そこに線路があるかぎり

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【京都府】貴船や鞍馬、比叡山へは乗って楽しい個性的な電車で 叡山電鉄の観光車両「きらら」「ひえい」の旅 〔出町柳~八瀬比叡山口・宝ヶ池~鞍馬/叡山電鉄線〕(2023年)

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「京の奥座敷」とも言われる鞍馬や貴船世界遺産にもなっている延暦寺で知られる比叡山への足として活躍する叡山電鉄という私鉄があります。全2路線、合計14.4㎞という比較的短い路線ながら、有名観光地へのアクセス路線として観光客の利用も多いことから、叡山電鉄には「きらら」「ひえい」という2つの観光用車両が走っています。
2023年4月、これらの車両で叡山電鉄の旅を楽しんでみました。

叡山電鉄について

叡山電鉄(えいざんでんてつ)は、叡山電車叡電などとも呼ばれる鉄道会社で、京都の北部、洛北と呼ばれるエリアに路線があります。最近はひらがなで「えいでん」と表記されることも多いようです。
えいでんには出町柳(でまちやなぎ)から八瀬比叡山口(やせひえいざんぐち)までを結ぶ5.6㎞の叡山本線、途中の宝ヶ池から分かれて鞍馬(くらま)まで8.8㎞を結ぶ鞍馬線の2路線がありますが、列車の運行系統としては出町柳八瀬比叡山口出町柳~鞍馬と、どちらの終点に行くのでも都心側の始発駅である出町柳からの直通列車として運行されています。

えいでんの車両は普通の電車よりもやや小ぶりで、関東で言えば箱根登山鉄道とか江ノ電のようなサイズ感です。編成も短く、1両または2両編成なので、見た目にもかわいらしい印象を受け、観光列車の個性的ないでたちはもちろん、すべて色が違う通常車両のカラフルな外装もあって、つい写真を撮りたくなってしまう電車たちです。

えいでんの観光車両「きらら」と「ひえい」 

叡電には2種類の観光客向けの個性派車両があります。2両編成の「きらら」と、1両編成の「ひえい」で、「きらら」「ひえい」というのは車両の愛称です。

「きらら」も「ひえい」も普通列車として運転 予約や特別料金は不要

「きらら」と「ひえい」はどちらも通常の普通列車として運転されており、各駅に停車します。乗車券だけで乗ることができ、特別料金や予約なども不要です。
運転時刻はウェブサイトや駅の表示で確認することができます。

叡山電車を利用する (eizandensha.co.jp)

出町柳駅掲示されている「きらら」「ひえい」の運転時刻 (2023年4月)

出町柳~鞍馬で運転される展望列車「きらら」

「きらら」は第1編成が1997年、第2編成が1998年に登場、大きな窓と特徴的な座席配置から「展望列車」とも言われており、眺望が自慢の魅力の車両です。2両編成が2本あり、基本的な運転区間出町柳~鞍馬です。
出町柳と鞍馬の間の所要時間は30分ほど、2編成が運転されているので、おおむね1時間に1~2本の普通列車が「きらら」で運転されていることになります。なお、検査等の関係で曜日によっては「きらら」で運転される予定の列車が通常車両で運転されることもあります。

黄緑色の編成とオレンジ色の編成がある「きらら」

「きらら」の2編成は車体の色がそれぞれ異なっていて、第1編成が黄緑、第2編成がオレンジです。これらの色は沿線の風景の中でも特に有名なモミジにちなんだもので、新緑の頃のモミジをイメージした黄緑は「メープルグリーン」、紅葉の頃のモミジをイメージしたオレンジは「メープルオレンジ」という色名で呼ばれます。

叡山電車「きらら」第1編成 メープルグリーン色

叡山電車「きらら」第2編成 メープルオレンジ色

第1編成はもともとは黄緑ではなく、オレンジと同様に紅葉の頃をイメージした「メープルレッド」と呼ばれる赤色に塗られていたので、「きらら」は赤とオレンジの2本体制となっていましたが、2019年に新緑の頃のモミジをアピールするために赤編成が黄緑に塗り替えられました。この黄緑塗装は当初は2020年いっぱいまでの予定でしたが、好評なのか、2023年4月現在も黄緑のまま走っています。

窓向きの座席やボックスシートも 座席配置が特徴的な「きらら」

「きらら」は観光客を意識した座席配置となっており、1人掛け席、2人掛け席、4人掛けボックス席がありますが、特に車両中央部の2人掛け席が窓側を向いて設置されていることが特徴です。
2両の車両の座席配置は連結面を中心とした点対称になっていて、運転席に向かって左側に運転席方向を向いた1人掛けクロスシートが11脚、右側に2人掛けシートが配置されています。2人掛けシートは、4人掛けボックス席が2ボックス8名分、運転席向きクロスシートが1脚2名分、窓向きシートが4脚8名分配置されています。(いずれも1両あたり)

「きらら」車内。運転席に向かって左側が1人掛けシート、右側が2人掛けシート。

ドア近くには4人掛けボックス席もあります。

連結面寄りのボックス席の後ろには運転席側を向いた2人掛けクロスシートもあって、観光客のさまざまなニーズにも応えられるようになっています。

連結面寄りに座席はなく、広いスペースがあります。側面窓もわずかに連結面側に回り込んでいて眺望が良いです。

えいでんはワンマン運転なので、運転席のすぐ後ろには運賃箱が設置されています。

展望列車「きらら」 | 叡電を知る (eizandensha.co.jp)

出町柳八瀬比叡山口を走る観光車両「ひえい」

「ひえい」は、2018年に登場したえいでんの新しい観光車両です。先に登場した「きらら」が2両編成で鞍馬方面への列車を中心に運用されているのに対し、「ひえい」は1両で運転でき、主に1両編成が使用される出町柳八瀬比叡山口の系統で使用されています。2023年現在「ひえい」は1車両しかないため、火曜日は検査などのため運行がありません。

楕円形のデザインが印象的な「ひえい」

比叡のデザインで印象的なのは、なんといっても楕円形。正面の金色のリングをはじめ、側面窓も乗客用のドアの窓も全て楕円形です。このデザインは、えいでん沿線の鞍馬山比叡山の持つ荘厳で神聖な空気感や深淵な歴史、木漏れ日や静寂な時空から感じる大地の気やパワーなど、「神秘的な雰囲気」や「時空を超えたダイナミズム」といったイメージを「楕円」というモチーフで大胆に表現したとのこと。

先進的なデザインの「ひえい」ですが、新製車両ではなく、従来より使用されていた700系車両を改造して製作されたものです。改造とはいっても、元の車両の面影が全くないほどの変貌ぶりに驚かされます。

「ひえい」の改造元となった車両と同形の700系車両。

落ち着いた車内の「ひえい」 座席配置はオールロングシート

LEDダウンライトが採用されているという「ひえい」の車内は落ち着いた雰囲気です。座席はオールロングシートで、袖仕切りと手すりが前面の楕円感を車内にも映しています。

ロングシートは車両中央部でいったん途切れ、そこには大きな窓があります。デザインに変化を持たせるというだけではなく、混雑時の乗車スペース確保などの意味がありそうです。

えいでんはワンマン運転のため、運転席の後ろには運賃箱が設置されています。

「ひえい」 | 叡電を知る (eizandensha.co.jp)

雨の日の京都を えいでんの観光列車で楽しむ

京都で少し時間ができたのですが、天気もあいにくの雨、屋外を積極的に観光するという気分でもなかったので、えいでんの2つの観光車両「きらら」と「ひえい」に乗ってみることにしました。観光列車は、観光地へ向かう道中の気分を盛り上げてくれるだけではなく、乗ること自体を楽しむ観光にもなります。特に観光地へ向かう観光客が少なくなりがちな雨の日は、観光列車も空いていて落ち着いて乗ることができるので、雨の日に観光列車に乗るというのは意外と狙い目と思っています。

えいでんの始発駅 出町柳への行き方は?

京都にはさまざまな鉄道が乗り入れていますが、それぞれのターミナル駅が離れているので、慣れない旅行者は戸惑いを覚えることも多いと思います。
えいでんのターミナル駅は、市内北部にある出町柳(でまちやなぎ)。ここは京阪電車の終点駅になっており、京阪に乗ればスムーズにアクセスすることができますが、京阪は京都駅は通っておらず、新幹線やJR在来線、その他私鉄で京都に着いた場合、どうやって京阪に乗ればよいのか?というのがまず観光客の頭を悩ませます。

出町柳駅へのアクセス

新幹線、JR各線から:

JR奈良線で1駅(奈良方面からJR奈良線で来た場合は京都の1つ手前)の東福寺京阪電車に乗り換え。JR東福寺駅は快速も停車。
東福寺から出町柳まで急行・準急・各駅停車で6駅。京阪東福寺には快速急行・特急は停まりません。

・京都駅から京阪電車七条駅まで徒歩15分ほど。
京都の道は碁盤目状ですし、七条駅は鴨川沿いというわかりやすい場所にあるので、地図でしっかり確認しておけばそれほど迷うことはないかと思います。なお、七条駅は地下駅なので、入口は地下鉄の駅のようになっています。七条から出町柳までの京阪電車は、特急(特急料金不要)・快速急行で3駅、急行・準急・各駅停車で5駅。

地下鉄烏丸線烏丸御池へ、そこで地下鉄東西線に乗り換え三条京阪へ行き京阪電車に乗り換え。三条から出町柳までの京阪電車は特急(特急料金不要)・快速急行で1駅、急行・準急・普通で2駅。

京阪本線 大阪 淀屋橋方面から:

大阪から来る場合は京阪の利用が一番便利です。特急(特急料金不要。プレミアムシート利用の場合はプレミアムシート料金が必要)で淀屋橋から出町柳まではおよそ1時間弱です。

阪急京都線 大阪梅田方面から:

大阪梅田から来る阪急京都線の終点が京都河原町駅です。地下駅の河原町駅の1Aまたは1B出口から地上に出ると、少し先に鴨川が流れていて四条大橋が架かっているのが見えます。その橋を渡った向こう側に京阪電車祇園四条駅(地下駅)があります。河原町からは徒歩5分くらいです。祇園四条から出町柳までの京阪電車は、特急(特急料金不要)、快速急行で2駅、急行・準急・普通で3駅。

近鉄京都線 奈良方面から:

近鉄京都線の終点は京都駅なので、京都駅まで乗って上記JR各線からのアクセスに記載した方法で出町柳に行くこともできますが、京都の手前の近鉄丹波橋で降りると、京阪電車に乗り換えることができます。近鉄丹波橋は特急も停車します。丹波橋から出町柳への京阪電車は、特急(特急料金不要)、快速急行で4駅、急行で7駅、準急・普通で12駅。

 

出町柳京阪電車の終点の駅なので、京阪電車に乗るときは出町柳行に乗りましょう。終点なのでどの種別でも停まりますが、終点を目前にした三条で特急が先行列車を追い越すことがあるので、短区間の利用でも特急に乗ったほうが早く出町柳に着く場合もあります。早く着きたい場合は駅の案内で確認してみてください。

えいでんのお得なきっぷ 貴船・鞍馬・大原方面や比叡山方面への観光に便利なきっぷやラーメン切符も

さすが沿線に有名観光地を抱えるえいでんとあって、観光地を巡るお得なきっぷがいろいろと発売されています。えいでん全線の1日乗車券や、鞍馬・貴船比叡山方面へのおでかけに便利なきっぷのほか、電車の乗車とラーメン券がついたラーメン切符などというユニークなものも発売されています。

お得な乗車券 | 乗車券のご案内 | 叡山電車を利用する (eizandensha.co.jp)

1日乗車券「えぇきっぷ」は大人1,200円、子供600円です。出町柳から一番遠い鞍馬までの大人運賃は470円なので、ただ往復するだけなら普通の乗車券のほうが安いですが、途中で乗り降りする場合は1日乗車券のほうがお得です。

「ひえい」に乗って八瀬比叡山口

京阪電車出町柳に着き改札口を出ると、えいでんの発車案内がありました。特に時間は調べずに来たのですが、ちょうどいい具合にきららとひえいの出発が続いています。
きららに乗るには発車時刻が迫っていて慌ただしそうなので、まずはひえいに乗ってみることにしました。

地下駅の京阪出町柳駅からエスカレーターで地上に出ると、そこはえいでん出町柳駅の改札の目の前でした。京阪からえいでんへの乗り換えはとてもスムーズです。

3番線からきららの鞍馬行きが発車。

2,3番線が2両編成分の長さがあるのに対し、1番線は1両編成がちょうど停まれる長さのホーム。ひえいが停まっています。

鞍馬からやってきた上り列車が到着しました。きららで運行される列車以外の鞍馬行きは、ほとんどがこの2両編成の800系が使われています。800系は編成ごとに帯の色が違うので、変化があって面白いです。

出町柳を出発。市街地の中の複線の線路を走って行きます。

最初の停車駅、元田中。駅はこじんまりしていて、路面電車の駅のようにも思えます。

2駅目の茶山・京都芸術大学で上り列車とすれ違い。1両なので八瀬比叡山口系統の列車です。

一乗寺駅。このあたりはラーメン激戦区として知られ、乗車券とラーメン券がセットになったラーメン切符も売られています。

修学院駅には車庫が併設されています。カラフルな列車たちが休んでいます。えいでんの電車は、どれひとつとして同じ色のものはなく、すべての車両が一点もの。

黄緑のきららとすれ違い。

宝ヶ池では八瀬方面と鞍馬方面の線路が分かれます。直進するのが八瀬比叡山口方面。

 

宝ヶ池を出ると車窓の緑が濃くなってきました。上り列車とすれ違い。

最後の駅、三宅八幡を出ると、線路はすっかり緑に包まれます。

終点、八瀬比叡山口に到着。

八瀬比叡山口は上屋に覆われた駅です。

歴史を感じる駅舎。

駅を出ると、道路に大原方面と比叡山方面という案内が書かれていました。大原方面へはバス、比叡山方面にはケーブルカーとロープウェイに連絡です。

駅前には川が流れています。川の向こう岸にはもみじの絶景で有名な瑠璃光院もあります。右側にはむかし橋があったような痕跡がありますが、少し上流に別の橋が架かっていて対岸に渡れるようです。

小さいながらも観光地への玄関口となるターミナル駅としての歴史と風格を感じる八瀬比叡山口駅

この高い屋根の薄暗い空間にひえいがよくマッチしているように思えます。

背後の山の新緑がとてもきれい。

「ひえい」のシンボルマークは、大地から放出される気のパワーと灯火を抽象化しているそうです。

折り返しの出町柳行き「ひえい」に乗って、鞍馬方面への分岐駅、宝ヶ池まで戻ります。楕円の窓に映し出される新緑の美しさが印象的です。

八瀬比叡山口から2駅で宝ヶ池に到着。ここで鞍馬行きに乗り換えです。

鞍馬行きのホームで電車を待っていると、向かいのホームの柱に「やまはな」と読める古びた表示が。1954年(昭和29年)までこの駅は「山端(やまばな)」という名前だったそうで、そのころの表示が残っているのだとか。ちょうどこの表示の上に広告が取り付けられたことで、その広告の下に古い駅名表示が残っていたとのことですが、昔の姿を今に伝える貴重なものです。

きららに乗って鞍馬へ

少し待ってやってきた鞍馬行きの電車は、黄緑の「きらら」でした。

連結面にも大きく回り込んだ窓があり、どこに乗っても眺望が良いのが「きらら」の自慢。

宝ヶ池を出発する頃、鞍馬からの上り出町柳行きがやってきました。800系のこの編成はピンクと水色の帯です。さきほど出町柳で見た800系は黄緑と水色の帯でしたが、車両の形も塗分けのラインも同じながら、色が違うだけでだいぶ印象も異なります。

宝ヶ池を発車。右に八瀬方面の叡山本線が分かれて行きます。

緑も多い住宅街の中を走って行きますが、よく見ると線路はなかなかの上り勾配になっています。

住宅街の中の上り勾配をカーブしながら登って行きます。

京都精華大前は1989年の開業、えいでんでいちばん新しい駅です。大学生らしき若者たちが何人も降りて行きました。

京都精華大前を出て間もなく、オレンジのきららの上り列車とすれ違いました。

だんだんと車窓は山の風景となってきます。いままで複線だった線路も、二軒茶屋からは単線になります。

「きらら」の車内には、「きらら」と「ひえい」のイラストが飾られていました。

きらら車内には天狗のお面が飾られています。鞍馬といえば天狗を思い出す方も多いはず。もともとの天狗伝説から派生して、能の舞台や小説、そして映像作品もつくられた鞍馬天狗ですが、小説とそれを原作に発展した映像は天狗の話ではなく、鞍馬天狗と名乗る剣士の話なのだとか。

二軒茶屋を出て単線区間を進みます。複線だった片割れの線路は、折り返し列車用の留置線になっているようです。

住宅が多く建ち並ぶところもありますが、着実に山の中に入ってきています。

勾配を感じる鞍馬線の線路。

せっかく登り坂を登ったと思ったら下り坂に転じたり、なかなかのアップダウンがある路線です。

単線区間最初の駅、市原。行き違いのできない、片面ホームだけの駅です。ここ市原と、2駅先の貴船口が行き違いのできないホーム1本だけの駅になっています。

2020年7月に襲った令和2年7月豪雨により鞍馬線はこの市原から先、終点の鞍馬までの区間で甚大な被害があり、2021年9月の復旧まで1年以上も不通になっていました。その被害のあった2年前、2018年にも台風による被害で末端区間が2か月近く不通になっており、鞍馬線は災害と隣り合わせの厳しい地形の中を走っていることがわかります。

車内もすっかり空いてきました。

市原~二ノ瀬の車窓の名所 もみじのトンネル

車窓の新緑がより一層鮮やかになってきました。市原と、次の二ノ瀬の間には「もみじのトンネル」と呼ばれる区間があり、鞍馬線最大のみどころになっています。

もみじの新緑の中を駆け抜けていきます。「きらら」は前面の上部にまで窓が続いていて、乗務員室と客席の仕切りの窓も、前面窓にあわせて大きなものとなっているので、前方から左右に流れる鮮やかな緑が目を楽しませてくれます。

まさに、もみじのトンネルと言った風景。紅葉シーズンもさぞかし見ごたえがあることでしょう。

もみじのトンネルを抜けて、二ノ瀬に到着。単線区間では唯一対向列車との行き違いができる駅です。ここで上り列車と最後のすれ違い。

二ノ瀬の先も、電車はひきつづき緑の中を走って行きます。大きな窓から見える山の風景がとても美しく、この区間で電車に乗るなら、やはり「きらら」だな、と思わせられます。

ところどころ、線路わきの斜面の擁壁や柵が真新しいところがあります。豪雨災害で被害を受けて復旧された部分かと思います。このような素晴らしい景色を楽しめる路線をまた列車で旅することができるようにしてくださった、復旧に尽力された関係者の方々に頭が下がる思いです。

眼下には鞍馬川の渓流が。

緑にかこまれた貴船口に到着。もみじのトンネルと並んで、この駅ももみじの美しさで知られています。

貴船口の付近で谷が2つに分かれ、東側の谷を進めば鞍馬へ、西側の谷を進めば貴船に至ります。貴船口から貴船へはバスに乗り換えて4分、または歩いて30分ほどとのこと。地名としては「きぶね」ですが、そこにある貴船神社は「きふねじんじゃ」と発音が濁らないのは、この神社が水にまつわる神様を祀っているので、音の濁りが水の濁りにつながることを嫌ったためと言われています。

貴船口で観光客が下車し、車内はますますカラガラになりました。

貴船口を出て鉄橋を渡ったところの斜面も高い木がなく、苗木を植えたのか、白い支柱のようなものが林立していました。ここは2018年の台風で崩れた斜面のようです。

カーブと勾配で、鞍馬への谷を登って行きます。

この区間にはトンネルもあり、山岳路線らしさを増しています。

山の中を走り抜け、終着鞍馬に到着。

駅の横にはかつてえいでんを走った旧型車両の先頭部が置かれていました。

折り返しの列車が出町柳へ向けて出発していきました。

鞍馬駅は味のある木造の駅舎で、駅前には天狗の顔が鎮座していました。この天狗の後ろのほうにひっそりと、先ほど見た古い電車の顔も置かれています。

駅前の土産物屋さんも木造の家屋で、古くからの観光地らしい駅前の風景です。ここから鞍馬寺の山門までは徒歩3分ほどの近さらしいですが、鞍馬寺の本堂は山の上にあり、雨も降っているのでまたの機会に訪問することにしました。

鞍馬駅の入口の駅名表示の隣にも天狗。

駅舎内の待合室にも天狗。

この待合室で電車を待っていると、あちこちから天狗の視線を感じてしまいそうです。電車に乗って、ようやく天狗から逃れられた、と思っても、その電車が「きらら」なら、引き続き車内の天狗に見つめられることになります。

改札は列車ごとに行われていました。次の列車に乗る人だけが改札口を入れるそうですが、そのシステムから、ピーク時にいかに混むかが想像されます。

鞍馬からの帰路は一般車両で

鞍馬からは一般形の800系で帰ります。この車両はティファニーJR四国を思わせる色の組み合わせの帯でした。

出町柳行きの列車は谷間をたどり、山を下りて行きます。

800系の車内はオーソドックスなロングシートが並ぶもの。混雑時の収容力は「きらら」よりも断然上でしょう。また、ドアが片側3か所にあるので、2か所の「きらら」よりも乗降がスムーズそうです。
シートの青色は、かつての国鉄車両を思い出させる色合いで懐かしいです。

二ノ瀬で下り列車と行き違い。ガラスが雨に濡れていてずいぶんと視界がぼやけてしまいました。

修学院の車庫を見る

帰りは修学院で途中下車し、車庫のようすを見てみることにしました。

駅前の道路を歩き、車庫の向こう側に回り込んでみると、道路から車庫のようすが良く見えました。手前に停まっている電動貨車のような車両がユニークです。

修学院駅に戻ると、八瀬比叡山口行きの列車が赤い1両の車両で発車して行きました。

修学院から乗車した出町柳行はふたたび「ひえい」。楕円の窓から京都の町の風景を楽しみます。

さきほど出町柳を出てから2時間半ほど、ふたたび出町柳に戻って来ました。

出町柳~鞍馬まででも片道わずか30分ほどの短い旅でありながら、町からの自然の中へと移り変わる景色、美しい木々や清流が広がる車窓、そして個性的な車両と、楽しさいっぱいのえいでんの旅。今度は天気のいい時に沿線の観光地をめぐりながら、また改めて楽しんでみたいと思います。

 

2023年4月