函館から列車とバスを乗り継いで1時間ほどで行くことができる函館七飯スノーパークは、駒ケ岳を一望する景色のいいスキー場です。ゴンドラに乗って上った山の上からは駒ケ岳だけではなく、結氷した大沼、噴火湾や羊蹄山なども見え、絶景の中でスキーを楽しむことができます。
ゴンドラはスキーシーズン以外も営業してるので、函館観光の際に市内から少し足を延ばして、この景色を楽しむのもおすすめです。
2024年3月、そんな函館七飯スノーパークでスキーを楽しんできました。
函館七飯スノーパークへのアクセス
函館七飯スノーパークは、函館の北、大沼エリアの観光の中心地、JR大沼公園駅から無料送迎バスで行くことができます。函館駅から大沼公園駅へはJR函館本線の普通列車で40分から1時間ほど、特急「北斗」なら約30分ですが、普通列車の本数は非常に少ないので、特急利用が便利です。しかしながら、特急北斗は全席が指定席となっており、わずか30分ほどの短い区間の利用でも当然指定席を購入しなければならないので、割高になってしまうのが残念なところ。この区間の乗車券640円に対し、特急利用のために必要な指定席特急券は1160円のため、普通列車なら640円で移動できるところ、特急だと1800円かかってしまいます。
函館駅は終着駅らしい頭端式の駅。改札口からまっすぐ伸びる通路の右側に直接ホームが接続しているので、駅の外から改札口を通ってホームまで、段差のないバリアフリーな構造になっています。
エスカレーターで上れる駅の2階にはコインロッカーがあり、大きな荷物も預けることができます。
乗車するのは10:05発 特急北斗7号札幌行き。
寒冷地らしく、改札口から各ホームへつながるメイン通路と、各ホームへの出口にはドアが設置されていて、保温対策もばっちりです。「ようこそ、函館へ!」の看板がありますが、ここは改札口から各ホーム方向への通路。ようこそ、というべき到着客の視線には入らないのですが…
特急北斗と、はこだてライナーが並んでいます。はこだてライナーは北海道新幹線の停車駅、新函館北斗駅と函館駅を結ぶ新幹線アクセス列車。新幹線の新函館北斗駅と函館駅の間は17.9㎞も離れており、普通列車で20分ほどかかります。そのため、新函館北斗駅と函館駅の間に新幹線を乗り入れさせることも検討されています。
カーブしたホームが特徴の函館駅。もともとは青函連絡船との乗り継ぎ駅であり、連絡線が活躍していた当時は、貨車をそのまま船に積み込んで輸送していました。そのため、駅構内から船に直接つながるように、線路を港の方に向けるためにカーブした構内になったのではないかと思われます。青函トンネル開業後は、本州とを結ぶ特急はつかり、白鳥や、寝台特急トワイライトエクスプレス、北斗星、日本海、急行はまなす、快速海峡など、多彩な列車が乗り入れて賑やかでしたが、東北新幹線の延伸、車両の老朽化、旅客ニーズの変化などによって徐々にそれらの列車は姿を消し、北海道新幹線の新函館北斗駅開業と共に、函館駅に乗り入れる優等列車は特急北斗だけになってしまいました。
特急北斗が発車する7番線の向かいの8番線は、函館駅のいちばん端のホームです。向こうを見えれば、函館駅に沿って広がる車両基地にとまる車両たちの姿が。
もう間もなく引退となるJR北海道のキハ40系の姿もあります。道内各地で広く活躍していた車両ですが、近年急速に新型車両に置き換えられており、函館地区は数少ない活躍の地です。
8番線はかつて、寝台特急北斗星や急行はまなすなど、道内と本州を結ぶ機関車牽引の客車列車が発着するホームでした。
函館から特急北斗にゆられ約30分、左手に結氷した湖ごしに駒ケ岳が見えてきました。この湖は大沼の隣の小沼です。この景色が見えると下車する大沼公園はもうすぐ。
大沼公園に到着。大沼観光の拠点となる駅ですが、ホーム1面に線路1本だけの小さな駅です。ホームが1つしかないので、札幌方面も函館方面も同じホームから列車が出ます。
札幌に向けて走り去る北斗。
洋風の意匠を取り入れた大沼公園駅の駅舎。観光客が多いからか、有人駅です。
駅を出ると、駅前ロータリーにマイクロバスが1台停まっていました。これが函館七飯スキー場への無料送迎バスです。
大沼公園駅から函館七飯スノーパークまではバスで15分ほど。車窓からはスノーパークがある山と、駒ケ岳がきれいに見えました。牛の飼育も盛んなようで、牛舎もたくさん見えました。ドライバーさんによれば、大沼牛というブランド牛だそうです。
駒ケ岳は、もともとは円錐型をしていましたが、噴火で中央部が崩れ、このような形になったのだとか。
平坦な道路を右に折れると上り勾配の道となり、山を少し上ったところで函館七飯スノーパークに到着。駐車場からは駒ケ岳がきれいに見えました。
ゴンドラで山の上までひとっとび
バスを降りて少し雪の斜面を登ると、ゴンドラ乗り場はすぐ目の前です。この建屋の2階がゴンドラ乗り場、1階がレンタルスキーとゴンドラ・リフトのチケット売り場になっています。この日は、ゴンドラ・リフトの1日券、スキー一式とウェアのレンタルがセットになった、手ぶらでパックを利用。手ぶらでパックは前日までに電話予約が必要ですが、一般11,000円、中学生・シニア10,000円、小学生7,000円で利用できました。
チケット売り場の奥にある更衣室でウェアに着替え、いざゴンドラに乗車。
振り返れば正面に駒ケ岳。
そして海の向こうに羊蹄山が見えました。まさか函館近くから羊蹄山が見えるとは思ってもいませんでした。まだ雪をかぶって真っ白な羊蹄山、麓のニセコは外国人に人気のスキーリゾートとして有名です。
駒ケ岳の左には、林の中に白い大きなエリアが。氷に覆われた大沼です。
山頂に着きました。右に見える建物は「PEAK CAFE」。この絶景を眺めながらのティータイムは最高でしょう。
ゴンドラを降りてすぐのところからは林に隠れて見えませんでしたが、PEAK CAFE付近まで来れば駒ケ岳もしっかり見えます。
この絶景に向かって滑り降りることができるのが、函館七飯スノーパークの醍醐味。
手前の海沿いの町並みは鹿部町、そして海の向こうにうっすら見えるのは室蘭市付近です。函館と札幌を結ぶ特急北斗は、この湾を左に大きく回り込んで向こう岸の室蘭付近を通ります。海なので仕方ありませんが、なんと遠回りをしていることかと思います。
下まで降りてきました。初心者の子供連れだったので1時間半ほどかけてゆっくり滑って来ましたが、景色も良く、滑りごたえのある楽しいスキーでした。コースは全体的になだらかで初心者向けですが、ところどころ部分的に急な斜面も。超初心者は無理して滑らないほうが無難かと思います。滑り下りる自信がなければ、ゴンドラに乗って上からの景色を楽しみ、またゴンドラに乗って降りてきた方がよいでしょう。
帰りは送迎バスで大沼駅へ
5時間ほどスキーを楽しみ、16:20発の送迎バスに乗車します。ナイター営業がある日は、この後に18:10発のバスも出ますが、この日はナイターはなく、この16:20発が最終の送迎バスでした。
ドライバーさんが、さっきあのあたりに白鳥がいたんだよなあ、と言うので目を凝らしてみると、林の手前に数羽の白鳥がいるのた見えました。きれいな景色だけではなく、白鳥まで見ることができて、子供もうれしそう。
帰りのバスは、大沼公園駅、大沼駅を経由し、新函館北斗駅まで行きます。函館市内に帰るので、本来なら新函館北斗駅まで乗って行くのが便利です。新函館北斗からであれば、はこだてライナーが出ているので、大沼公園や大沼に比べて函館までの普通、快速列車の本数が格段に多くなります。しかし、こんな機会でもないと訪れる機会もないかと思い、大沼駅で下車。本数が少ない普通列車ですが、少し待てば函館行きの普通列車にタイミングよく乗ることができます。
長年の風雪に耐えてきたであろう風格がただよう大沼駅。駅前にはセブンイレブンがあり、列車待ちのあいだに買い物もできます。
駅舎ごしに駒ケ岳も見えます。
左側が函館方面の列車時刻。列車は1~2時間に1本です。
ホームからも駒ケ岳が良く見えます。
大沼駅の前後では、函館本線は2つのルートに分かれていて、8の字のような形になっています。8の真ん中の線が重なるところにあるのが大沼駅。なぜ8の字状の線路になっているかと言うと、駒ケ岳に向けて勾配が急で、勾配に弱いSLが上りやすいように、勾配がゆるやかな迂回線がつくられたため。ここから札幌方面は「鹿部まわり」「赤井川まわり」の2ルートがあり、両者は森駅で合流します。行きに降りた大沼公園駅があるのは「赤井川まわり」のルート。そして函館方面も2ルートに分かれていますが、片方には途中駅がなく「藤城線」と通称されており、もう片方が「仁山まわり」などと呼ばれていて、七飯駅で合流します。新幹線接続の新函館北斗駅は「仁山まわり」のルートにあることから、藤城線経由の旅客列車はほとんどありません。
普通列車がやって来ました。これは赤井川まわりでやってきた、大沼止まりの列車です。
駅のホームから、雄大な自然を感じる風景が見られるのも北海道らしさです。
ホームの奥の林の向こうには、小沼の水面が見えます。
しばらくすると、林の中から函館行き特急北斗が顔を出しました。この列車も赤井川まわりの線路を通って来ました。特急は大沼駅には停まりません。
今度は右の線路から普通列車が。鹿部まわりのルートを通ってきた函館行きです。
札幌行き特急北斗の通過を待って発車。
車窓には夕暮れの小沼の風景が広がります。
大沼の次の仁山駅。
列車は小さな峠を越えて、函館に向かいます。
右のほうにわずかに函館山が見えます。
キハ40のデッキ。
新幹線乗り換えの新函館北斗駅。
青いモケットのシートが国鉄の雰囲気を今に伝えます。
函館に到着。入れ替わりに、オレンジの車両が出発していきました。
函館からのアクセスもよく、山と海と湖の絶景が楽しめる函館七飯スキー場は、冬のスキーだけではなく、それぞれの季節の美しい自然の風景を楽しんでみたくなる、とても魅力的な場所でした。
2024年3月