そこに線路があるかぎり

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【北海道】最後の上野発の夜行列車に乗って食堂車で朝食を 寝台特急「北斗星」の旅 〔上野~札幌/JR東北本線・津軽海峡線・函館本線・室蘭本線他〕(2015年)

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かつて上野駅からは多くの夜行列車が出発していましたが、1990年代から2000年代にかけてどんどん数を減らしてゆき、とうとう2015年に札幌行き寝台特急北斗星が廃止となったことで、上野から出る定期夜行列車は全廃されました。この北斗星は、予約なしで利用できる一般営業の食堂車を連結する最後の列車でもあったため、開放型寝台で眠り、食堂車で食事をする、という古き良き長距離夜行列車の旅も、2015年の北斗星の廃止と共に思い出のものとなってしまいました。

2015年1月、定期運転廃止があと2か月に迫った「北斗星」に乗って、北海道までの冬のブルートレインの旅を楽しみました。

寝台特急北斗星」について

寝台特急北斗星」は上野と札幌を結ぶ寝台特急列車で、1988年、青函トンネルの開通とともに誕生した、比較的新しい寝台特急列車です。史上初の東京と北海道を陸路で結ぶ直通列車であり、当時は珍しかった個室寝台車両も連結されていたり、食堂車ではフランス料理のコース料理が楽しめるとあって、豪華寝台特急として人気を博し、最盛期は1日3往復の定期列車が設定されていました。
やがて1999年7月、更なる豪華寝台特急カシオペア」の登場と共に北斗星の1往復が臨時となり、さらに残った2往復のうち1往復も2008年に廃止となって北斗星は1日1往復だけとなったのち、2015年3月には最後の1往復も臨時化、そして2015年8月には残った臨時も廃止となり、北斗星はその歴史に幕を下ろしました。
廃止の理由は、使用している客車が老朽化したことや、北海道新幹線の開業が挙げられます。北海道新幹線 新青森新函館北斗の開業に向け、青函トンネルとその前後の区間が在来線と新幹線の共用になりましたが、その工事時間の確保のため、また、工事完了後も青函トンネルを通過する在来線を極力少なくする方針があり(現在は貨物列車と不定期の豪華列車「四季島」のみが青函トンネルを通過する在来線)、人気のあった北斗星カシオペアも、2015年に廃止されてしまいました。

北斗星という名称は北斗七星にちなんだもので、夜行列車は天体名に関する愛称が多かったこと(「彗星」「明星」「金星」「銀河」「天の川」「ムーンライト」など)や、北へ向かう列車のイメージがあることなどからつけられたそうです。しかし、すでに北海道に函館と札幌を結ぶ特急「北斗」という列車があったので、私は新しい列車名というよりは、既存の列車名の変化球のような印象も持っていました。
上野~札幌間の運転距離は1,214.7kmで、2015年3月の定期運転廃止時点では、JRグループの定期旅客列車の中では最長のものでした。(ちなみに、東京~博多は1,174.9㎞)

予約困難な廃止前の「北斗星」 出発直前に寝台券を確保

北斗星はただでさえ人気がありましたが、廃止の発表と共にさらに人気に拍車がかかり、予約するのが困難な列車となっていました。私も何度も予約をチャレンジしたものの寝台券を手に入れることができなかったのですが、この前年の2014年、やはり3月で廃止となる「あけぼの」に乗ろうとしたときに、人気となっていた「あけぼの」の寝台券を発車3時間前に確保できたことがあったため、「北斗星」でも同様に、乗車したい日の発車3時間前に窓口を訪れ空席照会をしてみましたが、あいにくの満席。あきらめきれず、ダメもとで、と、車中泊の旅支度を整えて上野駅に向かい、北斗星の発車30分前に上野駅の窓口で聞くとB寝台に1席だけ空きが出ており、なんとか滑り込みで寝台券を確保することができました。窓口の係の方にも「いちおう旅支度をしてチャレンジしに来た甲斐がありました」と喜びを伝えると、「もし空きが出ていなかったらせっかくの支度が無駄になるところでしたし、よかったですね」と言われました。

上野駅地平ホーム 13番線から出発

北斗星」が発車するのは上野駅の13番線です。13番線は地平と高架の2層式になっている上野駅の地平ホームのいちばん端で、夜行列車が発着する際の定番のホームとなっています。昨年乗車した「あけぼの」もこの13番線からの発車でしたが、上野駅の定番風景だった13番線に停まるブルートレインも、北斗星の廃止と共に見られなくなってしまいます。

1988年の青函トンネル開業までは、上野駅で「札幌」の行先表示を見るなどという事は考えられませんでした。上野駅で見る「北斗星」「札幌」の表示は、あの当時、鉄道の新たな時代の幕開けを感じさせる、希望に満ちたものでした。

乗車して自分の寝台に荷物を置き、食堂車を覗いてみると、落ち着いた照明の中、ディナーの準備が進められていました。ディナータイムは予約が必要なので、予約を持っていない私が利用できるのは21時過ぎから始まるパブタイムと、翌朝のモーニングタイムです。

昔ながらの開放型B寝台の旅も貴重なものに

私の寝台は開放型B寝台で、昔ながらのブルートレインの仕様。いままで何度もこのタイプの寝台で旅を楽しんできましたが、この当時、この寝台で旅が楽しめるのは北斗星と、青森~札幌で運転されていた「はまなす」だけになっていました。はまなすは乗車時間が短いので、長い時間じっくり開放型B寝台での旅を楽しめるのは北斗星が最後の存在でした。

背もたれの上の折りたたみ棚、ハンガーを掛ける小さなフック、枕もとのライト、通路の折りたたみいす、窓の上の鏡… 寝台列車ならではの設備が、寝台列車の旅の気分を盛り上げてくれます。

B寝台には浴衣、枕、シーツ、カバー付き毛布、ハンガーが備え付けられていて、就寝時にシーツを自分で敷きます。

今夜の夕食はシウマイ弁当。窓の外を去りゆく灯りを見ながら、夜汽車の雰囲気の中で味わうお弁当は最高です。

お弁当のあと、一杯飲もうかとパブタイムの食堂車を訪れてみましたが、さすがの人気で満席でした。食堂車は明日の朝の朝食で利用してみることにします。
食堂車へ向かう途中の連結部には、北斗星のマークを間近に見られるドアがありました。

パブタイム営業の終了した食堂車を見に行ってみました。落ち着いた雰囲気のこの食堂車は「グランシャリオ」と名付けられています。グランシャリオはフランス語で北斗七星の意味とのこと。

目覚めたらそこは北の大地

寝台に入りカーテンを少しだけ開けて窓から夜の景色を見たりしているうちに眠り、気が付くと列車はすでに北海道の大地を走っていました。
ちょうど夜明けの頃、函館に停車します。ここでは機関車を付け替え、進行方向が逆向きに変わりますが、この前に夜中に通った青森でも進行方向が変わっていたので、函館からは上野発車時と同じ向きで走ることになります。

函館から先は非電化区間もあるので、ディーゼル機関車が2台で牽引します。

函館の発車は6時49分。

函館を発車。徐々に明るくなってきた車窓には函館山らしき山影が見えました。

雪の中を走って行きます。

寝台列車の大きな窓からみる雪景色は格別です。

右窓に内浦湾が間近に迫ると、森に到着。森は駅弁のいかめしが有名です。

森から先は、海の景色が楽しめる区間が多くあります。

寝台車のハシゴ越しの海の風景。

最後の食堂車で朝食を

北斗星の食堂車のパブタイムとモーニングタイムは、予約なしで利用できる一般営業の食堂車としては日本で最後のものでした。北斗星廃止後も、レストラン列車やビュフェなど、列車の中で食事が楽しめる列車は多くありますが、レストラン列車は予約を必要とします。JR東日本サフィール踊り子や、近鉄のしまかぜでは予約なしで軽食を楽しむことができますが、車内に厨房設備を持った食堂車で、予約なしで利用できる列車というのは北斗星が最後でした。

予約なしという事は順番待ちがあるわけですが、北斗星の食堂車は大変な人気で、6時半から営業しているところ、7時半ごろ訪れてみると、すでに30人待ちの状態でした。最初は自分の寝台に戻って待っていましたが、途中からは食堂車の隣にあるミニロビーでひたすら順番を待ち、とうとう9時ごろになって席に案内されました。混雑しているので相席ですが、やっと最後の食堂車を楽しむことができます。

メニューは和朝食か洋朝食の2種類のみ、どちらも ¥1,650です。

窓から明かりがさしこみ、昨夜覗いたときとはうってかわって明るい雰囲気の食堂車。席が空けばすぐに次の人が案内され、大盛況です。

ちょっとした旅館の朝ごはんのような和朝食。

食後に紅茶を楽しんで寝台に戻ると、終着札幌まではあと1時間たらず。

札幌に到着 16時間12分の旅が終わる

11:15、終着の札幌に到着。上野から実に16時間以上も同じ列車に乗っていましたが、まったく飽きることなく過ごすことができ、むしろまだ乗り足りない気もします。
先頭に立つディーゼル機関車には北斗星らしい星の塗装が施されています。

外から覗いた食堂車。

長距離ブルートレインの旅ができるのもこれが最後だと思うと、なんとも名残惜しい気持ちになります。

北斗星車両に啓示を受けて 昼食は蟹の寿司を

さて、お昼ご飯は何を食べようか、と考えていると、北斗星車両からの啓示がありました。

函館本線の快速列車に乗って小樽へ。

小樽と言えば寿司です。ちゃんと蟹の握りも入っていて、北斗星の車両に、カニ、スシとお告げを受けたメニューを食べることができました。

土瓶蒸しもついて、おいしい寿司ランチでした。

このあとは朝里川温泉の日帰り入浴でひと風呂浴び、新千歳空港から飛行機で帰路につきました。

旅情満点の、雪国へ向かう冬の長距離ブルートレインの旅。もう2度とこの風情を楽しむことができないのはとても残念なことですが、廃止前の最後の機会に北斗星に乗ることができた思い出は、いつまでも心の中に残っています。

 

2015年1月