東京の東側、隅田川と荒川の間に広がる江東区にはたくさんの運河があります。かつては舟運に大活躍したこれら運河網も、時代の流れと共に他の運河と水面を分断されたり、埋め立てられてしまったものもありますが、それらの一部は公園として整備されています。そんな「元運河」の公園のひとつ、横十間川親水公園(よこじっけんがわしんすいこうえん)は、水上アスレチックやボート場があったり、和船の乗船体験ができたり、水に親しみ、水辺を楽しむことができる公園となっています。
2023年10月、横十間川親水公園を歩いてみました。
- 横十間川と横十間川親水公園
- 東京メトロ半蔵門線と都営新宿線の住吉駅からスタート
- 小名木川クローバー橋
- 水上アスレチック
- 水上アスレチックー和船体験乗船場
- 和船乗船体験
- 横十間川親水公園ボート場(尾高乗り場)
- 仙台堀川と交差
- 生物の楽園
- 田んぼと生垣
- 最終区間は散歩道
横十間川と横十間川親水公園
横十間川は、墨田区のスカイツリー近くの北十間川と、江東区の木場公園近くの大横川を結ぶ全長およそ4.5㎞ほどの河川でした。江戸時代1659年に開削された掘割で、江戸城から見て「横」に流れる、幅10間(約18メートル)の川であることから、横十間川と名づけられました。現在は北半分の約2.5㎞ほどが川として残っており、分断された南半分の約2㎞は横十間川親水公園として整備されています。横十間川親水公園はもともと川だったため敷地は細長く、全長1,990m、広さ5.1haとなっていて、散歩するのにも程よい距離です。
東京メトロ半蔵門線と都営新宿線の住吉駅からスタート
散歩のスタートは地下鉄住吉駅。東京メトロ半蔵門線と都営新宿線の2路線が乗り入れる駅です。東京メトロ半蔵門線が南北に、都営新宿線が東西に走り、住吉駅で交差しているのですが、横十間川親水公園へはこの駅の南端にあるB1出口の利用が便利です。
住吉駅の半蔵門線ホーム。ホームは渋谷方面が上層、押上方面が下層の2段になっています。上下層とも列車が発着するのはホームの左側だけで、右側は柵があり、車両の留置線として利用されていますが、ここはこれから建設される豊洲への新路線用のホームになる予定です。
住吉駅B1出口を出ると目の前に地図があります。
この地図は左が北、上が東で描かれています。左右に通っているのが横十間川。まずは小名木川との交点にある小名木川クローバー橋を目指します。クローバー橋すぐ南にある水上アスレチックが、横十間川親水公園の北端となっています。
住吉駅と横十間川の間の広大な緑地は猿江恩賜公園で、昔は貯木場だったところです。
小名木川クローバー橋
住吉駅B1出口から歩いて10分少々で小名木川クローバー橋に到着。ここは東西に通じる小名木川と南北に通じる横十間川が交わる場所。クローバー橋はX字状に架かっており、川の交点のすべての岸同士を結んでいます。
橋の下はハゼなどの良い釣り場になっているそうで、いつも釣り人の姿を見かけます。
墨田区、江東区の一部の河川は、水害対策のため隅田川や荒川などの水面より1m低い水位となっており、西側の扇橋閘門(こうもん)、東側の荒川ロックゲートの2か所の閘門(水位差のある水面間を船が行き来するために設けられた、船のエレベーターのような施設)の他は、外部河川と分断されています。
横十間川、小名木川を通り、扇橋閘門での船のエレベーター体験ができたクルージングのお話は下記の記事をどうぞ。
クローバー橋で交わる小名木川も横十間川も、低水位に保たれている河川です。
橋の上から東方向の眺め。川は小名木川です。これをずっと進むと旧中川にぶつかり、その先に荒川ロックゲートがあります。前方に架かる大きなトラスの橋は、JRの貨物線のもの。
北側の眺め。川は横十間川です。スカイツリーがきれいに見えます。
西側の眺め。川は小名木川。この少し先に扇橋閘門があり、そこから向こうは水位が1m高くなります。
南側の眺め。川は横十間川。すぐ目の前にみえるのが水門橋。橋といいながらも川はここで行き止まりになっていて、その向こう側が横十間川親水公園です。
手前の横十間川、小名木川よりも、奥の横十間川親水公園のほうが水位が高い為、手前の低い水位のほうに向かって水を流し、ごく小規模な水力発電をしているのだそうです。水色のしずく型のものには「マイクロ水力発電」と書かれ、その発電量が表示されます。
水上アスレチック
水門橋の上から南方向を見ると、すぐ目の前に広がっているのが水上アスレチックです。年末年始を除く通年開設されており、料金は無料です。水深は20㎝ほど、小学生低学年でもひざ下程度の水位です。
横十間川親水公園 水上アスレチック
住所 :東京都江東区北砂1-2先
営業日 : 点検日、年末年始(12月29日~1月3日)を除く毎日
点検日は原則毎月1日、15日。土日祝日の場合は翌日。
ただし、上記以外の日程で点検日が設定されることもあるので要確認。
営業時間: 午前9時から午後4時30分
料金 : 無料
利用できる人: 小学生以上。ただし、小学生未満の幼児や体の不自由な方でも、保護者の付き添いがあれば利用可能。
横十間川親水公園水上アスレチック|江東区 (koto.lg.jp)
水上アスレチックには5つの遊具があります。
ターザンロープ。全区間が陸上に設置されていて、5つの遊具の中でも唯一水上感がありませんが、スカイツリーを見ながら楽しめるのが魅力。
ぐらぐら橋。浮橋になっていて、渡ると揺れます。
UFOクライム。鎖につかまりながら足場の円盤を渡って行きます。
ウキウキ渡し。フロートに乗り、ロープをつかんで進みます。
GoGoロープ。丸い椅子に座って、ロープを手繰りながら進みます。
その他、他の公園でもよく見るスプリング遊具もあります。
水上アスレチックは川の水を利用しているそう。舐めてみてはいませんが、おそらく塩水なのではないかと思います。
真夏に来た時は水着着用の子どもが多く、水に落ちないようにハラハラしながら遊ぶというよりは、完全に水遊びになっていました。遊んだあとにしっかり体を洗うのが大切です。
遊び終わったあとに体を洗うシャワーもあります。(木の幹に擬態している柱)ただ、10月に訪れたときには使用中止となっていました。盛夏だけ使用できるのか、それともたまたまこの日は使用できなかったのかはわかりません。
グラグラ橋の隣には対岸と行き来できるしっかりとした木橋があり、そこを境に向こう側が親水公園の川になっています。ここから水を引いているのでしょう。
境界の橋の上から。左が水上アスレチック、右が親水公園の川。
水上アスレチックー和船体験乗船場
水上アスレチックを後に、南へ向かって横十間川親水公園を歩きだしましょう。
この地図は北が左。水上アスレチックから南へ進み、途中仙台堀川公園と交わったあと東へ針路を変え、大横川につきあたるまでが横十間川親水公園です。
水上アスレチックから南方向をみたところ。
200mほど歩くと岩井橋という橋がありますが、この橋は改修工事中。手前の仮設の橋を渡っていったん公園から出なければなりません。
仮設の橋から北側の眺め。川沿いは緑が多いです。
仮設の橋から南側の眺め。すっかり水が抜かれています。
岩井橋の上を走る清洲橋通りを信号で渡り、公園に戻って北側を見たところ。水が鋼矢板で堰き止められているのが見えるとおり、ここから南もまた水が復活します。
南を見ると、遠くに和船が見えました。
和船乗船体験
この先の海辺乗船場というところで、和船に乗ることができます。和船は櫓漕ぎ技術の伝承を目的に活動する「和船友の会」という団体が運航するもので、乗船は無料。ただし、毎日運航しているわけではありません。
和船友の会 和船乗船体験
住所 : 東京都江東区海辺8-4先
営業日 : 5月~7月20日、9月~11月 毎週水曜と第2・4日曜
7月21日~8月、12月~2月 毎週日曜
3、4月 要確認
雨天、強風等、天候により中止の場合あり。
営業時間: 午前10時から午後2時15分
所要時間: 約20分
料金 : 無料
海砂橋の上からは、和船の様子がよく見えます。
和船乗り場。ここで乗船名簿に住所、氏名、電話番号を記入して受付します。
河童がお出迎え。
櫓が奏でる音を聞きながら、ゆっくり進む船に乗るのは気持ちがいいです。
乗船できるのは片道100mほどの区間を1~2往復。希望すれば、漕ぎ手体験も可能だそうです。
和船営業区間の終端部には立ち入り禁止のロープが張られています。ここから南は、ボートの営業区間。和船営業がない日なら、ボートも和船区間に入ることができるようです。
河童が鎮座。
水は意外と透明度があり、魚が泳ぐ姿も見ることができます。
横十間川親水公園ボート場(尾高乗り場)
ボート乗り場が見えてきました。
横十間川親水公園 ボート場(尾高乗り場)
住所 : 東京都江東区南砂1-1先
営業日 : 3月~11月の土、日、祝日
春休み、夏休み期間中の水曜を除く毎日
雨天、強風等、天候により中止の場合あり。
営業時間: 午前9時から午後5時
春休み、夏休み期間の平日は12時から午後5時
最終受付は午後4時30分
料金 : 100円/30分
種類 : 足漕ぎ 14艇
手漕ぎ 4艇
定員 : 足漕ぎ 2名(+幼児1名まで可)
手漕ぎ 3名
利用できる人: 小学生までは、中学生以上の保護者同伴要
和船営業と重ならない日は、海辺乗り場まで、海辺乗り場からの片道利用も可とのこと。
ここは尾高乗り場という乗り場です。さきほど見た和船の乗り場が、和船営業のない日は、海辺乗り場というボート乗り場として使われるようで、その時は海辺乗り場でもボートを借りることができ、乗った場所で降りるという乗り方だけでなく、海辺乗り場から尾高乗り場へ、その反対の尾高乗り場から海辺乗り場へという乗り方もできるそう。
券売機でチケットを買います。
手漕ぎボートは数が少ないですが、子供は足漕ぎボートに乗りたがるもの… 足漕ぎも、動物の頭がついたタイプと、そうでないタイプがありますが、子供は動物タイプに乗りたがるもの…
パンダの頭がついている分、重く、見通しも悪いですが、子供が喜んでいるという事で…
仙台堀川と交差
尾高ボート乗り場の先には、川の真ん中に島があり、あたりは鬱蒼とした木が茂っています。
この島は「野鳥の島」と名づけられており、鳥が棲みついているようでした。
野鳥の島近くには遊具が。
野鳥の島付近では仙台堀川と交差します。これは仙台堀川の東方向を見たところ。
仙台堀川の西方向は水面は行き止まりになっていましたが、何やら小屋がありました。
鳥小屋でした。
生物の楽園
仙台堀川との交点を過ぎると、横十間川親水公園の水面はいったん途切れ、歩行者用の道は葛西橋通りの下をトンネルでくぐります。くぐった先ではまた水面が復活し、「生物の楽園」と呼ばれるエリアになっています。その先で公園は右に90度折れ、東に向かいます。
水車小屋がありましたが故障中でした。
生物の楽園の水は今までと違い、緑色をしていました。
カメが石の上で甲羅干ししている横をカモがスイスイ泳いで行きました。よく見る公園の池の光景です。
サギも間近で見られました。
こういう池には放されがちですが、飼育生物の自然への放流は生態系への影響を与える大きな問題となります。放流系の2大巨頭、アメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)は2023年6月から放流禁止になりました。
生物の楽園をすぎると、公園は右に折れ、水面もなくなりました。ここで公園を出れば、東京メトロ東西線東陽町駅ヘは徒歩10分ほどです。
田んぼと生垣
少し行くと、江東区民田んぼの学校があります。
すでに収穫が終わっているようですが、紛れもなく田んぼです。
田んぼの先では通路が細くなり、右側には青々とした生け垣が。
ここは生垣の展示見本だったようです。
生垣の先にはブランコなどのある小さな遊具広場。
最終区間は散歩道
遊具広場の先で水面が復活。手前の太い配管から水が注がれているようで、水面は泡立っていました。
南北向き区間と異なり、東西向きの区間は柵も高く、水面も遠くなった感じです。
江東区の南北をつなぐ主要道路、四ツ目通りを渡ります。ここは橋ではなく、水面は行き止まりになっていました。
振り返って西を見ると、先ほど見た給水配管が見えます。
四ツ目通り。北へ行くと錦糸町駅、南へ行くと東陽町駅があり、バスも多く走っています。道の向こうの三角屋根のファミレスが、ひと昔前のファミレス華やかなりし頃のスタイルのようで、グッときます。
四ツ目通りを渡って西方向を振り返ったところ。
四ツ目通りの先も、水面が続いていました。
川沿いに散歩道は続いていますが、水面も見えにくく、明らかに南北向き区間よりも水に親しめない感じです。
一瞬ドキッとしたオブジェ。よく見ればコアラとゴリラ。
親水公園というより、ただの遊歩道です。
次の道との交差点でも、水面はいったん途切れます。
右に見えるのは豊住公園。
道を渡ると、川底から引き揚げられたという木が置かれていました。「川の記憶」と題され、木場として栄えた昔を思い出させるようなモニュメントです。
再び水面が現れましたが、それも短い区間で終わりのよう。そしてそこが横十間川親水公園の終端でした。
向こうに見える緑の欄干が大横川に架かる橋です。横十間川親水公園はここまで。
横十間川の流れの上から大横川方向を見ると、ポンプ場の建物が鎮座していました。
大横川。北方向。
大横川、南方向。
大横川の上にカーブして架かる橋。右に見えるコンクリートの壁の向こうに横十間川親水公園が続いています。
横十間川親水公園から排水されているのか、大横川が泡立っていました。
広大な木場公園の入り口があります。
大横川の川沿いをしばらく歩きます。
川沿いの歩道がなくなり、町なかを少し歩くと、東京メトロ東西線木場駅に到着。ここが今日のゴールです。
町の中にありながら、さまざまな形で水に親しめる横十間川親水公園は、休日に子供と気軽に出かけて楽しめるおすすめスポットです。
2023年10月