星空や朝焼けを眺めながらゆっくりと露天風呂に浸かるるのは、温泉宿に宿泊する醍醐味です。そんな温泉の楽しみ方をしたいとハンガリー旅行で訪れたエゲルサロークの温泉リゾート、サリリスリゾートは、目前に白い巨大な石灰華を眺めながら、ヨーロッパらしい緑の丘に囲まれて硫黄の香りのする温泉を楽しめる、とても素敵なホテルでした。
エゲルサロークの温泉リゾートホテル サリリスリゾート Saliris Resort
エゲルサロークはハンガリーの首都ブダペストから130㎞ほど東にある温泉地で、エゲルという地方都市の郊外にあります。エゲルはこの地域の県庁所在地でもある大きな町ですが、そこからおよそ6㎞離れたエゲルサロークは人口2000人ほどの小さな村です。
前泊地のヘーヴィーズからエゲルサロークまでは約350㎞、3時間以上のドライブです。ヘーヴィーズをお昼過ぎに出発し、首都ブダペストを通り過ぎひたすら高速道路を走ってエゲルサロークに着いたときは、もう夕方になっていました。
源泉地帯の石灰華を間近に臨む露天風呂
チェックインしたら何はさておき露天風呂に直行します。水着着用の混浴の露天風呂は、目の前に湯気を上げる迫力の石灰華を臨むロケーション。石灰華から流れ落ちたお湯はそのまま湯舟に注がれるというわけではなく、どこかへ流れ去っていました。
あいにく空には雲が厚いですが、雲の切れ間から夕日が顔を覗かせ、さわやかな新緑の木々をやわらかな光で照らしています。
石灰華と暮れ行く景色を眺めながらの入浴は格別なひととき。
夜は石灰華がライトアップされ幻想的な雰囲気に
やがて完全に日が暮れると、ライトアップされた石灰華が幻想的な雰囲気を醸し出します。夜になると空気は冷え込みますが、日本の感覚で言えば結構ぬる湯なお湯でも、肩まで浸かっていればそれほど寒くはありません。
ホテルが見渡せるところまで歩いてみると、丘に貼りつくように建つホテルとライトアップされた石灰華の夜景が美しく見えました。
明るく広い内湯にはスライダーも
スタイリッシュな浴室に向かう通路を進むと、露天風呂への出口の手前に内湯もあります。
内湯には、なんとスライダーもありました。奥に丸く口を開けているのがスライダーの出口。
湯舟が壁に仕切られていて隠れ家的な雰囲気があったり、湯舟ごとに高さが違って視点の高さが変わったり、内湯も楽しく入浴できました。
青空の下で露天風呂を楽しむ
朝の露天風呂には、青空と森の緑、石灰華の白のコントラストが美しい、最高の景色が広がっています。
4月ももう終わろうというこの季節、日差しがあたるとなかなか暑くなり、半袖で過ごすのにちょうどいいくらいの気温になるので、陽が出ている時間は日陰で入浴したほうが快適です。建物の壁沿いには打たせ湯もあります。
ふと建物の入り口を見ると、手前のプールは「Medical Water」、向こうのプールはただのプールという表示になっていました。奥側は温泉水ではなく、ただの水なのかもしれません。
表示されていた温泉成分表。
プールサイドのデッキに植えられた花に、ギフチョウのような蝶がやってきていました。
巨大な石灰華の塊はそれぞれ違った形態
露天風呂から見る景色の中で最も存在感のある巨大な石灰華の塊は、露天風呂前のデッキからは3か所が見えました。
一番左がモコモコとした塊のもの。
その隣は石灰華段で、小さな池がいくつも重なっています。
そして一番右側はなだらかな斜面状になっています。
ホテルの建物から見下ろすとこんな感じ。一番左のモコモコは、上部は平らでした。
ちいさな池状の石灰華段。この造形美はなかなかのもの。
いちばん奥と思っていたなだらかな斜面状のものの奥に、もうひとつ小さな石灰華が見えました。
共同浴場の露天風呂は庶民的な雰囲気
ホテルから正面の景色を見ると、森の手前にたくさんの車が駐車されているのがわかります。
視線を少し左にやると、入浴施設がありました。ここはこの村の共同浴場です。せっかくなので、ここのお風呂にも入りに行ってみることにしました。
掲げられていた温泉成分表は、サリリスリゾートにあったものと同じもののようです。
ここも水着着用の混浴です。お湯の温度は38℃と36℃。
青空と緑が清々しい露天風呂ですが、日なたはだいぶ気温も上がってきていて、あまり長湯はできない感じでした。
湯上りに石灰華地帯を散歩
共同浴場の脇の道を進むと、石灰華地帯のすぐ横まで行くことができます。ホテルの露天風呂の目の前にある石灰華ですが、ホテルから直接アクセスする道はないようで、ホテルを出て斜面を下り、共同浴場脇からふたたび斜面を登って、という行き方になってしまうようです。
お湯はやや乳白色がかって見えます。
白く輝く石灰華が独特の美しい景観を作り出しています。石灰華地帯には立ち入りはできず、道路から見るだけですが、充分その迫力を楽しむことができます。
この石灰華段の造形美はすごいです。おそらく自然に形作られたものかとは思いますが、なぜ両隣の石灰華塊と形が違うのかがわかりません。お湯の量や流れ方で、どのような形になるのかが決まるのでしょうか。
噴き出す源泉。自然のパワーを感じます。
エゲルサロークでは古くから温泉が湧いていましたが、この石灰華地帯は1961年に石油を掘削しようとしたときに湧き出た68℃の温泉によって作られたものだそうです。ここの石灰華地帯は、およそ1200m2の広さとのこと。
石灰華地帯からは、ホテルの露天風呂が良く見えました。ホテルは今日も多くの入浴客で賑わっています。
エゲルの町を散歩
サリリスリゾートをチェックアウトした日は、エゲルの町を訪れました。
まずはかわいらしい建物が並ぶ旧市街を散歩。
イスラム教の施設に付随する塔であるミナレット。17世紀に造られたもので、本体のモスクはもうなく、ミナレットだけが残っているそうです。かなり細い印象ですが、上まで登ってみることもできるそう。あまり時間がなかったのと、ちょっと怖そうだったので登りませんでしたが、今思えば登っておけばよかったと思います。
美女の谷の洞穴ワイナリー
エゲルには街の南西の外れに「美女の谷」と呼ばれるエリアがあり、ここには斜面に掘られたワイナリーが並んでいます。
それぞれの洞穴が別のワイナリーになっています。
地元の方は行きつけの店が決まっているのか、迷いもせず目的の店にさっと入って、ワインを手にさっと出てきます。楽しそうな顔でひとつひとつ店を覗いてまわっているのは観光客でしょう。
中には樽やタンクが並んでいます。
ペットボトルでの計り売りも行っています。
ヘルメットをかぶった自転車旅行中と思しき方が空のペットボトルを手に店に入り、やがて赤ワインで満たされたボトルを手に出てくると、グイッと一口、ラッパ飲みをしていました。飾らず、気取らず、自然体でワインを楽しむ姿がかっこよく見えましたが、酔っぱらっての自転車運転には気をつけて…とも思います。
温泉リゾートでのんびり過ごし、ワインの産地で洞穴ワイナリーめぐりを楽しむ。エゲルサロークは、ゆっくりバカンスを過ごしてみたくなる、魅力的な村でした。
2014年4月