾ山を下り ルガノ湖の湖畔へ

折り返しの列車に乗って山を下ります。少しだけ霧が晴れて、麓の景色も見えるようになってきました。

ルガノ湖が見えました。氷河に削られた谷にできた湖です。

ラヴィスタでふたたび列車行き違い。この鉄道は右側通行です。

トンネルは架線のスペースだけ上に広げたかのような山形をしていました。

岩にコンクリートを塗り付けただけのようなワイルドなトンネルも。

麓の町が大きく見えてきました。

クネクネと続く線路。

急な斜面の岩を削って線路を敷いています。

カポラーゴの隣町、メンドリシオの町並みを見下ろして、列車は一路カポラーゴへ。

林の中に、鹿かカモシカか、動物の姿が見えました。

1日1往復しか列車が来ない カポラーゴラーゴへ

この列車は1日1本だけのカポラーゴラーゴ行きです。列車がカポラーゴ・リヴァサンヴィターレに着くと乗客は全員降りてしまい、車内には私一人が残されました。

カポラーゴ・サンヴィターレ駅からカポラーゴラーゴ方面の線路は、スイス鉄道の線路に並行しています。ここを通るスイス鉄道に乗るたびに、モンテジェネローゾ鉄道の細い線路がカポラーゴ・サンヴィターレ駅からルガノ湖畔のほうまで続いているのを見ていましたが、その終点は到底駅とは思えないただの引き込み線のようなところで、しかもその線路が途切れるのは、カポラーゴ・サンヴィターレ駅からはわずか数百メートルと思えるごく短い距離です。時刻表を見るとカポラーゴ・サンヴィターレとカポラーゴ・ラーゴの間の所要時間は10分となっており、だとすると、カポラーゴラーゴ駅はスイス鉄道から見ていた、湖岸に続く線路とは違う場所だと思われますが、スイス鉄道の車窓から見る限りでは、それと思われる分岐した線路などは見つけることはできず、果たして…と楽しみに乗っていると、列車はほどなくして停車し、ドアが開きました。ここはまさに、スイス鉄道から見ていた、引き込み線のような線路その場所でした。

カポラーゴラーゴ駅はなんの看板もなく、停車する列車は公園の遊覧鉄道か保存車両のように見えます。

目の前にはルガノ湖が広がります。

この駅の目の前には桟橋があり、ルガノ湖の航路が発着しています。おそらくカポラーゴラーゴ駅は、遊覧船との接続のために存在しているのだと思われます。時刻表を見れば、ルガノ市街を10:00に出た船はカポラーゴに10:51に到着し、モンテジェネローゾ鉄道のカポラーゴラーゴ発が11:05、逆方向では、モンテジェネローゾ鉄道のカポラーゴラーゴ着が16:20、船のカポラーゴ発が16:35、ルガノ市街着が17:30となっています。
私は16:20着の列車に乗ってきたわけですが、まだ桟橋には船の姿はありませんでした。

ほどなくして列車は走り去ってしまいましたが、ここからカポラーゴ・サンヴィターレ駅までは300-400m程度ですので、歩いても大した距離ではありません。

ちょうどスイス鉄道の普通列車が駆け抜けて行きました。

列車がいなくなったカポラーゴラーゴ駅。駅とはまったく思えない、ただの公園の片隅と言った風景です。右の生垣の向こうはすぐにスイス鉄道の線路になっています。

カポラーゴラーゴとカポラーゴ・リヴァサンヴィターレの間にはモンテジェネローゾ鉄道の車庫があり、ちょうど車両の入庫作業が行われていました。

2本の列車が庫内に収まりました。右手奥に見えるカポラーゴ・リヴァサンヴィターレ駅にも1本の列車が停まっているのが見えます。

カポラーゴ・リヴァサンヴィターレに戻って来ました。イタリアに近いこともあり、なんとなくイタリア的な明るい雰囲気を感じさせる光景です。

スイス鉄道のホームで列車を待っていると、なんとも古めかしい機関車がやってきました。保存されている旧型機関車を使ったイベント列車かと思います。

普通列車がやって来ました。

あいにくの天気で山頂からの眺望はありませんでしたが、険しい山に挑む登山鉄道の旅は楽しいものでした。ミラノからの日帰り旅行としても気軽に訪れることのできるモンテジェネローゾ鉄道、機会があればこんどは天気の良い日に乗って、素晴らしい眺望を楽しみながら、山頂の散策を楽しんでみたいと思います。

 

Railway | Ferrovia Monte Generoso

 

2005年6月

 

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