そこに線路があるかぎり

鉄道旅も、そのほかの旅も。子供と出かけた休日のこと、まち歩き、山歩き、グルメ、温泉、観光情報。国内・海外 紀行ブログ。

【千葉県】国鉄型ディーゼルカーで昭和レトロなローカル線の旅を いすみ鉄道急行列車の旅 〔大原~大多喜/いすみ鉄道〕(2022年)

スポンサーリンク

「総半島の中ほど、外房の海沿いにある大原から、内陸部の上総中野まで26.8㎞を結ぶいすみ鉄道には、国鉄時代の1960年代に製造された古いディーゼル車両が走っています。観光客向けの急行列車として走るそのレトロな車両は、10年ほど前にJRで廃車になった車両をいすみ鉄道が購入したもの。古き良き時代の汽車旅気分を味わう事ができる列車とあって人気を博していましたが、古い車両ゆえ老朽化も深刻だったようで、2両編成のレトロ車両のうちの1両、キハ28型車両が2022年11月末をもって定期運行を終了することが発表されました。
もうすぐ引退を迎えるこの国鉄ディーゼル列車の旅を楽しもうと、2022年10月、いすみ鉄道を訪れました。

いすみ鉄道について

いすみ鉄道第三セクター鉄道で、赤字のため廃止された国鉄JR東日本の木原線(きはらせん)を引き継いで、1988年3月から営業を開始しました。路線は大原~上総中野26.8㎞で、上総中野では市原市の五井までを結ぶ小湊鉄道に接続しています。いすみ鉄道小湊鉄道は、地図をみるとあたかも1つの路線のようにつながって外房と内房を結んでいるように見えますが、会社境界である上総中野で運行系統は分かれていて、両社を直通する列車は1本もありません。
いすみ鉄道の前身、国鉄木原線は木更津と大原を結ぶ半島横断鉄道として計画され、路線名もその完成予想図を先取りする形で、木更津と大原の一文字ずつをとって名付けられました。木更津側は、現在もJRとして残る久留里(くるり)線として上総亀山までが開業し、大原側は木原線として上総中野までが開業しましたが、上総亀山と上総中野の間は現在でも線路はつながっておらず、一抹の寂しさを感じます。
ただ、木原線の終点上総中野でつながる小湊鉄道内房側の五井が始発駅ですので、当初の目論見とは違えど、半島横断鉄道の一部を担うという役割は果たすことができています。
なお、小湊鉄道の小湊とは外房の鴨川に近い港町であり、小湊鉄道もまた、単独で半島横断を目指したものの半島中央部の上総中野までしか建設されなかったという歴史があり、いすみ鉄道小湊鉄道は、夢やぶれた同士が上総中野でがっちり手を握り合った、という状況になっているのです。

いすみ鉄道国鉄ディーゼルカー キハ28型とキハ52

いすみ鉄道国鉄ディーゼルカーは、1964年(昭和39年)製のキハ28型と1965年(昭和40年)製のキハ52型が1両ずつあり、これらの車両は連結されて2両編成で、土休日に観光客向けの急行列車として走っています。

大原寄りに連結されているのはキハ28型で、急行型車両と言われる、主に急行列車として使用されることを目的に製造された車両です。いすみ鉄道のキハ28型はJR西日本高山本線での使用を最後にJRから引退し、2013年からいすみ鉄道での活躍を始めました。車内はJR時代に急行用から一般用に改装され、一部座席をロングシート化されたりしていまうが、社内外の各所にオリジナルの急行用車両としての面影をとどめています。外装は国鉄急行型ディーゼルカーの標準塗装である、肌色の胴体に窓回りが朱色という塗り分けになっています。
上総中野寄りに連結されているのがキハ52型で、こちらは主に普通列車用として使用されることを目的に製造された一般型車両です。いすみ鉄道キハ52型は、JR西日本大糸線での使用を最後にJRを引退し、いすみ鉄道での運転は2011年から開始されました。キハ28型は片側にしか運転席がないのに対し、キハ52型は前後に運転席がついているため、1両だけでの運転も可能です。外装の塗装は国鉄一般型ディーゼルカーの旧標準色である、朱色の胴体に窓回りが肌色というツートンカラーです。

いすみ鉄道国鉄ディーゼルカー 一般型のキハ52(手前)と急行型のキハ28(奥) 2022年10月

いすみ鉄道 キハ52型の2種類の塗装

いすみ鉄道キハ52型は、導入当初は朱色と肌色のツートンカラーでしたが、2014年から2019年にかけては朱色一色に塗られ、2019年からふたたび朱色と肌色のツートンカラーに戻されるという変遷をたどっています。ツートンカラー、朱色単色塗り、どちらの色も旧国鉄の一般型ディーゼルカーの標準塗装なのですが、ツートンカラーが昔の標準色、朱色一色が1978年に改定された新しい標準色です。この朱色一色の新標準色は、首都圏地区の車両から塗り替えが始まったことから、首都圏色とも呼ばれています。
なお、朱色と肌色のツートンよりさらに昔は濃い青緑系のツートンカラーが標準色でした。この塗装はいすみ鉄道では再現されていませんが、いすみ鉄道キハ52型がJRで廃車になったときは、復刻塗装としてこの青緑系の旧標準色に塗られていたため、車両としては国鉄時代の3種類の標準色すべてに塗られた経験を持っています。

私にとってキハ52型は、小学生時代に林間学校や家族旅行で訪れた八ヶ岳山麓を走る小海線で活躍していた姿の印象が強い車両で、その当時はすでに朱色一色の首都圏色に塗られていたため、どうしても首都圏色に懐かしさを感じてしまいます。
1985年に見た、首都圏色のキハ52と急行色の2両編成のディーゼルカーが高原を走る小海線の列車が、2015年に訪れたいすみ鉄道でもそっくりそのままの姿で走っているのを見たときは、30年の時が一瞬にして逆戻りしたようで、大いに感動しました。

国鉄小海線 1985年8月 

30年前の小海線を彷彿とさせるいすみ鉄道国鉄ディーゼルカー 2015年8月

山の中を走るいすみ鉄道キハ52型とキハ28型2両編成  2018年5月

2022年11月で引退予定のキハ28型

2013年のキハ28型導入から仲良く2両編成を組んで活躍してきたいすみ鉄道国鉄ディーゼルカーですが、老朽化に伴い、キハ28型が引退することになりました。キハ28型は2022年11月を以って定期運用から引退、以降は団体列車などに使用され、2023年2月には完全引退の予定とのことです。
キハ52型については今のところ引退の発表はなく、キハ28型と違って前後に運転席があり1両でも運行できることから、今後もいすみ鉄道での活躍が続くものかと思われますが、キハ28型とほぼ同い年の古い車両ということを考えると、そう遠くないうちに引退を迎えるのかもしれません。今後の去就が注目されます。

キハ28型を先頭に走るいすみ鉄道国鉄ディーゼルカー 2018年11月

いすみ鉄道 国鉄ディーゼルカーの運用は土休日のみ1日1往復

2022年10月現在、いすみ鉄道国鉄ディーゼルカーは、土休日のみ1日1往復が運転されています。運用は、まず車庫のある大多喜から終点の上総中野へ行き、上総中野で折り返して全線運転して大原へ、そして折り返して大多喜に戻るというもので、路線の中間地点にある大多喜を始発・終着としているため、全線通して乗るには上総中野発大原行きの便に乗るしかありません。
なお、大多喜~上総中野は普通列車、大多喜~大原は急行列車としての運転となり、急行列車に乗車するには乗車券のほかに急行券300円が必要です。
2022年10月現在の運転時刻は以下のとおり。

大多喜  11:18  ---普通列車---> 上総中野 11:42
上総中野 11:52  ---普通列車---> 大多喜 12:16 / 12:20 ---急行列車---> 大原 12:53 ※
大原      13:20  ---急行列車---> 大多喜 13:52 
 ※ 上総中野発大原行きは大多喜で種別が変わりますが、通して乗車することが可能。

以前は、まずは大多喜から快速列車で大原へ行き、大原から上総中野の全線を1往復(大原~大多喜は急行、大多喜~上総中野は普通)、最後に大原発大多喜行き急行となって大多喜に戻るという運用で運転されていましたが、古い車両を少しでもいたわって長く活躍できるようにするためか、いつの間にか全線で1往復の運転というようになってしまいました。

原発大多喜行き急行列車に乗る 乗車待ちの整列は1時間前から

いすみ鉄道国鉄ディーゼルカーに乗るにあたって、どこからどの列車に乗るか迷いましたが、大原発大多喜行きの急行に乗ることにして、東京駅11:00発の特急わかしお7号に乗車。大原には12:13に到着しました。

JRの大原駅に隣接するいすみ鉄道の大原駅に行くと、12:19発の普通列車上総中野行きがホームで発車を待っていました。これに乗れば、途中の国吉駅国鉄型の大原行き急行列車と行き違いをするので、それに乗って大原に戻ってくれば少し長く国鉄型車両に乗っていられますが、大原駅に着いた国鉄型の列車はいったんすべての乗客を降ろし、乗車待ちの整列の順番に折り返し列車への乗車を案内する手順になっており、大原着の列車に乗っていて折り返し大原発に乗車をする乗客は、ホームの乗車待ち列の後ろに並んでもらうとのことだったので、引退を前に混雑が予想されることも考慮し、確実に座席を確保するため、大原で急行列車を待つことにしました。
12:19発の普通列車が出発したら、ホームの目印のところから並び始めて良いとのこと。急行大多喜行きは13:20発ですので、発車のおよそ1時間前から整列開始ということになります。なお、この日はなんとキハ28型は貸切となっており、一般の乗客はキハ52型にしか乗れないと言われました。私はそれほどこだわりはありませんのでキハ52型への乗車でも別に気にしませんが、キハ28型に乗ることをめあてに訪れた方も多いようで、その方たちはキハ28型に乗れないとわかりがっかりしていました。引退目前となれば乗りたいと思う人も多いわけで、そんなタイミングで定期列車で走る引退予定車両1車両をまるまる貸切にしていまうとは、知らずにわざわざ乗りに来た人が少しかわいそうな気がします。

大原駅のホームで整列して待つことおよそ30分、上総中野からやってきた国鉄ディーゼルカーがカーブの向こうから姿を現しました。

砂丘」というマークがついています。急行砂丘号は岡山と鳥取を結んでいた急行列車で1997年に廃止されましたが、キハ28型も使われていました。いすみ鉄道国鉄型は、日によっていろいろなヘッドマークを掲げて往時の急行列車をしのぶ演出がされていますが(マークなしの日もある)、千葉から遠く離れた中国地方を走っていた25年も前に廃止された列車の姿が目の前にあると、ここがどこなのか、そして今がいつなのか、よくわからなくなってきます。

かつては日本全国で広く見ることができた国鉄急行型ディーゼルカーですが、現在現役で本線上を走っているのはこの1両だけ。

側面に掲げられた行先表示は、「大原 急行そと房上総中野」となっていますが、この列車は上総中野までは行かず、途中の大多喜行きです。そと房という列車名も時刻表には特に記載されていないので、実用性というよりは、雰囲気重視の表示なのかと思います。こうしたホーロー板にペンキで書かれた行先表示も、最近ではすっかり見なくなりました。

古きよき国鉄の雰囲気漂うキハ52型の車内

大原までの乗客が降り車内整備が済むと、大多喜行への乗車が開始されました。キハ52型の車内は緑の壁と青いシートがならんでいます。これは国鉄の一般車両の標準的な内装の配色です。

10月とあって、ハロウィンの飾りつけがされていました。

ボックス席にある小さなテーブルの下にはセンヌキがついています。なんとも時代を感じる設備ですが、いすみ鉄道ではこのセンヌキの使用体験ができるよう、ビン入りの飲料も販売しています。

車内広告は昔のものが取り付けられていました。国鉄時代を感じる内装と、国鉄時代は日本ではそれほどメジャーではなかったハロウィンの飾りつけの組み合わせが、時空を超えたミスマッチ感を出しています。

大原を出発 のどかな風景の中を走る

13:20、大原を出発。左にカーブしてJR外房線の線路と分かれ、列車は房総半島の内陸へと進んでいきます。2両編成ながら一般客は1両にしか乗れないので大混雑するかと思いきやそれほどでもなく、ちょうど座席が埋まる程度の混み具合でした。

田園から丘陵へと入り、エンジンをうならせながら走って行きます。現代の軽やかなエンジンと違う、昔ながらの重厚なエンジン音が聴けるのもまたこの列車の魅力です。

ちいさなため池のほとりをかすめます。昔はこの池のほとりに釣りをするムーミンの仲間の人形が置かれていましたが、いつのまにか無くなっていました。

最初の停車駅は上総東(かずさあずま)。ここは行き違いができる駅です。ホームの造りがいかにもローカル線らしく、風情があります。

上総東ではすれ違う列車もなく、すぐに発車しました。ふたたびのどかな田園風景の中を走って行きます。

保存車両もある国吉駅で対向列車と交換

上総東の次の停車駅は国吉(くによし)。この駅には2両の保存車両が置かれています。

黄色い車両は2018年までいすみ鉄道を走っていたレールバス、そして肌色と朱色の車両は2012年までJR久留里線を走っていたディーゼルカーです。傍らには古いタイプの信号機、腕木式信号機が建てられていますが、これは現役の信号ではなく、昔を演出するダミーのもの。

国吉駅では大原行きの普通列車と行き違い。大原行きはまだ登場から10年も経っていない新しい車両ですが、顔のデザインはキハ52をモチーフとされ、すこしレトロな雰囲気も持ち合わせています。

やわらかな秋の陽を浴びて発車を待つ国鉄ディーゼルカー

4分の停車ののち、国吉を発車しました。

田園風景や神社の鳥居、お寺の山門などをみながら、終点大多喜を目指して走ります。

最後の停車駅、城見ヶ丘を出て川を渡るとやがて大多喜の町に入ります。

13:52、終点の大多喜に到着。

大多喜駅ネーミングライツで「デンタルサポート大多喜」という駅名になっています。

大多喜駅国鉄ディーゼルカーを眺める

わずか32分でしたが、古いディーゼルカーの旅を楽しむことができました。

 

よく見ればキハ28型は車体の傷みもあり、引退が近い車両であることを思い知らされます。

今後はこのキハ52型が1両で急行列車の任に就くのでしょうか。

秋晴れの空の下、陽の光を浴びる国鉄ディーゼルカー

古い瓦屋根の駅舎や高さの低いホームがローカル線らしさを醸していて、古いディーゼルカーとよく合います。

キハ52型とキハ28型は、形も塗分けもまったく違いますが、こうした雑多な感じの編成が国鉄時代のローカル線らしさを感じさせます。

駅に隣接した車庫の中には、キハ52型とそっくりな顔の車両が。これは国鉄時代の車両をモチーフにした新型ディーゼルカーで、2015年に導入されました。いすみ鉄道の新しいディーゼルカーの標準塗装は黄色ですが、この1両だけ国鉄一般型ディーゼルカーと同じ色が塗られています。

大多喜からは、14:09発の普通列車に乗って大原に戻ります。できれば大多喜の町を少し歩いて見たかったのですが、この日はあいにく時間がありませんでした。

大原行きの普通列車が発車すると同時に、国鉄型も車庫に入るためホームを離れました。

遠ざかる景色の中、だんだん小さくなっていく国鉄ディーゼルカー

大原からは特急わかしおに乗って東京に戻ります。

いすみ鉄道国鉄ディーゼルカーは、古き良き時代の列車旅を現代においても楽しむことができる、とても貴重な存在です。古い車両を維持するには大変な労力がかかると思いますが、関係者の方々の努力には頭が下がる思いです。キハ28型が引退してしまうのは残念ですが、残ったキハ52型が少しでも長く活躍してくれることを願いたいものです。


2022年10月