秋の風情と美しい景色が楽しめる山に登りたいと思い候補地をいろいろ探しているときに目についたのが、山梨県の杓子山です。山中湖と河口湖の間あたりに位置する標高1597.6mのこの山は、山頂から大迫力の富士山が眺められるそうで、これはぜひ行ってみたい!と、目的地に決定しました。
登山コースはいくつかありますが、登りと下りを違うルートにしたかったのと、休日の高速道路の渋滞を避けたかったので、公共交通機関でアクセスしやすい不動湯から登り、忍野村に下りるルートをとることにしました。
新宿7:00発 中央本線 特急あずさ1号で出発です。中央線の特急には自由席がないので指定席を取っておく必要があります。行楽シーズンのあずさ1号は人気があって指定席がとりにくいですが、今日は普通の週末の日曜日、出発前日の夜でもまだ空席は多く、難なく指定席をとることができました。
7:55着の大月で下車し、富士急行線の河口湖行きに乗り換えます。次の列車は8:19発ですが、この列車は高尾始発でJRから富士急行への直通列車のため、富士急行のホームではなくJRのホームから発車します。あずさ号を降りたら富士急行線乗り場に続く改札口へ向かうのではなく、跨線橋を渡ってJRの4番線ホームに向かうのが正解です。跨線橋の横ではコンビニのニューデイズが営業していて、ちょうど中華まんが蒸しあがったところだったので迷わず購入。ひんやりした秋の空気の中で食べるアツアツの中華まんはおいしい!
さて、跨線橋を渡って4番線で河口湖行き列車を待ちますが、ここで注意しなければならないのはこの列車は大月までは6両編成で来るものの、大月で後ろ3両を切り離し、河口湖に行くのは前3両だけだという点です。1両にドアが3つついているので、ホーム足元の6両編成用乗車位置案内のうち、前から9つ分までのところで待つ必要があります。
8:10に高尾からの列車が到着、後ろ3両の切り離し作業ののち身軽な3両編成となった河口湖行きは、ゆっくりと大月を出発しました。
しばらくするとリニア実験線の下をくぐります。現在は実験線として走行試験が行われているこの区間もいずれ営業線の一部となり、東京~名古屋の新しい大動脈の機能を担うことになります。諸問題により工事が遅れているようですが、果たしてここに名古屋行きリニアが走るのはいつになることでしょうか。列車は勾配をぐんぐん登りながら富士山のふもとに向けて走ります。車窓からは富士山や三つ峠山など、山の眺めが楽しめます。
大月から38分、8:57着の下吉田で下車。ここは五重塔と桜と富士山という日本らしい写真が撮れる場所として外国人観光客に大人気の新倉山浅間公園の最寄り駅です。その来訪者の利便性を図るため今年の春から特急も停車するようになりましたが、残念ながらその矢先に外国人観光客が激減することとなってしまいました。特急停車の本来の思惑を発揮できるのはまだしばらく先になりそうです。
下吉田駅は古い駅を改装した清潔でおしゃれな駅舎でトイレもきれいです。駅を出ると目の前にどーんと富士山が広がります。
駅舎の横にはかつての寝台特急「富士」号で使われていたブルートレインが保存されています。「富士」つながりでここへ来ることになったわけですが、残念ながら「富士」の列車のマークがある面が富士山と向き合う置き方になっています。反対向きに置けば「富士」のマークと富士山を一枚の写真に収める、ということもできるのではないかと思うのですが。
下吉田から登山口の不動湯までは歩いて1時間30分ほどとのことですが、時間節約のためタクシーを使います。あいにく駅前にタクシーはいなかったので、電話で配車を依頼しました。それほど待たずに乗ることができましたが、運転手さんに聞いたところこの駅ではタクシーの常駐はないとのことなので、あらかじめ予約しておけば多少の時間の節約になりそうです。下吉田から不動湯までは10分少々、2,180円でした。
不動湯は皮膚病に効果があるという霊験あらたかな湧水を沸かしたお風呂に入ることができる宿です。谷間に位置していますが、しっかり富士山が頭をのぞかせていました。
9:45不動湯発。登山道のルートはいろいろありますが、山頂までの最短ルートだという大榷首峠(おおざすとうげ)を経由するコースをとります。ここから山頂までは標準コースタイムで 2時間ほど。
道端のマムシグサの黒と赤のコントラストが美しくも不気味さを醸しています。
日当たりのいい場所では青空と紅葉のコントラストが美しく、足元の枯葉を踏みしめる音とともに、この季節のハイキングの楽しさを感じさせてくれます。
ふと振り向くと葉の落ちた木々の隙間から富士山、少し歩けば林の向こうに富士山。
落葉の林にそそぐ秋の日差しときれいな風景が楽しいハイキングです。
富士山の右の裾野の向こうにはうっすら南アルプスも見えました。
頂上からの富士山の眺めを期待して杓子山に来ましたが、登っている途中でもこんなに富士山が楽しめるとは予想外でした。富士山の眺めが美しいポイントには「ビューポイント」の看板があるので、富士山がコース前方に見えなかったとしても気づかずに通り過ぎてしまうということもありません。
不動湯を出て1時間半ほどで大榷首峠(おおざすとうげ)に到着しました。富士吉田の街並みが見えます。
ここまではオフロード車なら通行できそうな感じの、そこそこ道幅のある林道を歩いてきましたが、ここからは細い山道となり、勾配もぐっと急になります。
日当たりも良く、相変わらずところどころで富士山の眺望が楽しめます。
この日は気温が高く山登りをしている身には快適でしたが、逆にその気温の影響からか富士山の周りには雲が湧きはじめてしまっています。頂上に着いたらお姿が見えなくなっていたというのでは残念すぎますので、少し焦りつつ頂上を目指します。
山の稜線の向こうに山中湖が見えます。手前の街並みは下山予定の忍野村。こちらの方角はだいぶ景色がモヤモヤしてきてしまいました。
目線の先に青空が広がると、頂上はもうすぐそこ。
12:05 杓子山登頂。不動湯からは2時間20分でした。富士山も何とかお姿をとどめてくれていてほっとします。名物の天空の鐘を鳴らし、登頂の喜びをかみしめます。
富士山とは反対側の眺め。道標の「絶景パノラマコース」の文字が気になります。
富士吉田の街並み。
都留市方面の眺望。
山頂にはテーブルとベンチが3か所ほどあったので、ゆっくり景色を楽しみながら昼食をとり、しばしくつろぎます。風も弱く日差しも暖かく、最高に気持ちがいいです。ただひとつ残念なのは、景色がモヤりがちということ・・・。
山頂では1時間少々休憩して13:15に下山開始。まずは鹿留山方面を目指しますが、鹿留山は杓子山の隣にあるピークなので、道は少し下ったかと思うと再び登り、ぜんぜん下山している気がしません。
少し歩くと、眺めのいい岩場に出ました。手前の山腹の紅葉と稜線の向こうにわずかに水面をのぞかせる山中湖。しばらく足を止めて眺望を楽しみました。
杓子山を出て30分ほどアップダウンを繰り返すと、子ノ神と呼ばれるポイントに着き、ここで鹿留山に向かう道と下山する道が分かれます。鹿留山頂までは10分ほどらしいので寄り道してみてもいいのですが、空に雲が増えてきていますし、そもそも鹿留山山頂は樹林に囲まれ眺望もないとのことなので、このまま下山することにしました。
子ノ神からは林の中の快適な山道・・・と思いきや、ロープを伝って2-3mの岩を下る箇所があったり、登山道上に熊のものと思われる黒い糞があったり(そこそこフレッシュなものでハエがたかっていて、しかもしばらく歩くとまた同じようなものがあり・・・)、緊張感のある下山となりました。
子ノ神から45分ほどで立ノ塚峠に到着。ここの分岐を内野方面に向かいます。今日のコースは道標がしっかりと整備されているのでコースが非常にわかりやすく、有難いことです。
立ノ塚峠からは特に険しくもなく、30分ほど林の中を歩くと舗装道路に出て山道は終了。そこから内野バス停を目指し忍野村の住宅地を歩いていくと、内野の隣の承天寺というバス停に出ました。あいにく次のバスまでは40分ほど時間があったのでタクシーを呼んで富士山駅に向かいます。タクシーの車中からも富士山がきれいに見えました。
承天寺から富士山駅までタクシーで3,890円、思ったより遠かったです。
富士山駅に着き時刻表を見ると、次の列車は16:59発の特急富士回遊44号新宿行き。ただ、全席指定のこの列車はあいにく満席とのことなので「座席未指定券」(席の予約なしの特急券)を購入しデッキに立って大月へ向かいます。座席未指定券は空席があれば着席できますが、この日はこの列車は見事に満席でした。
富士回遊号は3両という短い編成ですが、大月からは中央本線の9両編成の特急あずさ号やかいじ号に連結されます。大月からそちらの編成に乗り換えて着席できないかと思い、この富士回遊44号の連結相手のあずさ44号の空席状況を調べると、席の空きはあるもののけっこう混雑していました。しかし大月をこの富士回遊・あずさ44号のわずか5分後に出る臨時のかいじ76号という列車があり、こちらは非常に空いていたので難なく席を確保することができました。
暖かな日差しの中、落ち葉を踏みしめ紅葉と富士山の絶景を心行くまで楽しんだ秋登山、充実した休日となりました。
2020年11月15日
<徒歩>
不動湯 ---> 杓子山山頂 約2時間20分
杓子山山頂 ---> 子ノ神 約30分
子ノ神---> 立ノ塚峠 約45分
計 約5時間05分 (コース上での小休憩含む。山頂での大休憩は含まず)
<交通機関利用>
新宿 7:00 ---> 大月 7:55 JR中央本線特急あずさ1号
大月 8:19 ---> 下吉田 8:57 富士急行線普通 乗車券977円
下吉田 ---> 不動湯 タクシー 約10分 2,180円
忍野村承天寺 ---> 富士山駅 タクシー 約20分 3,890円
富士山 16:59 ---> 大月 17:35 富士急行線特急富士回遊44号 乗車券1,039円 特急券600円(座席未指定券。指定券でも同額)
大月 17:50 ---> 新宿 19:00 JR中央本線特急かいじ76号 乗車券1,342円 特急券920円(チケットレス割引)
計 13,210円
* 新宿~富士山駅・内野は高速バス利用なら 新宿~富士山駅 1850円、新宿~内野2,050円 (WEB料金)。ただし休日朝夕の中央高速は渋滞することが多く、遅れなどの影響を受ける恐れがあります。
* 土曜・休日の利用なら、大月までのJR線乗車券は、利用開始駅によっては休日お出かけパス(2,720円)利用がお得。(利用開始駅が休日お出かけパスの乗り放題エリア内で、利用開始駅から大月駅の片道運賃が1,360円以上の場合)休日お出かけパス利用でも、特急に乗るときは特急券を別途購入要。
<注意>
・最新の公共交通機関の時刻、運賃は、最新の時刻表等でご確認ください。
・山歩きのルート、コースは最新の情報をもとに充分ご検討の上、各自に合ったプランを立ててください。
・山歩きをされる際には必ず充分な装備と最新の地図を持参してください。