栃木県北部にある塩原温泉郷は開湯から1200年以上と言われる大変歴史のある温泉地で、「塩原十一湯(しおばらじゅういちとう)」と呼ばれる11地区の温泉地の総称として塩原温泉郷の呼び名があります。源泉はおよそ150本、泉質は6種類あり効能もさまざまとのことなので、多種多様な温泉を楽しむことができる素晴らしい温泉地です。
2017年2月、この塩原に宿泊し、翌日は歴史を感じる宿場町で雪景色とグルメを楽しむ冬の旅に出かけました。
塩原温泉郷公式ページ(塩原温泉旅館組合/塩原温泉観光協会)・栃木県・那須塩原市 (siobara.or.jp)
浅草から東武電車に乗って塩原温泉郷へ
東京から塩原温泉郷へ行くには、東北新幹線の那須塩原からバスに乗り継ぐのが最も早いですが、今回は浅草から東武電車に乗るルートで行くことにしました。東武ルートでは関東平野から深い山の中を分け入って行く変化のある景色を楽しむことができ、特に冬場の栃木県北部から福島県にかけての区間の雪景色が美しく、冬の列車旅の楽しさを味わうことができます。
浅草11:00発の鬼怒川温泉行きの特急スペーシアきぬ111号で出発。スペーシアには紫基調、青基調、オレンジ基調、そして金色基調の4パターンのカラーがありますが、今回乗車した列車は金色の「日光詣スペーシア」カラーでした。
関東平野を北上し、終着鬼怒川温泉には12:59に到着。後続の13:11発 区間快速会津田島行きに乗り換えます。鬼怒川の温泉街を見て山の中へ分け入っていくと、車窓はだんだんと雪国の景色に。凍てつくダム湖を長い鉄橋で越え、トンネルを抜けて雪に覆われた林の中を走り、鬼怒川温泉から36分、13:47に上三依塩原温泉口に着きます。
雪の中へ去り行く2両編成の列車の姿に旅情がかき立てられます。
上三依塩原温泉口から塩原温泉へはバスが出ていますが、あいにくうまく接続する便がなかったため、塩原温泉バスターミナルまでタクシーを利用しました。所要時間は15分ほど。バスターミナルからは10分ほどバスに乗って温泉街を通り抜け、塩原十一湯の中でもいちばん東に位置する大網温泉へ。バスを降りたら本日宿泊するお宿、湯守田中屋さんは目の前です。
320段の石段を下り、渓流を望む露天風呂で幸せな温泉入浴タイムを
このお宿の楽しみのひとつは渓流沿いにある露天風呂。露天風呂は宿の前の国道を渡り、細い道を谷底に向かって約320段の階段を降りたところにあります。帰りのことは考えず、これから始まる幸せな入浴タイムのことだけを思い軽やかに階段を下りてゆくと、木々の間に湯舟らしきものが見えてきました。
露天風呂は混浴のものが3か所、女性専用が1か所あります。一番広い混浴の湯舟は箒川の渓流を見下ろす眺めのいいロケーション、残りの2つは1人か2人しか入れない狭いものですが、大きな岩陰にありなんとも落ち着く感じのする湯舟、古いコンクリート屋根がかかり、すぐ隣に冷たい渓流の水面が間近に見える湯舟、どちらも湯舟に直接お湯が湧出していて、最高の鮮度の温泉を楽しむことができます。
(お風呂の写真は入浴時間外に撮影)
極楽の露天風呂タイムの後は地獄の320段の階段上りをして宿の建物に戻り、今度は貸切風呂に入浴。貸切風呂と内湯は長い階段を下りずに利用することができます。
湯上りには、ロビーに用意されていた玉こんにゃくに舌鼓。
雪の野岩鉄道・会津鉄道 のんびり列車旅
翌日はお宿の車で塩原温泉バスターミナルまで送っていただき、バスターミナルからバスで上三依塩原温泉駅へ。
雪に包まれたとんがり屋根の駅と赤い列車が絵になります。この赤い列車は9:34発AIZUマウントエクスプレス4号 会津若松発東武日光行きのディーゼルカー。これから乗るのは下り列車ですが、待っている間にもう1本9:59発新藤原行き上り列車がやってきました。白いボディーにオレンジと赤の帯、寒い雪景色の中で温かみを感じられる、いい色だと思います。
乗車する下り列車は10:11発 快速会津田島行き。浅草からはるばる走ってきた快速列車ですが、途中の下今市から先はすべての駅に停まるので、このあたりでは実質的には普通列車です。ここ、上三依塩原温泉口は野岩鉄道(やがんてつどう)会津鬼怒川線の駅ですが、浅草から東武の快速列車に乗れば乗り換えなしで来ることができます。鬼怒川温泉の2駅先の新藤原という駅で東武鉄道から野岩鉄道に変わり、さらにこの先の会津高原尾瀬口からは会津鉄道会津線になりますが、快速、区間快速は3社を直通し、浅草から会津田島まで直通して走ります。なお、この旅行の2か月後の2017年4月、東武の快速、区間快速は廃止となり、浅草から会津田島方面への直通列車は特急リバティ会津に置き換えられました。
雪を巻き上げて走ってくる列車がかっこいい!
会津高原尾瀬口から会津鉄道に入り、終着の会津田島の少し手前、会津荒海(あいづあらかい)で上り区間快速 浅草行きと行き違い。海など遠い深い山の中の駅なのに荒海という名前とは面白いです。
車内はガラガラで、のんびりとした空気が漂っています。大きな窓に広がる雪景色が美しいです。
10:41、終着の会津田島に到着。ここまでは電化されていますが、ここから先は非電化のため、ディーゼルカーに乗り換えです。次の列車は11:04発AIZUマウントエクスプレス1号。鬼怒川温泉始発の列車なのでさきほど乗車した上三依塩原温泉口で待っていても乗れたのですが、少し変化をつけようと先行の会津田島行きに乗ったのでした。いろいろな車両に乗ってみるのは楽しいものです。
いま乗ってきた列車は折り返し普通新栃木行きになりました。
雪に包まれた江戸時代の宿場町
AIZUマウントエクスプレス1号は11:28に湯野上温泉に着きました。ここでバスに乗り換えておよそ15分、やって来たのは江戸時代の街並みが残る大内宿です。
かつて日光と会津を結んだ会津西街道(下野街道)の宿場町として栄えた大内宿は、その古い街並みを今に残し、大変風情のある景観は多くの観光客に感動を与えています。観光案内によれば、「道の両側に屋敷が均等に並んでいる」「寄棟造りの建物で、妻側が街道に面している」など江戸時代の宿駅制度に基づいてつくられた宿場の形態を良く残す町並みとして、1981年4月、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されたそうです。
大内宿|奥会津観光スポット (ouchi-juku.com)
この日は大内宿雪まつりが開催されており、湯野上温泉からのバスも増便されていたので便利でした。大内宿に着くと、雪まつりとあってか、たくさんの観光客で賑わっていました。屋根に雪をかぶった古い家々が建ち並ぶ道がとてもいい風情で、江戸時代にタイムスリップしたかのよう。雪で作られた灯篭やかまくらが、またいっそう雰囲気を盛り上げてくれています。
土産物や日本酒が並ぶカラフルな店先は、見ていてワクワクします。
大内宿はグルメもばっちり。「しんごろう」は信州の五平餅を思わせる米+味噌の郷土食で、エゴマを使った甘味噌が独特なさわやかな香りを醸し、炭火で焼かれた味噌の香ばしさと相まって大変おいしかったです。かまくらに入ってアツアツのしんごろうを頬張るのは、冬の幸せなひとときでした。
しんごろうの他にも、目から食欲を刺激されるものがいろいろ。
しんごろうを食べたばかりではありますが、お蕎麦屋さんに入りお昼ご飯にします。注文したのは名物「こづゆ」と「高遠そば」。
こづゆは、会津地方で正月などハレの席で食べられる汁料理で、干し貝柱や昆布などの海の幸、タケノコや根菜などの山の幸がふんだんに入っていて、味わい深い汁が大変おいしかったです。
高遠そばは、長ネギでそばをすくい、ねぎを齧りつつそばをいただくという食べ方が特徴の大内宿の名物料理。ネギを生でかじったら辛そうなイメージですが、さにあらず、甘いネギがむしろ食欲を、あっというまにネギもそばもなくなりました。なお、ネギでは食べにくそうと思う方や、そばより先にネギを食べつくしてしまった方でも、箸がちゃんとありますので安心です。
昼食を食べ終え外に出てみると、さきほどまで晴れていた天気が一変、雪が降り始めていました。雪の降りしきる宿場町の風情もまた、大変素晴らしいものです。
宿場の一番奥で街道筋は右に折れていますが、ここを左に行くとは斜面を上がる道があり、滑って転びながらも上ってみると、大内宿を見下ろせる絶景スポットがありました。ここから撮影した写真はよく宣材に使われていて、大内宿といえばここからの眺めと言えるほどの有名な構図なので、目にしたことがある方も多いかもしれません。あいにく雪の勢いが増して見通しは悪くなってしまっていますが、雪に包まれた宿場町の風景は非常に美しいものでした。
大内宿で3時間ほどを過ごし、再びバスに乗って湯野上温泉に戻ります。湯野上温泉駅は茅葺の駅舎として有名で、待合室には囲炉裏もありました。
ここからは16:16発 普通会津田島行きに乗車します。発車時刻より少し早くホームに入ってきた列車は対向列車の到着を待って出発。
先頭部からは前面展望が楽しめます。林を抜け、鉄橋を渡り、雪の中に続くレール。
湯野上温泉からおよそ30分、16:45に会津田島着。ここから17:04発 普通新栃木行きに乗り継ぎ、鬼怒川温泉でさらに18:26発 特急きぬ138号浅草行きに乗り換えて、東京に戻りました。
浅草から特急列車で手軽にアクセスでき、自然に囲まれた新鮮な温泉や、雪に包まれた風情ある宿場町など魅力的な観光地のある野岩鉄道・会津鉄道沿線は、冬の週末をのんびりと楽しむことができる、最高の場所でした。
2017年2月
大内宿へのアクセス情報 (湯野上温泉駅~大内宿 バス時刻情報あり)
交通情報・アクセス|大内宿|奥会津観光スポット (ouchi-juku.com)
塩原温泉、大内宿へ便利なきっぷ
ゆったり会津 東武フリーパス | お得なきっぷ | 東武鉄道公式サイト (tobu.co.jp)
(浅草~湯野上温泉の通常運賃が往復7,900円のところ、ゆったり会津 東武フリーパス〔芦ノ牧温泉〕なら 6,920円と、980円もお得。 特急利用の場合の特急券、上三依塩原温泉口~塩原温泉のバス運賃、湯野上温泉~大内宿のバス運賃は含まれないので、別途購入要)