そこに線路があるかぎり

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【山梨県】<あの頃の鉄道風景> 前面展望が楽しい 初代フジサン特急の旅〔河口湖~大月/富士急行線〕 ~ バラエティ豊かな富士急行線を走る列車たち(2013年)

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富士山が世界遺産に登録された2013年、富士山の麓を走る富士急行線の特急列車「フジサン特急」に乗って河口湖へ。この当時のフジサン特急は初代車両が使われており、展望席から迫力の前面展望を楽しむことができました。行き交う列車はバラエティに富んでいて、観光路線らしい個性的な車両がたくさん。いまは引退してしまった懐かしい顔ぶれも多い、2013年の富士急行線の電車たちをご紹介します。

富士急行線フジサン特急

富士急行線山梨県の大月から河口湖を結ぶ、26.6㎞の私鉄です。大月ではJR中央本線と接続しており、首都圏から富士山麓へのアクセス路線という役割も担っています。「富士山に一番近い鉄道」というキャッチフレーズがつけられており、富士山や富士五湖富士急ハイランドなど富士山麓の観光地へのアクセスを担う鉄道としても知られています。

富士急行線には行楽輸送、通勤輸送のため、JRからの直通列車も設定されていますが、2013年当時定期運転されていたJRとの直通列車はすべて普通列車か快速列車でした。いっぽう、大月~河口湖の富士急行線内だけを運転する列車には「フジサン特急」と名づけられた特急列車の設定があり、観光客の人気を集めていました。

2002年に登場したフジサン特急は、特急専用の2000系車両の3両編成が使用されており、最前部または最後部に設けられた小田急ロマンスカーのような前面展望席が魅力でした。最前部または最後部、というは、2000系車両は3両編成が2本ありましたが、それぞれ下り方か上り方、どちらか片側の先頭部だけが展望席仕様となっていたため。それぞれの編成の展望席の位置は反対向きだったため、同じ下り列車でも、この列車は先頭が展望席、この列車は最後部が展望席、と、使用される編成によって展望席の位置が異なっていたのが特徴です。
これは、この車両がもともと6両編成で運転することを前提としていた、JRのジョイフルトレイン「パノラマエクスプレスアルプス」で、JRから富士急に譲渡されフジサン特急になった際、6両ではなく3両x2本に分割して使用されることになったため。パノラマエクスプレスアルプスは、昭和40年代に製造された国鉄の急行型車両、165系を改造して1987年(昭和62年)に誕生しました。3両編成の165系を2本つないだ6両になった状態での両先頭車に展望席を設け、中間に連結された先頭車はオリジナルに近い形態のまま残されていました。

車体の塗装は、フジサンをキャラクター化したイラストで埋め尽くされており、イラストのテイストもあえてヘタ感を出したものだったので、子供の落書きのようにも見え、正直、あまり格好のいいものではありませんでしたが、ユニークでユーモラスな外観は富士急ハイランドへ向かう若者や子供には特に人気があったような感じもします。

2000系フジサン特急の展望席つき先頭車両。

展望席の車内はこんな感じでした。運転席が2階にあるため、車両の最前部まで客席になっています。展望席の座席はリクライニングせず、サイズは小さめ、座り心地は固めなものでした。

展望席の後部には窓向きのソファを配したラウンジ席がありました。

通常の客席。シートピッチも広く、肉厚で座り心地の良い座席と、大型の側面窓で、景色を楽しみながらゆったりと列車の旅を楽しむことができました。改造された時代は、車内でカラオケを楽しみながら団体旅行をするというニーズが根強かったため、貸切列車として使われる際にカラオケが使用できるモニターとレーザーディスクが装備されていました。運転席に設置されたカメラからの前方の景色の映像を流すこともできました。ブラウン管のテレビモニターがレトロな雰囲気です。

展望席ではない側の先頭車。改造前の国鉄急行型車両の面影が濃く残っています。
ちょうど2013年は富士山が世界遺産に登録された年で、それを記念するヘッドマークが付けられていました。

大月駅フジサン特急同士の出会い

大月を夕方に出るフジサン特急に乗って河口湖に向かいました。この列車は、大月からの先頭が展望席になる編成なので、じっくり先頭の景色を楽しむことができます。
展望席は特急券のほかに展望席券が必要ながら座席自体は自由席だったため、先頭に座れるか不安でしたが、休日の夕方の下り列車はさすがに空いていて、難なく先頭の席に座ることができました。

車両の側面にもたくさんの富士山イラストが描かれています。

隣の線路に普通列車用の車両が入って来ました。ここはホームのない留置線で、ここに入ってきた車両は、次の運用までしばしの休息となります。
この普通列車の車両は6000形。山手線、京葉線で活躍したJRの205系が譲渡されたものです。どちらもいまは富士急行の車両ですが、どちらも元JRです。

 

駅の反対側の踏切から見たところ。フジサン特急は、後ろから見るのと前から見るのでは違う列車かと思うほど、印象が異なります。
左に見える架線柱はJR中央本線のもの。背後に見える山は岩殿山です。

いい加減に描かれたようなフジサン特急のイラストですが、連結器カバーの出っ張りを舌のように思わせたり、富士山の輪郭が展望席のワイパーからつながるようになっていたり、さりげなく凝っていたりもします。両目の間の窪みにはカメラがあり、運転席から見づらい列車直前の部分を運転席でモニターできるようになっていました。客先のテレビで流す前面映像は、このカメラからの映像ではなく、たしか別に運転席にそれ用のカメラがあったかと思います。

もう1編成のフジサン特急が入って来ました。

 

展望車同士がすれ違います。反対向きのため絶対に横に並ぶことがなく比べにくいですが、先頭の富士山イラストは、両編成でまったく違った顔でした。

 

行き交う列車は懐かしい車両ばかり

上りフジサン特急の到着を待って、下りフジサン特急は大月を発車しました。この当時のフジサン特急の途中停車駅は、都留文科大学前、富士山、富士急ハイランドの3駅。
富士急行線は全線が単線なので、途中の駅で上り列車と行き違います。都留市では5000系「トーマスランド号」とすれ違い。この5000系は、2019年に引退となりました。

木造の上屋と、植え込みの松の木が風格を感じさせる都留市駅に停車するカラフルなトーマスランド号。

三つ峠駅運転停車(ドアは開けず客扱いを行わない、運転上の都合での停車)。反対からやってきたのはJR直通の「ホリデー快速富士山」号。ホリデー快速富士山号は土休日に2往復が運転されていて、1往復が新宿~河口湖、もう1往復が大宮または小山~河口湖という運転区間でした。すれ違ったこの列車は新宿行き。車両は国鉄特急型の189系で、この編成は2018年に引退しました。

フジサン特急展望席から見るJR189系。

下吉田駅に到着。

この駅には引退したJRのブルートレイン「富士」の車両が1両保存されています。

下吉田はフジサン特急は通過する駅ですが、列車はスピードをゆるめ、やがて停車しました。三ツ峠につづく運転停車です。今度はどんな列車と行違うのかとワクワクしていると、カーブの向こうから姿を現したのはJRのお座敷列車「華」でした。この車両は2022年に引退しています。

富士山駅に近づくと、右にも線路があり、そこを青い電車が並走して行きました。

富士山駅は行き止まりのスイッチバック駅で、河口湖へはここで進行方向が変わります。右の列車は河口湖からやってきた普通列車の大月行。いま乗っている列車とは反対方向に向かう列車ですが、同じ方向に並走している奇妙な光景が楽しめるのはスイッチバック駅ならでは。

この普通列車に使われている1200形は1994年に元京王5000系を譲り受けたもの。富士急行ではスタンダードな車両でしたが、近年、元JR205系の6000系に置き換えられ、だいぶ数を減らしています。富士山型の塗り分けのあるこの青白の塗装は、1200形が富士急行に来た時からのオリジナル塗装。2023年現在、この塗装の車両はなく、もう見ることはできません。

富士山駅には工場が併設されており、そこにJR169系の廃車が1両置かれていました。フジサン特急2000形のルーツとなった165系と同型の車両で、部品取りなどに利用されていた車両です。現在は先頭部分だけがカットされ、オレンジと緑の昔の国鉄カラーに塗られて、下吉田駅ブルートレインの横に置かれています。

河口湖駅でバラエティ豊かな電車たちを見る

大月からおよそ50分ほどで終点の河口湖に到着。

駅の脇にはたくさんの留置線があり、色とりどりの電車たちが休んでいました。

ホームからスロープをおりて踏切へ、踏切を渡って駅舎に行く構造です。
スロープの柵の外、通って欲しくない部分にトゲトゲを置いているのは、実力行使的でおもしろいです。

留置線からJR189系がホームに入って来ました。さきほど三つ峠ですれ違ったホリデー快速富士山号の2本目です。

 

駅を出て、留置線に入る列車が通る引き上げ線にある踏切から河口湖駅に並ぶ列車を見ることができます。国鉄時代に製造された急行型車両、通勤型車両、特急型車両が並んでいるという、なにげないようで実はなかなか圧巻の眺めです。

河口湖駅舎の屋根の赤に、青ベースのホリデー快速富士山が映えます。

留置線にならぶ1000形、1200形。右は京王時代の塗装、左は以前の富士急行の標準塗装を復刻したものです。この色の京王線、懐かしいです。

1200形を改装した観光列車、「富士登山電車」。左側に見える赤帯の車両は、京葉線で活躍していた205系6000形の部品取り用に確保されている廃車体です。

 

 

左側の車線に京葉線京王線、聞き間違いやすいランキング上位に入ると思われる路線の車両同士が縦列停車しています。こんな光景が見られるのも、富士急行ならでは。

河口湖駅を出てすぐのところにある踏切から構内を見ると、さきほど停まっていたフジサン特急の姿はなく、6000形が2本とJR189系が1本という陣容に変わっていました。

河口湖駅は駅舎からいちばん遠い3番線だけホームが長く、JR直通の6両編成は3番線に発着します。ホームが長いとは言っても6両すべてが入るほどの長さはないので、6両編成では最後尾の車両の一部がホームからはみ出して停車します。

6000形普通列車大月行が発車していきました。

 

 

 

 

京王リバイバルカラーの車両は昔の京王線を彷彿とさせます。アイボリーに細い赤線が決まっています。

懐かしい車両たちがカラフルな装いで競演する2013年の富士急行線の休日は、昔に思いを馳せながら列車の旅が楽しめる、素敵な空間でした。

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2013年10月