そこに線路があるかぎり

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【長野県】<あの頃の鉄道風景>ミニスイッチバックがあった終着駅 湯田中駅 〔長野電鉄〕(2006年)

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志賀高原や、温泉に入浴するサルで有名な地獄谷、渋、安代、湯田中温泉など多くの温泉地への玄関口、湯田中駅は、長野電鉄長野線の終着駅で、長野駅から33.2㎞のところにあります。この駅ではかつて「ミニスイッチバック」と呼ばれた運転方法が行われていたのですが、2006年8月31日を以ってこの特徴的な運転方法は終了し、駅の改装工事とともに普通の終着駅に生まれ変わりました。
そんなミニスイッチバック終了直前の2006年8月、湯田中駅を訪れました。

スイッチバック式の駅

鉄道でいうスイッチバックとは、進行方向を変えて走行する線路の形態、あるいは運転方法のことを言います。ひとくちにスイッチバックと言っても、本線自体がスイッチバックしていて、先に進むためにはすべての列車が本線上で進行方向を変えなければならない通過不可能型のものと、本線にはスイッチバックがなく、本線から分岐した駅や信号場に停車する列車だけがスイッチバックし、通過する列車はスイッチバックすることなくそのまま本線を直進できる通過可能型のものがあります。前者は神奈川県の箱根登山鉄道などで、後者は長野県のJR篠ノ井線姨捨駅などで見ることができます。

勾配線区における通過可能型のスイッチバックが設けられた理由は、勾配区間に停車場を設けてしまうと、勾配区間でもしっかりと止まっていられるブレーキの性能と、停止状態からいきなり上り勾配に走り出すためのパワーが必要となり、それほど性能の良くなかった昔の鉄道車両では対応が難しかったためです。スイッチバック式の停車場は、勾配のある本線から分岐した平坦な線路に停車場が造られており、本線から停車場への分岐の反対側には平坦な引き上げ線が設けられていて、停車する列車は本線から分岐して停車場へ入り、バックして引き上げ線に入ったのち、再度前進し本線へ戻る、あるいはその逆の形で運転されていました。通過する列車は停車場へも引き上げ線にも入らず、そのまま本線を進んでいくので、通過列車に乗っていると駅があることすら気がつかないということもあります。

ミニスイッチバックと呼ばれた湯田中駅

2006年8月までの湯田中駅は、勾配を登りきった電車が、平坦になった駅に入るために少しバックするというスイッチバック駅でした。当時の長野電鉄の電車は3両編成と2両編成の2種類がありましたが、スイッチバックをするのは3両編成の列車だけで、スイッチバックの距離もおよそ10メートル程度という短いものだったので、「ミニスイッチバック」などとも呼ばれていました。
なぜ2両編成の列車はスイッチバックしていなかったのかというと、もともと本線からホームに直接入れる構造の駅のため、2両編成ならば本線から駅に入りそのまま停車することができたためです。3両編成の列車は、本線から駅に入るとホームには編成すべてが収まりきらなかったのですが、駅のすぐ先には踏切があるため、そちらの方向にホームを延ばすことができず、その代わりに反対方向の分岐した部分にホームを延ばしたものの、その部分には急勾配の本線からでは直接入れないため、いったん駅を通り過ぎ、少し戻って分岐した線路に入って、編成すべてをホームに入れるようにしたのです。

3両編成の特急列車で湯田中駅に到着

このころ、長野電鉄の特急列車は3両編成の2000系車両で運転されていました。普通列車には2両編成と3両編成があり、どの列車が何両かはわからなかったため、湯田中駅でのミニスイッチバックを体験するには特急に乗るのが確実と、長野駅から特急列車に乗り込みました。
急な上り勾配を走り、湯田中駅の構内に入ります。駅はホームが2面に線路が2本のつくりでしたが、左側に見える1番線のレールは錆びていて使われていないようでした。1番線ホームには改札口も見えますがこれは旧駅舎のものでやはり使われておらず、駅舎は2番線側にあるものが使われていました。

駅を通り過ぎ、踏切の真ん中で停車。線路はまだ続いていて、この先には車両留置線があったようですが、やはりレールは錆びついていて、もう使われてはいないようでした。

踏切の上で少々停車したのち、スイッチバックしてホームに入り、ドアが開きました。

転換クロスシートが並ぶ特急の車内。

湯田中駅をひとまわり

このときはあまり時間がなく、この折り返しの特急列車で長野に戻らなければならなかったため、発車までの短い時間に大急ぎで湯田中駅のまわりをぐるっと回ってみました。まずは駅を出て、さきほど一時停車していた終点側の踏切に回ってみます。ホームの先に1番線と2番線を結ぶ駅構内踏切があり、そのすぐ先に一般道の踏切があります。この踏切は湯田中の駅と温泉街を結ぶ道で、通行量も多くありました。

列車はホームの長さぎりぎりまで使って停車しています。

今度は長野側に回ってみました。本線が上り勾配で湯田中駅に続いていることがわかります。「湯田中温泉」と書かれた大きな看板が、観光地らしさを感じさせます。

長野側の先頭車を見ると、ちょうどレールの分岐の上あたりに停車していました。レールが銀色に光っている、内側に向かう線路が本線ですが、列車の停車位置を見ると、思ったほどスイッチバック効果は少ないというか、分岐器の位置をあと少しだけずらすだけでスイッチバックも解消できそうな感じがしました。

発車時刻が近づいたので、ふたたびこの特急列車に乗り込み長野に戻ります。出発時も、いったん行き先の長野とは逆方向に少し進み、分岐器が切り替わると長野に向けて本線を走り出しました。

湯田中駅は2006年9月1日から30日までの1か月間に改装工事があり、ホームの直線化と線路の1線化が行われました。これにより、3両の列車でも編成すべてが本線から直接ホームに入ることができるようになり、ミニスイッチバック運転は廃止されました。

 

2006年8月