そこに線路があるかぎり

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【北海道】<あの頃の鉄道風景> 廃止路線 思い出の終着駅 増毛駅 〔JR留萌本線/2016年部分廃止〕(2008年)

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旭川から札幌に向かう函館本線でおよそ30㎞、特急に乗ればわずか1駅、18分で到着する深川から、日本海岸の港町、留萌(るもい)までの50.1km を結ぶのがJR北海道 留萌本線です。この路線は以前は留萌から16.7㎞先の増毛(ましけ)まで路線がありましたが、2016年12月5日に留萌~増毛間が廃止され、現在のような深川~留萌間の路線になりました。

2008年8月、まだ部分廃止される前の留萌本線に乗車して増毛駅を訪れました。 

いちばん距離が短い「本線」

JRの路線名には、「〇〇本線」と名乗る路線がありますが、これは国鉄時代に主要な路線を本線、その周辺の路線をその本線の支線として管理していたことによるもので、例えば山手線や横須賀線東海道本線の支線という扱いになっています。
留萌本線は、その支線として留萌~幌延 141.1㎞の羽幌線がありましたが、JR発足を2日後に控えた1987年3月30日に、国鉄最後の廃止路線として羽幌線が廃止となってしまったため、それ以来、支線を持たない「本線」となってしまいました。「本線」を名乗るJR路線の中で最も距離が短いのはJR九州筑豊本線(若松~原田 66.1km) で、全長66.8㎞の留萌本線はそれに次ぐ第2位でしたが、留萌~増毛の廃止に伴い深川~留萌 50.1㎞の路線となったため、留萌本線はこのとき筑豊本線を抜いていちばん距離が短い「本線」となりました。しかし、2021年4月1日にJR北海道 日高本線鵡川~様似間が部分廃止されたことにより日高本線が苫小牧~鵡川 30.5㎞の路線となったことから、留萌本線はふたたびJRで2番目に距離が短い本線になりました。
日高本線についての記事はこちらです) 

sokonisenro.net

全線廃止が検討される留萌本線

留萌~増毛が部分廃止となった留萌本線ですが、現在残っている深川~留萌も決して利用客が多いわけではなく、JR北海道の発表によれば2019年度(令和元年度)の営業成績は年間収入が3800万円なのに対し費用は6億9900万円、実に6億6100万円の赤字となっています。輸送密度(1㎞あたりの1日の平均利用客数)は137人/日、国鉄末期に国鉄再建法(正式には日本国有鉄道経営再建促進特別措置法)により多くの赤字ローカル線が廃止や第3セクター移管されたとき、「バス転換が適当」とされた路線の基準値が輸送密度4000人/日だったことを考えると、今日の留萌本線は鉄道として存在し続けていることが奇跡のような状況です。(なお、輸送密度4000人/日未満でも、並行道路の未整備などの理由から国鉄再建法による路線廃止対象外となった路線も多くありました)
JR北海道では留萌本線を単独では維持困難な路線として廃止の意向を示しており、2020年8月18日に開かれた「沿線4市町村でつくるJR留萌本線沿線自治体会議」で一部区間の廃止・バス転換を容認することで一致したとのことなので、残念ながら留萌本線の未来は明るいものではないようです。 

留萌本線に乗って増毛を目指す

 2008年8月、函館本線を深川で降り、留萌本線普通列車増毛行きに乗車しました。当時の時刻表が手元にありませんが、16時頃に深川を出て17時半ごろに増毛に着く列車だったと思います。深川駅4番ホームで発車を待つ列車はキハ54形500番台の1両編成。この車両は、民営化後の経営が厳しいだろうと予想される北海道に向けて分割民営化直前に国鉄が新造した、いわば新会社へのプレゼント的な車両です。 

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留萌本線は単線ですが、深川~増毛 66.8㎞の間で列車の行き違いができるのは峠下と留萌の2駅だけです。乗車した増毛行きは、峠下で対向の深川行と行き違い。

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過ぎ行く駅は鄙びたものが多く、長年の風雪に耐えてきたであろう貫禄を感じます。写真は藤山駅

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沿線随一の主要駅、留萌に到着。ここから先は終点の増毛も含めて列車の行き違いができる駅はなく、スタフという通行手形的な意味合いのものを持つ列車だけが走ることができます。増毛行きの運転士さんが留萌駅で駅員さんからスタフを受け取りました。

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留萌からは日本海に沿って進みます。仮乗降場と言われる簡易的な駅として誕生し、簡素な板張りのホームだけの駅もあります。写真は朱文別駅。ホームの長さは車両1両分もなく、ドアがひとつホームにかかるだけの簡素なものです。

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やはり簡素なホームがあるだけの箸別駅を過ぎると漁船が休む港が見え、ほどなくして終点の増毛駅に到着しました。

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ちいさな終着駅 増毛

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増毛駅は行き止まりの線路が1本とホームがひとつだけの小さな終着駅です。

f:id:nikonikotrain:20080806175007j:plain駅舎はなかなか大きなものが、と思いましたが、手前の屋根が緑色っぽい部分は新しく整備されたらしいトイレでした。
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駅前には風情を感じる木造建築が並んでいました。
増毛駅は1981年公開の高倉健さん主演の映画「駅 STATION」のロケ地になったそうですが、右側の風待食堂も映画のロケに使われ、いまは増毛町の観光案内所になっているとのこと。

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このあとは折り返しの列車に乗って深川に戻る予定です。列車の出発まで、このちいさな終着駅の風情を存分に味わいたいと思います。

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線路の手前には広い草地が広がっています。昔はここにも線路があって、貨物列車などが沢山停まっていたのでしょうか。 増毛はニシン漁で栄えた町です。

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1両のディーゼルカーがぽつんと佇む小さな終着駅、増毛駅。もう列車で訪れることができないのは残念ですが、この味わい深い情景をいつまでも思い出の中に残しておきたいと思います。 


2008年8月