に引退したSLを走れる状態で保存し、SLが牽く観光列車が走ることで古くから有名な静岡県の大井川鐵道。近年ではそのSLのうちの1両を、イギリス生まれのアニメ、きかんしゃトーマス仕様に改装して走らせており、本物のトーマスに乗ることができる鉄道としても有名です。2018年6月、そのトーマス号のチケットを予約することができたので、家族でトーマス号の旅を楽しんできました。
- 大井川鐵道のきかんしゃトーマス号について
- きかんしゃトーマス号のチケット予約方法
- 大井川鐵道 新金谷駅へのアクセス
- 朝食は藤枝名物の朝ラーメン 2杯セットが流儀
- きかんしゃトーマス号に乗る
- 千頭駅ではトーマスフェアを開催中
- 帰り道は珍しい車両の臨時急行列車で
大井川鐵道のきかんしゃトーマス号について
大井川鐵道は1976年7月、日本で初めて動態保存のSLの本線運転を始めたことで有名です。動態保存とは動ける状態で保存することで、これに対して公園などで動かない状態で保存されることを静態保存と言います。国鉄で本線上を走るSLが引退したのが1975年12月(駅構内の入換仕業では1976年3月)なので、国鉄の本線上からSLの煙が消えてわずか半年ほどで、ここ大井川でSLが牽く列車に再び乗ることができるようになったのでした。
このように長い歴史を持つ大井川鐵道のSLの保存運転ですが、2014年夏、所有するSLのうち1両にきかんしゃトーマスの意匠を施して運転したところ大好評を博し、以後、毎年夏季を中心に運転され、現在ではクリスマスにも特別運行されています。
このトーマス号の運転は、Day Out of Thomas という世界7か国(アメリカ、カナダ、イギリス、オランダ、オーストラリア、ニュージーランドと日本)で開催される、きかんしゃトーマスのイベントの一環となっています。イベントといっても、希望する鉄道会社や博物館などが、版権元の承諾を得てトーマスの世界を表現し(そしてたぶん版権料などをたくさん払い)、Day Out of Thomas という名の元に、それぞれの事業者が独自の形で開催しているもののようです。日本では大井川鐵道を会場として、SLトーマス号の運転を始め、バスのバーティ号に乗るツアー、千頭駅でのトーマスフェアなど、さまざまな企画が用意されています。2021年は6月12日~10月18日の金・土・日・月曜を中心とした指定日に開催予定で、つまりトーマス号もこの Day Out of Thomas の開催日に運転されるというわけです。
なお、今年のトーマス号は、6月の運転日に限り、「トーマスのはじめて物語」に登場した、緑色の特別仕様で運転されるとのことなので、いつもと違うトーマスの姿が楽しめそうです。
大井川鐵道 DAY OUT WITH THOMAS 2021 | 大井川鐵道【公式】 (oigawa-railway.co.jp)
きかんしゃトーマス号のチケット予約方法
トーマス号乗車だけのチケット予約受付は原則ローソンチケットだけ
大井川鐵道のきかんしゃトーマスの乗車チケットは、基本的にはローソンチケットだけで販売され、大井川鐵道や旅行会社での電話予約や窓口では、後述する直前予約を除いては、トーマス乗車チケットだけの販売はおこなっていません。ローソンチケットのウェブサイトから予約をする必要がありますが、乗車希望が多い便については発売開始日に抽選での販売になるそうですので、必ずしも希望の日、希望の便が予約できるとは限りません。
希望日の予約ができた場合は、ローソン店舗にてチケット購入するという流れになるそうです。
トーマス号乗車を含んだツアー商品は旅行会社でも
トーマス乗車と出発地からの交通、宿泊や他観光地の訪問を含んだ旅行商品なら、旅行会社での販売もあります。
希望日のトーマス号が満席 直前予約やキャンセル待ちは?
団体枠の調整やキャンセルの発生などにより「満席」となっていた便でも空席が出ることがあり、その場合は「直前予約」枠として乗車日の20日程度前から販売されるとのこと。この直前予約もローソンチケットのみの取り扱いですが、さらに時が過ぎ、乗車2日前になっても空席がある場合は、大井川鐵道での直前電話予約受付となります。
キャンセル待ちは受け付けていないとのことなので、まめにウェブサイトにアクセスして希望便に空きが出ていないかをチェックするか、いっそのこと「空きがある日に出かける」ということにすれば、より確実に乗車できると思います。
トーマス号の乗車料金
ローソンチケットで販売されているトーマス号のチケットは特別往復乗車チケットと片道乗車チケットの2種類で(直前予約は片道乗車チケットと同額)片道乗車チケットの料金は大人3,050円、子供1,530円です。この費用には、新金谷~千頭の片道乗車券、トーマス号指定席、記念品が含まれています。トーマスではない通常のSL急行列車に乗ると大人片道¥2,570ですが、記念品(2021年は不織布ポーチ)がついていることを考えると妥当な額かと思います。
往復特別乗車券だと、往復列車分の座席予約と記念品のほか、2日間有効の大井川本線フリーきっぷ、トーマスフェア入場券がついて大人6,600円、小人3,060円なので、トーマスフェア入場券や2日間有効のフリーきっぷがついていることを考えると、片道で買うよりはお得感があります。
通常のSL急行列車と違い、トーマス号は始発と終点、新金谷と千頭だけしか乗降ができないので、途中駅からや途中駅までと言った利用はできません。
(以上は2021年6月現在の情報です)
直前予約でトーマス号のチケットを入手
2018年も直前予約については電話で予約を受け付けており、たまたま覗いた大井川鐵道のウェブサイトで翌日のトーマス号に空席を発見、あわてて電話して予約することができました。トーマスに乗りたいと思って調べてみても、すでに発売済みの便は満席ばかりで、また、直前予約の席が発売されないこともあるので、直前に予約できたのは非常にラッキーなことでした。
大井川鐵道 新金谷駅へのアクセス
トーマス号が出発する新金谷駅は、静岡県島田市にあります。大井川鐵道の路線は東海道本線との乗換駅、金谷が起点ですが、この金谷の次の駅が新金谷で、金谷の市街地は金谷駅よりも新金谷のあたりに広がっています。また新金谷には大井川鐵道の本社や車庫もあり、運転上も拠点となっています。
東京から新金谷までのアクセスは以下のとおりです。
<鉄道>
東京から東海道新幹線で静岡まで約1時間~1時間20分
静岡から東海道本線で金谷まで約30分
金谷から大井川鐵道で新金谷まで約5分
このルートで東京~新金谷 6,470円(大人一人片道。新幹線は自由席利用の場合)
<車>
東京ICから東名高速・新東名高速で島田金谷ICまで約2時間30分 4,830円(普通車)
島田金谷IC~新金谷駅 一般道で約7分
または、東京ICから東名高速で相良牧之原ICまで約2時間30分 5,000円(普通車)
相良牧之原IC~新金谷駅 一般道で約10分
新金谷駅駐車場: 1日1,000円(普通車)
また、富士山静岡空港から新金谷駅へはおよそ10㎞、車で15分ほどの距離なので、飛行機で静岡にアクセスするのも便利です。
<いずれも2021年6月現在>
朝食は藤枝名物の朝ラーメン 2杯セットが流儀
トーマス号が出発する新金谷駅は静岡県島田市にありますが、島田市の隣、藤枝市には、朝ラーメンという珍しい文化があります。ラーメンと言えば、飲んだあとにシメの一杯、という感じで、夜も更けた頃に食べるイメージがありますが、ここ藤枝のラーメン屋さんはその逆で朝から営業して昼には店を閉めてしまうところが多いそう。というのも、お茶の産地であるこのあたりでは、早朝から行われるお茶の取引の一仕事を終えて朝食を食べる、という人が多く、そうした人たちにラーメンを出すべく営業時間が早くなっていったのだとか。
東京から行くと、新金谷に向かう途中に藤枝を通るので、朝ラーメンを食べるのにまたとないチャンス、ということで、新金谷駅最寄りの島田金谷インターのひとつ手前、藤枝岡部インターで新東名高速を降りました。
藤枝朝ラーメンが楽しめるお店は何軒かあるようですが、今回は初めての訪問なのでまずは基本からと、朝ラーメン発祥の店とされる、マルナカさんにお邪魔しました。こちらは日・祝日と、第2・4土曜が休みなので、週末を中心に運転されるトーマス号とセットで楽しもうとすると日程の制約が大きいので注意が必要です。
お店は8時半からの営業ですが、この日到着したのは9時ごろ。行列していたらトーマスの発車に間に合わなくなってしまうので諦めることも覚悟していましたが、幸い駐車場にも空きがあってすぐに車を停めることができました。店内で着席を待つお客さんも2-3組だったので、食券を購入して順番を待っていると席の回転は思いのほか速く、10分ほどで席に案内されました。
藤枝のラーメンは、朝食べるというだけではなく、「温」と「冷」があり、その両方を食べるのが流儀、というのも大きな特徴となっています。まずは温かいラーメンを食べ、おかわりで冷やし、というのがお決まりのコースらしいですが、席について食券を店員さんに渡すと、持ってくる順番を聞かれたので、全部いっぺんに、とお願いしました。
ほどなくしてラーメンが運ばれてきました。小麦の香り立つやや太めの麺と、醤油が利いた和風スープがおいしい温かいラーメンをオードブルに、冷たいラーメンに突撃。冷たいラーメンは冷やし中華のように皿に盛られた麺にタレを絡めるのではなく、冷たいスープに麺が浸かっているもので、涼しげなガラスの器に盛られています。甘めのキリリと冷えたスープに、紅ショウガとワサビのトッピングがアクセントとなり、暑い夏にぴったり。チャーシューもアブラ分が抑えられた、胃にやさしい朝向きのラーメンで、温も冷も丼は普通のラーメンよりも小さなものだったので2杯食べても余裕かと思いましたが、丼には意外と麺がびっちりと入っていてボリュームがあり、結構おなかが膨れました。
きかんしゃトーマス号に乗る
新金谷 10:38 ---> 千頭 11:54 37.2km 大井川鐵道 トーマス号 千頭行
プラザロコでチケット引き換え お弁当も購入可能
藤枝から新金谷駅へはおよそ15㎞、20分ほどのドライブです。新金谷駅の駅前に車を進めると駐車場の誘導をする係の方がいて、その案内に従って車を停めました。
新金谷の駅は味のある古い木造の2階建ての建物ですが、道を挟んで駅と向かい合うところにプラザロコというチケットセンターとお土産売場などが併設された駅舎よりは新しめの建物があり、ここでSL乗車の受け付けをします。観光客が多いとあって、地方の私鉄ながらクレジットカードが使用可能なのも有難いです。
私は直前販売の電話予約だったので、このチケットセンターでチケット購入が必要でした。トーマス号についてはローソンで事前に買った方はすでにチケットを持っているはずなので、このプラザロコのチケットセンター窓口が混み合うことはないかと思いますが、万一混んでいた場合に備え、ここでのチケット購入が必要な場合は少し早めに到着するようにしたほうが無難でしょう。
トーマスとご対面
チケットを購入したら、売店でお弁当や飲み物を購入して新金谷駅へ。改札口から駅の外まで、トーマスに乗るお客さんたちの長蛇の列が続いていますが、改札が始まればスムーズに列が進みました。
改札口を抜けるとホームではトーマス号が発車を待っています。トーマスの大きな目が、ホームで記念写真を撮る人たちのことを見つめています。愛嬌のある顔立ちで遊園地のアトラクションのようにも見えますが、蒸気を吐き出す音や石炭の匂いが、トーマスが紛れもなく本物のSLであることを実感させてくれます。
客車は国鉄時代から使われる貴重な旧型車両 冷房はついていません
トーマスの後ろに続く客車はアニメと同じくオレンジ色に塗られていますが、これは昭和30年代に製造された大変歴史のある旧型客車。トーマスのイラストがあしらわれた座席の枕カバーや天井の三角フラッグといったトーマス列車らしい飾り付けがされていますが、青いシートやベージュの壁塗装など、随所に古さも感じられる車両です。冷房もついていないので、窓を全開にして大井川の風を浴びることができます。この日は曇り空でそれほど暑くはありませんでしたが、盛夏に乗る際は暑さの覚悟とこまめな水分補給をしたほうがいいでしょう。
小さな子供は前方からの風が直接あたらない席に
SLは石炭を燃やして走るので、走行中、細かい石炭のカスが飛んでくることがあります。小さな粒ですが、額に当たっても痛さを感じるほどなので、万が一子供の目に入ろうものならせっかくの楽しい旅に水を差しかねません。トーマスの客車には冷房がないため窓は開けておかなければなりませんので、進行方向向きの窓側の席は石炭カスが風に乗って顔に直撃する可能性があります。念のため、子供は進行方向逆向きの席に座らせ、窓から入る前方からの風が直接当たらないようにしました。
新金谷を発車
10:38、汽笛と共に新金谷を出発。迫力ある汽笛や蒸気の音が、トーマスが紛れもなく本物のSLであることを実感させてくれます。車内の放送はトーマスの声で行われているのですが、何かと音の大きいSLとあって、放送が聞き取りづらいのが残念です。
緑の中を青い機関車に牽かれたオレンジの客車が進んで行きます。
沿線の主要駅、家山駅では乗り降りはできませんが、時間調整で少々停車。駅舎の横には赤いバスのバーティが停まっています。このバスのバーティは新金谷をトーマスとともに出発し、道路を走ってトーマスとともに終点千頭を目指しており、片道はバーティに乗車し、片道をトーマスに乗車する、という、大井川鐵道の旅行部門、大鉄フレンドツアーが主催する往復ツアーの参加者だけが乗ることができます。
家山を出て、茶畑を見て、大井川を渡り、千頭に向けて走ります。新金谷から千頭の間では、大井川鐵道は大井川を4回渡るので、右側に座っていても左側に座っていても、大井川の眺めを楽しむことができます。
神出鬼没なバスのバーティ
車内ではじゃんけん大会や乗車記念写真の撮影・販売が行われたり、観光列車らしいイベントが開催されますが、ときどき、バーティが走っていますよ、との放送もあります。窓の外に目をやれば、斜面の上に、川の向こうに、並行する道路に、神出鬼没に現れるバーティ。トーマスは、やはりそのかわいらしい姿から、走っているシーンを眺めたいと思わせますが、バーティーに乗れば、いろいろな景色の中を走るトーマスの姿を見られるわけで、バーティとトーマスに片道ずつ乗るツアーは、さぞ楽しいことでしょう。
終点の千頭に到着 ホームでゆっくりトーマスと記念撮影
11:54、トーマス号は終点の千頭駅に到着しました。
お客さんが降りてガランとした車内。トーマス号らしい装飾はありますが、昭和30年代生まれの古豪感も随所に感じる客車です。
先頭の機関車のまわりでは乗客のみなさんが記念写真を撮っています。
よくよく見ると、新金谷で乗ったときとトーマスの視線の向きが違う・・・。どうやら、トーマスの目は動かすことができるようです。
記念写真タイムを考えてのことか、到着したまま長いこと停車していたトーマスは、やがて少しバックして客車を切り離して再び前進、ポイントが切り替わるとまたバックして、ホームから去って行きました。
千頭駅ではトーマスフェアを開催中
千頭駅の構内は広く、駅の横には車両を停め置く留置線が何本もあるのですが、そのスペースを使ってトーマスフェアが開催されています。トーマスフェアは入場料を払えばトーマス号の乗客でなくても誰でも参加することができます。
フェア会場には、パーシーやヒロといったトーマスの仲間たちがいました。彼らは走りはせず、ここ千頭のフェア会場に展示されているだけですが、ヒロの隣の線路にはさっきまで走っていたトーマスがいます。千頭駅のホームを去ったあと、転車台で機関車の向きを反対向きにして、このフェアの会場にやってきたのでした。つまり、トーマスが走る日でなければトーマスがここに並ぶことはできないわけで、だからかどうかはわかりませんが、フェアが開催されるのはトーマスが走る日だけです。
フェア会場では、ラスティーの貨車やウィンストンのレール点検車、手でハンドルを回しながら小さな線路を走る手漕ぎミニ自転車に乗ったり、バスのバーティやいたずら貨車、いじわる貨車の展示を見ることができました。
2021年のトーマスフェアは入場料500円、一部アトラクションには別途追加料金がかかります。トーマスに乗らなくても入場できるので、トーマスの予約がとれなくても、普通のSLに乗って訪れてもいいかもしれません。(2021年は手漕ぎ自転車はないようです)
2021きかんしゃトーマス号 トーマスフェア会場 | 大井川鐵道【公式】 (oigawa-railway.co.jp)
トーマスフェア会場を後にして千頭駅に戻ります。留置線に停まっている緑の電車は元南海電鉄の車両。かつては大阪の難波から高野山への足として活躍していましたが、南海を引退後、大井川鐵道にやってきました。1958年(昭和33年)製なので、もう60年以上も走り続けている大ベテランです。
元南海の電車を見ているとトーマスがやってきました。トーマスフェアでの展示を終え、ふたたび上りのトーマス号として走るために、駅に戻ってきたのでした。やはり煙を吐いて走っている姿を見るのはいいものです。やはりただの展示品ではない、生きて動いているSLであるというところに、大井川鐵道のトーマスの魅力があると思います。
帰り道は珍しい車両の臨時急行列車で
千頭 13:56 ---> 新金谷 15:14 大井川鐵道 臨時急行 金谷行
帰り道は、トーマス号運転日に運転される臨時急行列車で新金谷に戻ります。
この臨時急行列車は、元西武鉄道の電気機関車が、国鉄時代長距離特急列車に使用されていた古い客車2両を牽くという編成ですが、2両の客車は日本ナショナルトラストという公益財団法人が所有し大井川鐵道が管理しているもので、文化財的価値がある車両と言えます。
隣のホームにはトーマスではない通常のSL急行列車「かわね路」号の茶色い客車が停車中。古い客車に挟まれたホームにいると、昔の駅にタイムスリップしたかのよう。
臨時急行列車は千頭を出て、さきほどトーマス号で来た道を引き返します。
千頭では左側にあった大井川の流れを2回渡ると最初の通過駅崎平で、崎平の先でさらにもう1度大井川を渡ると、その後はしばらく右窓に大井川を眺めが続きます。
小さな駅に停まる赤い自動車が一瞬バーティかと思えるほど、トーマス号の車内からバーティを探すのは楽しかったです。バーティはのちほど、再びトーマスと一緒に新金谷に戻って行きます。
大井川鐵道には、趣のある古い木造駅舎がたくさん残っています。
川根温泉笹間渡を出ると最後の大井川を渡る鉄橋があり、この先は川はずっと左側に見えます。
カーブする赤い鉄橋を越えると線路は森の中に吸い込まれて行き、森を抜けると今度は茶畑が広がります。
行きにバーティが停まっていた家山駅。ここも古い木造駅舎です。
神尾駅は周囲に人家がほとんどない秘境駅ですが、タヌキの置物が乗客を迎えてくれます。こういう駅のホームに降りてみたいと思いますが、この急行列車は通過します。
千頭から1時間18分、昔の特急車両での旅を終え、新金谷に到着。千頭からここまで、ほぼすべての席が埋まるほどの乗客がいましたが、ここでほとんど降りてしまい車内はガランとなってしまいました。列車はこの先あとJR東海道本線との乗換駅金谷まで、あと1駅走ります。
臨時急行列車金谷行は新金谷で反対列車を待ちます。やってきたのは元近鉄の特急車両。この色は長年近鉄特急の標準色でしたが、昨年本家近鉄では特急車両の新塗装化が完了し、この色の車両は見られなくなってしまいました。千頭で見た元南海の車両も、いまは南海には無い昔の標準塗装です。大井川鐵道では他の鉄道で引退した車両がかつての塗装のまま活躍しており、特にその鉄道を利用していた人たちにとっては懐かしさを感じるものと思います。
金谷行臨時急行列車が発車して行くのを見送ると、最後尾にも機関車がつながれていました。確かさっきまでは後ろの機関車はなかったような気がするので、ここ新金谷でつないだのかもしれません。この先、終点の金谷では線路が1本しかなく、到着した列車の先頭の機関車を折り返しのために反対側に繋ぎかえることができないので、このように後ろにも機関車を繋いでおけば、折り返しの時にそのまま反対向きに走れるというわけです。
新金谷のホームから見た、大井川鐵道の車庫のようす。南海車と近鉄車が並んで停まっています。南海車も近鉄車もそれぞれ2本ずつありましたが、2021年現在、近鉄車は1本が引退してしまい、動くのは1本だけになってしまいました。
駅の側線には、JR西日本 山口県の山口線を走っていたSLやまぐち号の客車が停まっていました。やまぐち号が新しい客車になったので、それまで使われていた客車が大井川鐵道にやってきたわけですが、まだ整備を待っているところで、本線の列車には使用されていません。
新金谷駅でいろいろ見ていると、遠くからトーマスが走ってくるのが見えました。千頭を14:10に出て、新金谷に15:27に着く上りのトーマス号です。トーマスは走っているところを外から見るのも楽しいです。
新金谷で大勢の乗客を降ろしたトーマスは、本日の仕事を終えて車庫へ引き上げて行きました。たなびく白煙にSLらしさを感じます。
新金谷の車庫では、トーマス号運転日に「車両整備工場見学」(小学生以上500円)を開催しており、下りのトーマス号出発前と、上りのトーマス号到着後には、車庫でトーマスを間近で見ることができるので、トーマスの旅の始まりや締めくくりにトーマスに挨拶をして行くのもいいかもしれません。
乗って楽しく見て楽しい、本物のSLのトーマスの旅。トーマスフェアを始めとしたイベントが楽しいのはもちろんのこと、川と茶畑が広がる静岡の景色を、古い車両に揺られながらのんびり眺める、ローカル線の旅としてもまた魅力的なものです。大井川鉄道は、何度も訪れて、今度は違う楽しみ方もしてみたい、そんな気持ちにさせてくれる素敵な鉄道です。
(2018年6月)