そこに線路があるかぎり

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【山梨県】木のぬくもりを感じる落ち着いたインテリアが魅力 富士急行線の観光特急 富士山ビュー特急の旅 〔河口湖~大月/富士急行線〕(2022年)

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富士山麓の観光地へのアクセスを担い、観光客の利用の多い富士急行線には、3種類の特急列車が走っています。1つはJR中央本線から乗り入れてくる「富士回遊」で、JRの特急用車両を使用し、千葉や新宿と河口湖を乗り換えなしで結ぶ利便性の高さが魅力の列車です。残りの2つは富士急線内だけを走る「フジサン特急」と「富士山ビュー特急」で、どちらも富士急行線所属の専用の3両編成が使われていますが、それぞれ非常にユニークなデザインで、ポップな「フジサン特急」とシックな「富士山ビュー特急」と、対極のイメージの列車になっています。
2022年11月、三者三様の富士急行線の特急列車のひとつ、「富士山ビュー特急」に乗車しました。

富士山ビュー特急に使用される富士急行8500系

富士山ビュー特急について

運転区間は大月~河口湖 1日2往復運転される毎日運転の定期列車

富士山ビュー特急は、富士山麓電気鉄道が運営する富士急行線の全線、大月から河口湖まで26.6㎞を走る特急列車です。1日に2往復が設定され、これらは平日、土休日を問わず、毎日運転されています。なお、富士急行線内だけを運転されるもう1つの特急、「フジサン特急」は土休日のみの運転で、平日の運転はありません。

富士山ビュー特急の停車駅と運転時刻

富士山ビュー特急は大月と河口湖の間で、都留文科大学前、下吉田、富士山、富士急ハイランドの4駅に停車します。運転時刻は下記のとおりです。(各駅発時刻。終着駅は着時刻を表示)

富士山ビュー特急の乗車には特急券が必要 

富士山ビュー特急に乗車するには、大月~富士山間では乗車券のほかに特急券が必要です。富士山~河口湖間は特急券不要で乗車券のみで乗車できます。大月駅からの特急料金は以下のとおりです。

大月からの特急料金(大人):

都留文科大学前まで 200円
下吉田まで     400円
富士山まで     400円
富士急ハイランドまで400円
河口湖まで     400円

子供は上記の半額です。

富士山ビュー特急は3両編成 指定席利用には特別車両券が必要

富士山ビュー特急は3両編成で、1号車が指定席、2号車と3号車が自由席です。1号車はテーブルも備えたカフェのような内装の特別車両で、利用には特急券の他に座席指定の特別車両券900円(大人、子供同額)を別途購入する必要があります。特別車両券は空席にのみ発売されるので、必ず座ることができます。(満席になったら特別車両券はそれ以上は発売されません)特別車両ではウェルカムドリンクサービスがあるそうなので、飲み物を飲みながら優雅なひとときが過ごせそうです。
2号車、3号車の自由席車両は2人掛けの回転式リクライニングシートが通路の両側に並ぶ座席配置で、乗車券のほか特急料金のみで利用できますが、満席の場合は座れないこともあります。座れなかったとしても特急券は必要です。

土休日の特別車両はスイーツプラン専用席 土休日は通常の指定席なし 

1号車の特別車両は、土休日にはスイーツプラン専用車両となります。従って、土休日は特別車両券の購入だけでは利用することができず、スイーツプラン利用者以外は、2、3号車の自由席車を利用することになります。スイーツプランは「ハイランドリゾートホテル&スパ」のパティシエが手掛けるスイーツが楽しめるプランで、乗車とスイーツがすべて含まれたパッケージ旅行商品となっています。

富士山ビュー特急 特別車両(指定席/スイーツプラン)の予約方法

富士山ビュー特急の1号車特別車両は、以下のとおり予約できます。
<平日> 指定席(ウェルカムドリンクつき

 1. 富士急コールセンター(0555‐73‐8181)にて予約後、当日改札窓口にて購入。
 2. インターネットにて予約後、当日改札窓口にて購入
 3. お近くの旅行代理店(*1) にて購入
 *1 旅行代理店によっては取り扱っていないところもあります。
 4. お席が空いている場合は、当日窓口でも購入できます。

富士急行特急予約 (fujikyu.co.jp)

<土休日> スイーツプラン(パッケージ旅行商品

富士急トラベルにて申し込み
【TEL】0555-22-8877(営業時間9:00~18:00/月~金)
【WEB】富士山ビュー特急 スイーツプラン (fujikyu-travel.co.jp)

発売日   :乗車日の前月1日より予約開始、乗車日の3日前に受付終了
料金       :大人4,900円/小人3,900円 (運賃、特急料金等込)
利用区間:大月⇔富士山、大月⇔富士急ハイランド、大月⇔河口湖

なお、富士山ビュー特急の2号車、3号車は自由席のため予約は不要で、特急券は乗車当日に購入できます。

デザイナーは観光列車のデザインで有名な水戸岡鋭治

富士山ビュー特急のデザインは、JR九州をはじめとする全国の観光列車のデザイナーとして有名な水戸岡鋭治氏によるものです。和のぬくもりを感じるやわらかな風合いの中にも、時に遊び心や斬新さを取り入れた独特のデザインは、乗った人を驚かせ、旅を楽しくする列車として人気があります。

富士急行線では、富士山ビュー特急の他、富士登山電車用1000系電車、普通列車6000系電車などの車両のほか、下吉田や富士山などの駅も水戸岡氏のデザインが採用されています。

富士山ビュー特急の車内

3両編成のうち、富士山駅寄りの車両が1号車。この車両は特別車両で、平日は指定席、土休日はスイーツプラン専用席として利用されます。

ホームから覗いた1号車特別車両の円卓。円卓の他にも、向かい合わせの2人用テーブル、4人用テーブルなどがあります。

まんなかの2号車は車いす対応の自由席車。

木がふんだんに使われ、やわらかな照明に照らされて暖かみを感じる車内。

車端部には車椅子スペースも完備。

大月駅河口湖駅寄り(富士山でスイッチバックするため、大月と河口湖は列車の同じ側になる)の先頭、3号車も自由席。

インテリアは2号車と似ていますが、シートの色合いが2号車が赤系中心なのに対し、3号車は青系になっています。

河口湖行きの富士山⇒河口湖と、大月行の富士山⇒大月は、3号車が先頭となって走るため、前面展望を楽しむことができます。

3号車の運転席直後の席も自由席。座りたい場合は、発車前から並んだほうが良いでしょう。

日除けのカーテンはすだれ仕様。

デッキは黒を基調とした内装。乗車口の赤いマットがよく映えます。2号車には車椅子対応トイレも設置されています。

デッキや客室の壁にはイラストが飾られていて、ちょっとした美術鑑賞も楽しめます。

1号車は予約のない人は立ち入ることはできません。

JR東海の「あさぎり」用車両をリニューアルした富士山ビュー特急

富士山ビュー特急専用の富士急行8500系車両は、1991年に新宿と沼津を結ぶ特急「あさぎり」用として運用を開始したJR東海371系車両を2015年に富士急行が譲り受けてリニューアルしたものです。
あさぎり号は、小田急線とJR東海御殿場線を直通する列車で、1日4往復運転されるうち、小田急の車両とJR東海の車両が2往復ずつ使用されていました。あさぎり号で使用されていた小田急の車両は20000系RSEで、現在は富士急行線フジサン特急として活躍しています。あさぎり号が走っていた御殿場線は富士山がきれいに見えることでも知られている路線ですが、あさぎりで使用されていた2種類の車両が、両方とも富士急行にやってきて、また富士山を眺めながら活躍しているというわけです。

左が「フジサン特急」用富士急行8000系車両で、元小田急20000系RSEを譲り受けたもの。右が「富士山ビュー特急」用富士急行8500系車両で、元JR東海371系を譲り受けたもの。

かつて小田急線で、御殿場線で共に「あさぎり」号として活躍した仲間同士、また富士急行で仲良く肩を並べて働いています。

富士山ビュー特急に乗る

河口湖 9:40 ---> 大月 10:31 富士山ビュー特急2号

発車約10分前に乗車開始

乗車するのは河口湖発大月行の富士山ビュー特急2号。河口湖駅の2番線から発車します。隣のホームに停車している水色の帯の車両はJR中央本線から乗り入れてきたJR211系車両。私鉄の富士急行の駅で現JR東日本の車両と元JR東海の車両が並んでいます。

正面から見上げた富士山ビュー特急。曲線を多用した丸みを帯びた先頭部がかっこいいです。

ホームの横の車庫ではフジサン特急用8000系や普通列車用の元JR205系の6000系が休んでいるのが見えます。

まだ山には少し紅葉が残っています。

車庫にはJR205系を改装した富士急行6000系と、その6000系の前身である205系京葉線色の車両が停まっていました。京葉線色の車両は、おそらく部品取り用の廃車体と思われます。

発車のおよそ10分前、9時30分ごろに富士山ビュー特急のドアが開き、車内に入ることができました。発車20分前くらいの頃からドアの前でならんでいたので、3号車の運転席直後の席を確保できました。

後ろ向きで河口湖を出発 スイッチバックの富士山から先頭に

9:40、河口湖を出発。河口湖発車時点では1号車が先頭なので、3号車の運転席ごしに去りゆく景色を楽しみます。

河口湖から5分少々で富士山に到着。富士山ビュー特急は、河口湖から富士山までは特急券なしで乗ることができます。
反対のホームからは、交換待ちをしていた河口湖行き普通列車が発車していきました。

車内の電光掲示板には停車駅名と標高が表示されますが、「富士山 (標高809m)」という表示を見ると、あれ、富士山ってそんなに低い山だっけ…?と思ってしまいそう。

富士山ではスイッチバックして進行方向が変わります。運転士さんと車掌さんがポジションを交代し、いままで車掌さんが乗っていた目の前の運転席には運転士さんがやってきました。

「ビュー」特急なのに意外と車窓が見にくい?

乗務員室はなかなか広いので、最前列に座っていても先頭の窓までは遠いですが、大きな窓のおかげで景色も良く見えます。ただ、乗務員室との仕切り窓に施された装飾がなければもっと前方の景色が楽しめそうです。

側面窓も、もともとはとても大きな窓だったものに木の枠をはめ、枠の外は黒いフィルムで目隠しされています。

側面窓を外から見たところ。グレーのパッキンで囲まれた長方形の部分がもともとの窓のサイズですが、黒いフィルムで小さな正方形の窓にされています。

371系は大きな窓が自慢の車両でした。

 




インテリアの雰囲気を出すために、窓を小さくして外の光が入る量を少なくするとか、あえてちいさな開口部から風景を見せるとか、デザイン上の必要性があるのはわかりますが、「ビュー」特急を名乗る列車で、車窓から雄大な富士山が眺められる路線を走り、もともとの車両が大きな窓を持っていたにもかかわらず、窓を小さくしてしまっているのはもったいないと思います。

雨の中を走る

河口湖では少し晴れ間も覗いたのですが、ふたたび外は雨模様となってしまいました。
雨粒をワイパーで拭いながら、谷を下り大月を目指します。

下吉田で交換した下り普通列車はとてもカラフルなラッピングの車両。

三つ峠中央本線からの直通特急「富士回遊」河口湖行きと行き違い。

低く垂れこめた雲に覆われた山を見ながら、一路大月へ。

虹をくぐって大月を目指す

最後の停車駅、都留文科大学前を出るころには、太陽も少し顔を出していました。

谷村町駅の裏手の紅葉した山は勝山城址

気がつくと、前方には虹が。

線路は虹をくぐって続いていきます。

麓のほうは紅葉もまだ残っていました。

相模川の上流部である桂川を渡り、見えてきた巨大な建造物はリニア実験線。ここでリニアモーターカーのさまざまな走行実験が行われています。この実験線はリニア中央新幹線の本線の一部にも組み込まれているので、開業後は営業路線の一部になります。この近くにはリニア見学センターもあるので、ぜひ見学に来てみたいと思います。

霧に覆われた紅葉もまた美しいものです。

谷の幅がだんだん狭くなってきました。終点の大月も近いです。

富士急行線唯一のトンネルは、高校のグラウンドの下をくぐるもの。

たくさんの信号が見えてくると大月駅はもうすぐです。

赤と白に塗られた6000系は「マッターホルン号」。

JRのホームを目前にして停車。終着大月に到着しました。

河口湖から26.6㎞、およそ50分ほどの旅はあっという間でした。

今回は自由席利用でしたが、今度はぜひ特別車両のスイーツプランやフジサン特急にも乗ってみたくなりました。東京からも近く、沿線に多くの観光地があり、車両の種類もバリエーション豊かで、雄大な富士山の眺めが楽しめる富士急行線は、季節を変え列車を変え、何度でも訪れてみたくなる魅力的な路線です。

 

2022年11月 

 

<富士山ビュー特急と同じ、水戸岡鋭治氏デザインの列車たち>

 

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