そこに線路があるかぎり

鉄道旅も、そのほかの旅も。子供と出かけた休日のこと、まち歩き、山歩き、グルメ、温泉、観光情報。国内・海外 紀行ブログ。

【栃木県】空を見上げる展望窓から迫力のスカイツリーを見る 臨時特急スカイツリートレイン71号の旅 〔浅草~佐野/東武伊勢崎線・佐野線〕(2023年)

スポンサーリンク

浅草から栃木県の日光、鬼怒川や、群馬県の桐生、伊勢崎など、北関東方面に路線を延ばす東武鉄道には、100系スペーシア、200系、500系リバティといった特急車両が、ビジネス客や観光客の輸送に活躍していますが、そんな中でも異色の特急車両が634型スカイツリートレインです。窓向きの座席や、上方が眺められるように天井付近にも窓が設けられた特徴ある設備を持つスカイツリートレインは、以前は土休日を中心に臨時列車として運転される機会も多かったものの、最近では臨時列車としての運転もめっきり少なくなり、めったに乗ることのできない珍しい車両となっています。
そんなスカイツリートレインが2022年12月と2023年1月に臨時特急列車として運転されることになると聞き、この機会に乗ってみることにしました。

東武鉄道634型 スカイツリートレイン

スカイツリートレインについて

東京スカイツリーの竣工同年に登場した観光用車両634型

スカイツリートレインは、東武鉄道の634型車両の愛称であり、またその車両を使用した特急列車の列車名でもあります。634型という型式はスカイツリーの高さにちなんでつけられたもので、この車両はスカイツリーの竣工と同年の2012年、東武沿線からのスカイツリー観光や、スカイツリー観光と東武沿線観光を組み合わせた旅への足として利用されることを想定した観光用車両として登場しました。白いボディにカラフルな水玉模様があしらわれた634型は、客席部分の通常の窓の上に、屋根までまわりこんだ展望窓が作られており、背の高いスカイツリーをてっぺんまで眺められるようになっているのが特徴です。

なお、634型は新造車ではなく、もともとは日光、鬼怒川方面で活躍していた6050系という車両を改造して誕生しました。下の写真が6050系車両ですが、634型は随所に6050系の面影を残していることがわかります。

2両編成を2本つないだ4両編成

634型は全部で4両しかなく、2両編成を2本つないだ4両編成を組んでいます。カラーリングは2両ずつ異なっており、朝焼けをイメージした赤系の水玉、青空をイメージした青系の水玉の2種類があります。下り方先頭が1号車、上り浅草方先頭が4号車の4両編成で、下り方に赤系塗装、上り方に青系塗装の編成がつながれています。

1号車 クハ634-22

2号車 モハ634-21

3号車 クハ634-12

4号車 モハ634-11

特徴的な座席配置 2両には窓向きの座席が

座席はリクライニングシートで、通路を挟んで2人掛けシートと1人掛けシートが並んでいます。配席のパターンは2種類で、1号車と3号車、2号車と4号車がそれぞれ同じ席配置となっています。2号車と4号車は下り列車のときの進行左側が窓向きの2人掛け席「ペアスイート」、進行右側に一人掛け「シングル」という配置、1号車と3号車は下り列車のときの進行左側が1人掛け「シングル」、進行右側が前向きの2人掛け「ツイン」という配置で、「シングル」「ツイン」は座席を回転させることができます。

634型スカイツリートレインの座席配置。上の図が2、4号車、下の図が1、3号車。

2、4号車の車内。窓向きの座席が特徴です。2号車も4号車も車内の造りは同じですが、シートの色は2号車がピンク、4号車がブルーと、外装の塗装と揃えられています。写真は2号車。

1、3号車は2人掛け席もオーソドックスな前向き配置です。こちらもシートの色は1号車がピンク、3号車がブルーと、外装塗装のとおり。写真は1号車。

4号車の車内。こちらは座席がブルーです。

3号車車内。634型の座席は通路より少し高くなったところにあるため、その段差をなくした車椅子用の座席が1号車と3号車にあり、写真の右手前の一段低くなった座席がそれです。

フリースペースの前面展望席やサロン席も

634型は4両すべての車両に運転席がついていますが、1号車から4号車のすべての運転席直後の右側には前面展望が見られる前向きの座席が、2号車と4号車の運転席直後の左側には大きなテーブルのあるサロン席があります。これらの席はフリースペースなので、誰でも利用することができます。1号車と3号車の運転席直後左側には、イベントスペースと名付けられた、ちょっとしたステージのような空間があります。
各車両前面展望席のうしろには大型荷物の棚が設置されています。

2、4号車の連結面寄りには、ちょっとしたカウンターがしつらえられています。

1、3号車の連結面寄りには車椅子対応座席と車椅子スペース、車椅子対応トイレと洗面所、サービスカウンターがあります。

一段高くなった通常座席と、その段差がない車椅子用座席。

窓の外が見えにくい席も

もともと1枚の窓に4人掛けボックス席が配置されるという仕様だった車両を改造してリクライニングシートを取り付けているため、窓割と座席が合っていない部分もあります。

スカイツリートレイン71号 佐野行に乗る

スカイツリートレインの特急券はインターネット非対応

東武鉄道ではインターネットで特急券を買うことができ便利ですが、スカイツリートレインはあいにくインターネットで購入することができないため、駅か旅行会社の窓口まで買いに行く必要があります。佐野行きスカイツリートレインの特急券の価格は以下のとおりです。私が乗車した日は発車の1時間半ほど前で残席8、発車前は満席となっていました。やはり珍しい列車とあって、人気があるようです。

東武スカイツリーラインは、浅草ととうきょうスカイツリーの間で運河に沿って走ります。スカイツリートレインの発車まで時間があったので、そのあたりを少し散歩してみました。

特急用車両の500系リバティは3両編成の列車もあります。

あしかがフラワーパークのイルミネーション観光の足

浅草から出る東武の特急列車は、日光方面の「げごん」、鬼怒川方面の「きぬ」、太田方面の「りょうもう」が主要な列車ですが、スカイツリートレイン71号は佐野という珍しい行先。佐野は佐野ラーメンやアウトレットで知られる栃木県南部の市で、東武線ではメイン路線の伊勢崎線の館林から佐野線という支線に入ったところにあります。太田や桐生へ行く特急「りょうもう」のルートからは外れていますが、「リバティりょうもう」の夜の下り1本と朝の上り1本だけ、佐野を通って佐野線の終点の葛生まで乗り入れる列車が設定されています。(2023年1月現在)

そのように特急列車の設定が少ない佐野ですが、スカイツリートレイン71号がなぜ佐野を目指すのかと言えば、あしかがフラワーパークのイルミネーションを見に行く観光客をターゲットとしているため。佐野からJR両毛線に乗り換えれば、あしかがフラワーパーク駅まで2駅、8分ほどで行くことができます。そのため、スカイツリートレイン71号が佐野着14:45、帰りのスカイツリートレイン76号が佐野発18:43という時刻で設定されています。

急カーブのある東武浅草駅

浅草駅の特急列車の発車案内は、使用される車両のイラスト入りのもの。リバティやスペーシアと言ったスタンダードな東武特急の顔ぶれに交じって、レアな列車、スカイツリートレインの表示があります。

スカイツリートレインは発車10分ほど前に回送列車として入線してきました。浅草駅は隅田川と直行する鉄橋を渡ってすぐのところに、隅田川とほぼ平行に設置されているので、列車は急カーブを曲がってゆっくりと進入してきます。

浅草駅のホームも、先端のほうはカーブにかかっています。

水玉模様とスカイツリーのイラストが入った634型スカイツリートレイン。

カーブにかかったところでは足元に大きな隙間が空いてしまうため、ドアには安全に乗車するための渡り板が置かれます。

2号車と3号車の運転台同士の連結部分。

ドアは各車両にありますが、開くのは1号車と3号車だけ。

隣のホームに浅草止まりの各駅停車が到着しました。どちらの車両も昭和末期にデザインされたもので、最近の車両とは違った味があります。

浅草を出発 隅田川を渡りスカイツリーの足元を走る

隣のホームに停まる金色バージョンの特急スペーシアを横目に、スカイツリートレイン71号は浅草を発車しました。

急カーブを曲がってすぐに隅田川を渡ります。

そして左側にはスカイツリーが。スカイツリーのすぐ足元を走るこのあたりは、近すぎるがゆえにスカイツリーが良く見えないということになってしまいますが、上方まで良く見えるスカイツリートレインの展望窓がその効果をいかんなく発揮します。

最初の停車駅、北千住まではゆっくりと走って行きます。

北千住を出ると荒川の鉄橋を渡ります。ここは東京メトロ千代田線、JR常磐線つくばエクスプレス、そして東武と、多くの鉄道路線の鉄橋が並んでかけられています。

関東平野を北上する

びっしりと住宅が建ち並ぶ足立区内を高架で走って行きます。

竹ノ塚を出ると東京メトロ日比谷線の車庫があります。ここはすでに東武の路線の区間ですが、日比谷線の車庫が日比谷線ではない他社線沿線に設置されているのも面白いですが、車庫のような広大な敷地が必要な施設を、都市化の進んだメトロ沿線に造るのが難しかったのでしょう。同様の例は、半蔵門線の車庫が東急田園都市線の鷺沼に設置されているというものもあります。

浅草から40分ほどで春日部に到着。上屋を支える木造の柱が良い味を出している春日部駅ホームですが、現在高架化工事がすすめられているため、このホームもまもなく見納め。

春日部を出たところで、大宮方面からやって来た野田線の電車とすれ違いました。

北春日部を通過すると、右側に車庫が見えてきます。500系リバティや200系などの特急車両が休んでいました。

春日部の次は東武動物公園に停車します。日光線方面の特急は春日部に停車、伊勢崎線方面の特急は東武動物公園に停車と、系統によって停車駅が分けられていますが、伊勢崎線方面に進むスカイツリートレイン71号は春日部と東武動物公園の両方に停車します。

東武動物公園を出ると、日光線が右のほうに分かれて行きます。

左にJR宇都宮線が並び、久喜に到着。

久喜を出発し、関東平野を走って行きます。車窓には広々とした郊外の風景が広がっています。

東武伊勢崎線で埼玉県最後の駅、羽生を通過。羽生からは秩父鉄道の線路が左に分かれます。

冬枯れの関東平野

利根川を渡ると群馬県に入ります。遠くに見える山並みは赤城山でしょうか。

群馬県東部の町、館林に到着。ここは伊勢崎線から小泉線、佐野線の2路線が分岐する、東武の要衝の駅です。

館林では、圧巻のつつじや、蓮の生い茂る沼のボートクルーズなどを楽しむことができます。

sokonisenro.net

sokonisenro.net

館林では少々停車時間がありました。館林の次は終点の佐野です。

隣の線路には200系特急車両が休んでいました。この車両は昔のりょうもう号に使われていた1800系の塗装を復刻したもの。

館林の車庫を左に見ながら、伊勢崎線と分かれ、佐野線に入ります。

佐野線の最初の駅、渡瀬(わたらせ)の先には北館林という元貨物駅があり、ここでは廃車になった東武の車両が解体されています。日比谷線直通に使われていた20000系の中間車が置かれていましたが、彼らも解体を待っているのでしょうか。

渡瀬の先で渡良瀬川を渡り、栃木県に入ります。

天井窓からも太陽の光が降り注ぎ、明るい車内。

田島駅ではドアは開きませんが、対向列車と行違うためにしばらく停車。この駅のすぐ近くに佐野ラーメンの人気店があり、何年か前に食べたのを思い出します。

秋山川を渡ると、もう佐野まであと少し。数年前に大きな水害を起こしたこの川では、
護岸の工事が行われていました。

佐野駅の手前でJR両毛線の線路をまたぎます。

さのまるに迎えられて佐野に到着

佐野駅のホームでは、駅員さんとご当地ゆるキャラのさのまるがスカイツリートレインをお出迎え。

冬の日を浴びて佐野駅のホームに停まるスカイツリートレイン。

佐野駅東武とJRのホームがすぐ横に並んでいます。JRの小山行きが入ってきました。



東武もJRもどことなく似た顔つきをしていますが、どちらも昭和末期に登場した車両です。

さのまる君との記念撮影をする人が長蛇の列をなしていましたが、それもようやく落ち着くと、さのまる君は帰って行きました。

乗客を降ろしたあとも長いこと佐野駅ホームに停車していたスカイツリートレインが、回送列車として発車して行きました。

佐野線の終点 葛生駅で休むスカイツリートレイン

折り返しのスカイツリートレイン76号になるまで、634型車両は佐野線の終点、葛生(くずう)駅に停まっているとのことだったので、その様子を見に行ってみることに。後続の普通列車に乗って葛生に着くと、留置線に634型の姿がありました。

低い山並みの麓にある葛生駅は、この先で石灰石がとれることから、かつてはその石灰石輸送の貨物列車の拠点として賑わいました。その時の名残として、構内には留置線が何本か残っています。

佐野線の普通列車8000系とスカイツリートレインが並びます。これまた顔がそっくりです。

普通列車が折り返して発車すると、留置線に停まる634型がよく見えるようになりました。

駅のまわりを歩いてみることに。葛生駅の駅舎は新しいものでした。

駅を出てすぐの踏切からみたところ。

駅の裏手には空き地が広がり、その一部には太陽光発電パネルが設置されていました。かつてはここにも線路があり、貨物列車がたくさん停まっていました。

駅の先にあるセメント工場の設備が見えます。かつてはあの工場へ、そしてその先へと、葛生駅からの貨物線が続いていました。

駅の終端側に来ると、かつての貨物線の線路跡と、残された架線柱が見えます。

貨物線跡の反対側は葛生駅の構内。

駅の周りを一周して戻って来ました。

次の普通列車がやってきました。これに乗って帰ります。

どんどん小さくなる葛生駅と634型を列車の後方から眺めました。


浅草から佐野まで、1時間半ほどの短い時間でしたが、珍しいスカイツリートレインの旅を楽しむことができました。車内も明るく、眺望も良く、鉄道の旅を楽しくしてくれるこの車両は、運転される機会が少ないのが残念ですが、また違った季節や路線で乗って、ゆっくりと景色を楽しんでみたいと思います。


2023年1月