そこに線路があるかぎり

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【東京都】田んぼから住宅街をたどり緑あふれる湿原へ 都心から1時間で行ける癒しの風景 湧水をあつめた清流 矢川を歩く(2023年)

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暑い夏、緑の木々に囲まれて、澄んだ水の流れを眺めるだけでも、涼しい気持ちになるものです。そんな場所に出かけたくても、なかなか遠出はできないし…と悩んだときに出かけたい、都心から1時間で行くことができる清流のひとつに、国立市の矢川があります。湧き水を集めた澄んだ流れ、緑に囲まれた湿地帯の木道など、東京の住宅街のすぐ隣とは思えない自然豊かな風景が魅力の矢川を歩いてみました。

矢川について

矢川は、東京都立川市国立市を流れる小さな河川です。水源は立川市立川高校付近とされていますが、水源からしばらくは暗渠のため流れを見ることはできません。立川市羽衣町の矢川弁財天付近で暗渠を出た流れは、国立市泉の「矢川おんだし」と呼ばれる場所で府中用水の支流である谷保用水に注ぎます。暗渠を除いて全長およそ1.5㎞ほどなので、ぶらぶらと川の流れを眺めながら散歩するにはちょうど良い距離と言えるでしょう。
矢川は湧水が水源となっているので、市街地を流れる川でありながら、澄んだ水であることが特徴です。また、1.5㎞ほどの短い川でありながら、木道のある湿地帯や雑木林、住宅街、田んぼと、変化に富んだ景色の中を流れていきます。川に入ることができる親水公園になっている場所もあり、夏には川遊びをする元気な子供たちの姿が見られます。

JR南武線矢川駅からスタート

矢川散歩へは、JR南武線の、その名も矢川駅からスタートしました。矢川は、立川から南武線で2駅のところにあり、JR中央線の特別快速に乗って立川で南武線に乗り換え、あるいは、京王線の特急に乗って分倍河原から南武線に乗り換えることで、新宿からおよそ40分ほどで来ることができる近さです。なお、矢川には南武線の快速は停車しませんのでご注意ください。

矢川はホーム1面の駅です。出口はホーム川崎寄りにあるので、立川から乗る場合は前の方に乗ったほうが便利です。
駅前にファミリーマートとスーパーのいなげやがあり、散歩前に食べ物や飲み物を買うことができます。

矢川駅は、矢川の始点(暗渠の終わる地点)へも、終点の「矢川おんだし」へも距離はさして変わらないところにあります。どちらから歩くか悩みましたが、下流から上流へ辿ることにして、まずは矢川おんだしへ向かいます。矢川駅から矢川おんだしへは、およそ800mほどの距離です。

改札口を出て右の出口を降り、踏切のある駅前の道を南にまっすぐ歩きます。甲州街道を渡って坂を下り、中央高速が見えてきたところで渡る流れが谷保用水です。

右に曲がり、谷保用水沿いの道を上流方向に歩きます。

用水沿いにはのどかな風景が広がっています。用水は水量も多く、流れが早いです。農業用水として現役なことを感じさせられます。

矢川の終点 矢川おんだし

用水に沿って少し歩くと、右側から合流する流れが見えてきました。この合流点が「矢川おんだし」と呼ばれる場所です。矢川駅からはおよそ900m、歩いて10分から15分といったところ。

矢川おんだしでは、2本の流れが谷保用水に直角に注ぎ込んでいます。向かって右側が矢川、左側が清水川と呼ばれる流れです。

奥に見える雑木林のところは一段高い段丘になっていて、左の清水川は雑木林の手前で左に曲がって行きます。右の矢川は、この雑木林の中に続いています。矢川おんだしの「おんだし」とは「押し出し」という言葉に由来しているそうですが、一段高くなった地形にもひるまず、谷を刻んで貫く矢川が「押し出し」て流れてくるさまを見ることができます。

清水川をたどってママ下湧水(まましたゆうすい)へ

矢川おんだしから谷保用水の上流に少し歩くと、いずみ大通りという片側2車線の広い通りにぶつかります。この道を右に少し行くと右側に「ママ下湧水公園 80m」の標識がありました。せっかくですので、ママ下湧水にも立ち寄ることにします。

雑木林に田園風景、子供の頃に感じた夏休みのワクワク感が胸によみがえってくるような風景。
向こうに見えるビニールハウスの右端が矢川おんだしです。左に見える雑木林と田んぼの境目を清水川が流れていて、ビニールハウスの手前で右に折れた清水川は、矢川おんだしで谷保用水に注いでいます。

いずみ大通りの下をくぐり、清水川の上流へ。

崖のところどころに湧水があり、清水川の本流に注いでいます。

いずみ大通りをくぐったあたりには、整備されていて小さな公園になっています。流れに入って遊んだり、ベンチに座ってせせらぎを眺めたり、のんびり過ごすことができます。

公園から流れを渡って崖上に続く細い道がありますが、そこに説明板がありました。ママ下湧水の「まま」とは、崖のことだそうです。

流れは先ほどよりも少し細くなり、雑木林に沿って続いていきます。

やがて右側に竹垣が見えてきました。

竹垣の向こうには大きな湧水があり、ここが清水川の主な水源となっています。矢川おんだしからはおよそ300mほど。
手前にはU字溝を伏せて並べてあり、ここに座って足を水につけ涼をとることができます。ひんやりとした水が気持ちよく、暑さを忘れさせてくれます。いつまでも座っていたくなりますが、残念なことに蚊が多いので、ここで涼むときは虫除けが必須です。

崖の石の隙間などから水が出ているのかと思いますが、目だった湧き口もなく、どこからともなく水が出てきているといった印象です。

透明で清冽な流れは、見ているだけで暑さを忘れさせてくれます。水はここから右に流れて行きますが、左方向からも流入する流れがありました。

その水が流れてくる方向は、あいにく柵があり立ち入りができなくなっていますが、この先の崖にもそれなりの量の湧水があるのだと思われます。

矢川を上流へ

ママ下湧水から矢川おんだしへ戻り、矢川を上流へ辿っていくことにしましょう。矢川の流れがやってくる林の中を覗くと、林の中に小道が続いていますが、地図で見るとここは滝乃川学園という福祉施設の敷地のようです。いったん川から離れ、さきほどママ下湧水へ行くときに通ったいずみ大通りを北へ歩き、最初の角を右に曲がると、矢川の流れを見下ろす橋がありました。
橋から下流方面を見たところ。台地に谷を削り「押し出し」て流れていく矢川が見えました。

橋から上流側をみたところ。下流側ほどではありませんが、地面を削り、小さな谷を形成しています。

橋からも矢川に沿った道はなかったので、川に並行した道を歩いて行くと、甲州街道に出ました。流れは道の下をくぐり、向こう側に続いています。

甲州街道から下流方向を見たところ。

甲州街道の横断歩道を渡り、上流側に来ました。ここからは川沿いに道があります。

小さな橋や洗い場が並んでいます。矢川は昔から、この辺りに住む人たちの生活の一部なのでしょう。

やがて正面に学校が見えてきました。国立市立国立第六小学校です。

この小学校に突き当たると、矢川の流路は90度向きを変えます。

小学校から川辺に出る通用口がありました。矢川の清流は、小学生たちの生きた学びの場になっているのでしょう。

清流で水遊びが楽しめる 矢川いこいの広場

小学校の敷地に沿ってふたたび90度曲がると、河岸に公園があります。「矢川いこいの広場」です。

川に向かって階段状に整備された河岸からは流れに入ることができ、夏の休日には多くの子供達で賑わいます。深さはおとなのひざ下程度ですが、小さな子供なら浮き輪に乗って流れることも可能で、思った以上に楽しい水遊びができるのが魅力の公園です。なんといっても湧き水が集まった澄んだ川で遊べるというのは、とても価値のあることだと思います。

矢川いこいの広場にはトイレや東屋もあり、水遊びの場としても、散歩の休憩場所としても有難い場所。

流れを覗けば、魚や貝、ザリガニの姿も見つけることができました。希少な生物も生息しているので、ザリガニ以外は捕らないほうが良いかもしれません。

矢川いこいの広場へは矢川駅から歩いて10分ほどです。

いこいの広場から先も、流れに沿って道が続いています。

教育委員会による解説板がありました。

いこいの広場から150mほど歩くと、流れはいったん道から外れますが、そのまままっすぐ道を歩き、角を右に曲がると再び姿をみせ、橋の下をくぐって道の左側にでます。

橋の上から下流をみたところ。

ホタルも生息しているそうです。雑食で大食いの鯉の放流をしないことは、生態系を守るために大切なことです。

橋の先で流れは左に折れ、雑木林の中に入って行きます。自治体も、このあたりで国立市から立川市に入ります。

まるで高原のような風景が広がる 矢川緑地保全地域

この先の雑木林は、矢川緑地保全地域として保護されているもの。この保全地域では、生き物を採取したり、流れの中に立ち入ることはできません。

緑地に入ると、雑木林のみちの案内が。これまで矢川沿いを歩いてきて、魅力的な風景にたくさん触れてきたので、今度はこの案内のコースを歩いてみたくなってきました。

矢川緑地保全地域には、矢川とその周辺の雑木林のほか、湧水による池や湿地などがあり、それほど広くはないながらも、変化に富んだ自然の景観を楽しむことができます。

保全地域には湿地帯もあり、その上に木道がしつらえられています。

ガマの穂がたくさん。

国立でこんな風景に触れられるなんて。

清流に林、湿地に木道と、まるでどこかの高原に来たかのような風景が、都心から1時間で来ることができるこの場所に広がっていることは、とても素晴らしいことだと思います。

矢川を見ることができる最上流 矢川弁財天

保全地域の中ほどから上流方向へは、矢川の本流に沿って歩く道はなく、立ち入り禁止となっていました。保全地域から出たところにある青柳大通りが矢川を跨いで走っていますので、矢川の本流が見える場所を探しに行ってみました。
右側に広がる木々が、矢川緑地保全地域です。

木々が生い茂り、よく見えませんでしたが、左に見える擁壁の下に、手前から奥に流れる矢川があります。

青柳大通りを渡り上流側を見てみると、矢川の流れを見ることができました。が、すぐ先で道路の下にもぐっています。ここから上流は暗渠になっているので、残念ながらこの先は矢川の姿を見ることはできません。

この地点でもかなり水の量は多く見えますので、暗渠にも多くの湧水が流れ込んでいるのだと思います。それらを見ることができないのは残念です。

矢川が見える最上流部の流れの横には矢川弁財天があります。

弁財天の横を通り、矢川の暗渠の上に行ってみましたが、ただの町の中の道路が続いているばかりでした。

ここで矢川散歩を終えることにします。このあたりまで来ると、南武線の矢川のひとつ立川寄りの駅、西国立が近いです。
西国立駅前には矢川緑地への道標がありました。

南武線西国立駅。奥が立川、手前が川崎方面です。かつてはこの駅には機関区が併設されていて、青梅線南武線を走る電気機関車たちが休んでいる姿を見ることができたそうです。

都心から1時間の近さで、緑豊かな風景と、美しい湧き水を集めた清流の風景を楽しめる矢川は、気軽に出かけることができ、自然の有難さを感じられる癒しスポットです。町の中に残ったこの素晴らしい自然がいつまでも続くよう、大切に守っていきたいものです。

 

2023年7月